エファレム・ コッセイフィ
ニューヨーク―国連安全保障理事会が現在、例外的に認めている最後に残った国境経由のシリア北西部への越境人道援助が、7月10日に期限を迎える。国連シリア調査委員会は、安保理がこの命を救う援助活動を延長できなければ、「最高レベルの怠慢」になると警告した。
「シリアは今、紛争勃発以降、最悪の経済状況と人道的危機にあえいでいる。そうした中で国際社会は、既存の救命越境援助を維持し、援助活動を支えるための資金供給を増やさなければならない」。シリア調査委はこのような内容の声明を出した。この声明では、いわゆる「越境人道援助の提供を絶えず縮小する道筋」に対する警告も表明された。
シリアへの国際援助が2014年に始まった際、安保理は4つの国境通過地点を承認した。2020年1月、常任理事国の一つであるロシアは、拒否権を行使してバブアルハワを除く3つの通過地点を強制的に閉鎖させた。
ロシア政府は、国際援助活動がシリアの主権と領土の完全性を侵すものだと主張した。
この問題をめぐる安保理の議論は、しばしば困難に直面する。ロシアと中国が常に、すべての人道的援助にはシリア当局の同意が必要だと主張しているからだ。
安保理理事国の中には、この越境援助の仕組みを拡充する必要を訴える反対の意見がある。そうした国々が先週、人道援助機関の懸念をも浮き彫りにした。国境通過は2014年以降、数百万人のシリア人に対し、切実に必要としている援助へのアクセスを保証してきたからだ。
「道徳的に嫌悪されるのは、シリア政府やその他の当事者による国際法上の絶え間ない義務違反に直面する中で、安保理決議そのものが、越境援助を後押しするために必要なものだとみなされていることだ。その義務とは、困窮する市民に対する人道援助を許可、保証する義務のことである」。国連シリア調査委のパウロ・ピンヘイロ委員長はこのように述べた。
援助期限の更新についての投票は7月10日に行われる。その一方で、シリアにおける人道上の窮状は現在、11年前に戦争が始まって以降、最悪のレベルになっている。
国連は、援助を必要としているシリア人が現在1,460万人いると推計している。ウクライナ紛争により食料の価格が急騰し、小麦などの農作物の供給が危ぶまれる中、戦争で荒廃したシリア国内で深刻な食料不足に陥っている人は、2019年以降、51%増えて1,200万人に達している。
反政府勢力が支配するシリア北西部では、強まる憎悪と重大な経済危機により、社会状況は悪化の一途を辿っている。この地域に住む女性と子供を中心とする約410万人の人々は、援助に頼って必需品を確保している。
安保理決議により承認された越境援助活動では、毎月約240万人に援助物資を届けることが可能になっている。
シリア調査委は最新の報告書において、このライフラインがシリア北西部の人々にとって不可欠であると述べた。そして、援助物資の一部が、シリア国内から越境して提供されている中、その供給量は非常に少なく不十分であり、しかも激しい戦闘の前線を横断する危険な供給ルート沿いでの攻撃にさらされているとも指摘している。
同委はシリア内戦に関する11年間の調査の中で、シリア政府と武装グループの双方が、政治的な交渉材料として、繰り返し人道援助を利用していると記録している。特定の人々、とりわけ包囲されている人々のために、その物資を意図的に保留しているというのだ。
また、同委は、シリアのすべての領土において、人道組織のスタッフが、絶えずハラスメントや恣意的な逮捕、拘留のリスクにさらされていると指摘している。
同委のハニー・メガリー委員は、次のように述べた。「紛争の当事者は常に、シリアにおいて困窮する市民のための人道援助物資の迅速かつ妨害のない通過を許可、保証する義務の履行を怠ってきた。援助をめぐる議論が、シリアでの適切なすべてのルートを通した救命活動へのアクセスをいかに拡大させるかという点ではなく、援助のために承認されている残り一つの国境通過地点を閉鎖するかどうかという点に集中しているのは、良心に照らして受け入れ難いことだ」
人道援助組織は今月初め、EU(欧州連合)が主催する「シリアに関する第6回ブリュッセル会合」において警鐘を鳴らした。
「人道援助への資金は、シリアの人々のニーズに今すぐ応え、彼らを保護する上で単に十分ではないのだ」。ピンヘイロ委員長はこう述べ、次のように続けた。
「国際社会は、シリアの人々を見捨てることはできない。言語に絶する苦しみを与えた破壊的な内戦に、11年間も耐えてきたのだ。彼らはかつてないほどに貧窮化しており、私たちの助けを必要としているのだ」