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バイデン氏がイランとの取引を望むならレバノンに目を向けなくてはならない

2020年11月25日(水)、デラウェア州ウィルミントンのThe Queen劇場で演説するジョー・バイデン次期大統領。(AP通信)
2020年11月25日(水)、デラウェア州ウィルミントンのThe Queen劇場で演説するジョー・バイデン次期大統領。(AP通信)
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30 Nov 2020 07:11:42 GMT9

イランの中心的な核科学者モフセン・ファクリザデ氏が金曜日にテヘランで暗殺された。その後、イスラエルが名指しで非難されている。この地域の米国の同盟国は、ジョー・バイデン氏がイランに交渉を打診する可能性を非常に心配している。この地域の多くの人々にとっての最大の懸念は、イランの核開発よりも、イランの弾道ミサイル能力に加えて、イラン政府の代理勢力による悪質な活動だ。

ファクリザデ氏の暗殺は、米国の同盟国が米国とイランによる潜在的な緊張緩和に対する準備をしていることを示している。オバマ政権時代に見られた和解は、楽観的な考えを呼び起こすものではない。イランにイデオロギーを放棄させ、繁栄と成長に焦点を当てるように説得するはずだった核合意は、逆効果だった。面目を失わず、経済的利益の見返りに米国に屈したと見えないように、イランは核問題での妥協を代理勢力による活動の増加で補い、地域に大混乱を引き起こした。このイランの活動の増加は、アラブ湾岸諸国が米国のパートナーにがっかりして自分たちの安全保障を自分たちの手で行うことを決めるといった反対側での反応を引き起こした。その結果、地域の動揺と緊張が高まった。

現在、ジョー・バイデン次期大統領は選挙公約の1つであるイランとの交渉の席への復帰を計画しており、バイデン氏はジレンマに直面している。バイデン氏は2015年の核合意に戻りたいと考えているが、過去の過ちを繰り返したくないと考えている。バイデン氏はまた、同盟国と協力し、多国間アプローチを採用することを約束している。

バイデン氏はどのようにしてイランに弾道ミサイル計画と代理勢力を含む取引を受け入れるように説得することができるだろうか。マイク・ポンペオ国務長官が以前に行った制裁解除のための12項目の要件は、イラン側からきっぱりと拒絶された。バイデン氏は核合意を修正しなければならないが、現実的な条件を取り入れなければならない。

バイデン氏は、ポンペオ氏の条件の1つであるイランがこの地域での代理勢力との関係と資金提供をすべて断ち切るという条件を採用することはできない。その理由は、イランの政権はその発足以来、イスラム世界のシーア派コミュニティの庇護者としての立場をとってきたからだ。イランの政権は思想的・軍事的・経済的に何十年にもわたってシーア派の成長を助けてきた。イランの政権は単なる米国による制裁の解除と引き換えに、シーア派を見限ることはないだろう。

政治は可能性の芸術であるから、イランに代理勢力とのつながりを断ち切るよう求めるよりも、イランに代理勢力の沈静化を求める方が現実的だろう。

ダニア・コレイラト・ハティブ博士

イランと代理勢力との間の親近感に加えて、イラン政府は代理勢力を抑止力として見ている。イランはイラン自身が敵意に満ちた環境に置かれていると考えている。1979年にイランの政権が発足して間もなく、ホメイニ革命がイラン国外へ広がるのを封じ込めるために、近隣諸国がサダム・フセインに資金を提供し、イランとの戦争を開始した。それに加えて、禁輸はイランによる兵器の近代化が許されていないことを意味していた。したがって、イランの政権は、イランと近隣諸国との間に力の均衡、あるいは恐怖の均衡を作り出すことができる要素として代理勢力を見ている。

政治は可能性の芸術であるから、イランに代理勢力とのつながりを断ち切るよう求めるよりも、イランに代理勢力の沈静化を求める方が現実的だろう。この点では、ヒズボラが良い例だ。ヒズボラはシリアでイスラエルの攻撃に苦しんでいるが、ヒズボラの支援者であるバッシャール・アサド氏にイスラエルについての交渉が打診される可能性があるという話が出ている。そのため、アサド政権のヒズボラ支持は揺らいでいるようだ。一方、レバノンでは、米国の制裁がヒズボラを疲弊させ始めている。ヒズボラは国民の怒りにも直面しており、国を衰退させた腐敗した政治階級の一部であると見られている。

この筋書きでは、ヒズボラに潔い退路を与えて、生存を確保する保証を提示すれば、ヒズボラは妥協することができるかもしれない。つまりバイデン政権は、ヒズボラ・イランと取引を行うことで、レバノンで勝利を収める機会があるということだ。

米国はヒズボラに対し、イスラエルがヒズボラの施設を攻撃したり、人員を標的にしたりしないという保証を与えることができる。また、イスラエルはレバノンとの国境線を確定し、シェバー・ファームズからの撤退を約束することができる。その見返りとして、ヒズボラは武器庫をレバノン軍の監督下に置くことができ、次にレバノンがイスラエルとの間で、関係の正常化は含まずとも相互に敵対する状態からの解放を目的とした不可侵条約に署名することができる。これはバイデン政権にとっては容易い勝利だろう。これによりレバノンを安定させ、イランとのより大きな取引への道を開くことができる。

  • ダニア・コレイラト・ハティブ博士は、ロビー活動を中心とした米国・アラブ関係の専門家で、Track IIに特化したレバノンのNGOResearch Center for Cooperation and Peace Buildingの共同創設者。彼女はまた、アメリカン大学ベイルート校のイッサム・フェアーズ公共政策・国際問題研究所のアフィリエイト・スカラーでもある。
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