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サウジアラビアのグリーン・イニシアチブ、AIとロボット技術で変革実現へ

サウジアラビアでは主にジザン州南西部の水域に見られるマングローブ林。(提供写真)
サウジアラビアでは主にジザン州南西部の水域に見られるマングローブ林。(提供写真)
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23 Oct 2021 02:10:22 GMT9
23 Oct 2021 02:10:22 GMT9
  • サウジ・グリーン・イニシアチブ(SGI)フォーラムが10月23~24日リヤドで開催
  • サウジアラビアは100億本の植樹を含む大規模なプロジェクトに取り組んでいる

ジョージ・チャールズ・デイリー

リヤド:10月23~24日にリヤドで開催される「サウジ・グリーン・イニシアチブ(SGI)フォーラム」は、石油を中心としたサウジアラビアの経済を、よりクリーンで持続可能なものに変えていくための歴史的な節目のイベントとなることが期待されている。

サウジ・グリーン・イニシアチブでは、100億本の植林(サウジアラビア全土の30%をカバー)に加え、広大な保護区の設定、沿岸域の海洋生物の保護、代替農業の奨励などを目指している。緑化プロセスにおけるテクノロジーの活用が、この大きな変化の鍵となると見られている。

農業技術の分野の主導的存在であるナヒド・シドキ博士は、政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)所有の、同国で行われている研究や革新的技術の商業化を目的とした非営利型組織、リサーチ・プロダクツ・デベロプメント・カンパニー(RPDC)の最高技術責任者を務めている。

スタンフォード研究所のエグゼクティブディレクターを務めるなど、米国シリコンバレーでの30年にわたる経験を持つシドキ博士は、ロボット工学と人工知能(AI)の権威である。

「サウジ・グリーン・イニシアチブは、二酸化炭素の排出量を減らして気候変動に影響を与え、クリーンな未来を生み出すことができる素晴らしい取り組みです」と、シドキ博士はアラブニュースの取材に対して語っている。「AIとロボット工学は、ここサウジアラビアだけでなく、湾岸地域全体でそうした変化に大きな役割を果たすことができるのです。」

では、ハイテク技術は植樹や農作物の栽培に具体的にはどのように役立つのだろうか?その問いに答えるには、グリーン・イニシアチブのスケールの大きさを考慮に入れる必要がある。

「サウジアラビアのような国に100億本の木を植えるには、今後何十年もの間それらの木々をどのように監視し、健康な状態に維持していくことも考えなければなりません。うまく行くことをただ期待するだけではいけません。最終的なゴールを見据え、そこから逆算して技術を開発・導入していく必要があります。それは、木を植え、監視し、灌漑し、収穫するという閉ループのエコシステムを築き上げるようなものなのです。」

サウジ・グリーン・イニシアチブは、砂漠が多いサウジアラビアでは貴重な資源である水の使用(間違った使用を含む)を第一に考えている。従来の灌漑方法では、水を大量に無駄にしてしまうことも多かったのだ。

スマートダスト

「センサーとデータ分析を利用して気候条件や土壌水分を監視するスマートで効率的な灌漑システムの実現を通じて、AIは水資源の活用に大きく貢献することができます」とシドキ博士は語る。「すべての樹木や植物に根の周りの土壌の状態を監視するセンサーを付けておけば、水が必要な時期や量を正確に知ることができるのです。」

AIを活用したこのようなソリューションは、例えば「スマートダスト」という形ですでに実用化されている。スマートダストとは、相互に通信するナノ粒子のことで、これにより農業のあらゆる面で複雑なデータ収集と効率的な意思決定が可能になる。

「土地の健康状態のモニタリングも非常に重要です」とシドキ博士は言う。「作物のライフサイクルを通して、ドローンにより精密な散布と、最大限の受粉が実現できます。また、同種のセンサー技術は、家畜のモニタリング、農薬散布、スマート収穫にも利用できます。」

これらの技術は、国内外の遺伝子工学の進歩と相まって、サウジアラビアの乾燥した風景を、青々としたオアシスを数多く持つ、作物が豊かに実る土地へと変えていく可能性を持っている。

一方、サウジアラビアの緑化には、水の保全だけでなく、飲料水の生産も必要だ。

現在、サウジアラビアの淡水の約60%は、エネルギー集約型の海水淡水化プラントによって供給されており、環境に悪影響を与える化石燃料に依存している。これはサウジ・グリーン・イニシアチブの観点から見て、持続可能なソリューションではない。しかし、新しい海水淡水化技術や水ろ過技術が急速に発達しており、サウジアラビアは独自のグリーンテクノロジーの拠点となっている。

リサーチ・プロダクツ・デベロプメント・カンパニーが支援するプロジェクト「紅海農場」では、アブドゥラー王立科学技術大学(KAUST)の研究者グループが、75%の海水と25%の淡水を混合した水を使ってトマトの栽培に成功した。この方法は量産への応用性もあり、9月の国連総会で賞賛を受けている。

「スマートな技術を開発して海水淡水化のコストを削減する、というのが基本的な方向性です」とシドキ博士は説明する。「太陽エネルギーを淡水化に利用できたらどうなるか想像してみてください。サウジアラビアを取り囲む海から、淡水を無限に得られることになるのです。」

サウジ・グリーン・イニシアチブは、サウジアラビアが広範囲にわたって推進する第4次産業革命(4IR)の一端を担うものだ。この第4次産業革命は、AI、ロボティクス、モノのインターネット(IoT)、遺伝子工学、量子コンピューティングなどの異分野は融合させ、物理的、デジタル的、生物学的な世界の境界を取り払っていこうとする、高度なコラボレーションによる大規模プロジェクトだ。多数の政府機関、パブリック・インベストメント・ファンド所有の企業(営利・非営利を問わず)、学術機関、大規模・新興・中小の諸企業等が参加している。

「ロボット技術とAIは、社会のあらゆる分野で大きな役割を果たすようになるでしょう」とシドキ博士は語る。「そしてここサウジアラビアには、可能性を実現させていくための大規模な公的および民間の資金があるのです。」

イノベーションの成功は才能と教育に大きく左右されるものだが、シドキ博士はこの点についても楽観的だ。「サウジアラビアの人口は約3,500万人で、そのうち70%が25歳以下です。また、高等教育を受けた人の割合は、他の多くの国々を大きく上回っています。博士号についても、サウジアラビアはおそらく湾岸地域で最も多数の取得者を出しているはずです。」

サウジアラビアは、多大な努力と想像力が求められる大きな変革の入り口に立っている。

「新しいテクノロジーによって私たちの日常生活の質を向上させる方法は無限にあります」とシドキ博士は言う。「大きな成果を上げるためには、自分のやっていることへの強い情熱と、自分も社会に貢献できるという自覚を持つことが必要です。教育、情熱、そしてその成果が相まって、社会全体が望む変化が実現していくのだと思います。」

 

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