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老朽化するインフラが気候変動の影響でリスクに晒される

2012年10月29日、ニューヨーク州サウサンプトンで、ハリケーン「サンディ」で道路に押し寄せられた水の中を1台のトラックが通る。(ロイター)
2012年10月29日、ニューヨーク州サウサンプトンで、ハリケーン「サンディ」で道路に押し寄せられた水の中を1台のトラックが通る。(ロイター)
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05 Dec 2020 10:12:56 GMT9

ここ10年以上にわたり、インフラが老朽化し始めている。そのインフラの一部である輸送は、物流にとって重要だ。また、特に流量を調節するダムなど、水とそれに関連する貯水池も影響を受けている。ロシアからカリフォルニア、オーストラリアに至るまでの大規模な森林火災も広範囲に及び、降雨パターンの変化や明らかに融解している極の氷冠などに起因する鉄砲水も、起こりつつある危険を明確に象徴している。だが一体、気候変動はどのように現在の衰退を悪化させているのだろうか。

輸送が気候変動に与える影響要因は、道路輸送と航空輸送に集中しており、世界の炭酸ガス排出量の23%を占めている。輸送は、道路やバス・鉄道ターミナルの浸水に対して脆弱だ。ある研究者によれば、2012年のハリケーン「サンディ」で全車両が損傷を受けたニュージャージー交通局は、1億2000万ドルの損害を被ったという。また、世界中の多くの輸送機関は地下にある。鉄道や道路のトンネルは、より緊急な補修が必要となる。海岸沿いの輸送も脆弱であり、低海抜の空港も海面上昇の危機に晒されている。極端な暑さは道路にたわみを生み、長年の凍結と融解のサイクルは道路や舗装にひび割れを起こして道路の窪みを増加させる。こうしたインフラを移動する輸送は損傷を受け、そこからさらに悪影響が増加してくことになる。

研究によれば、気候変動は水の供給インフラに、4つの重大な方法で影響を及ぼし得るという。降水量の増加、降水量の減少、海面上昇、そして気温上昇だ。降水量の増加は、インフラの損傷や土砂の流出を引き起こす一方で、降水量の減少は水流の低下による水質汚染につながる。そこから、高い気温や水温が、より急速な水の蒸発とインフラ施設の腐食を引き起こす。そして結果として海面上昇は、塩水が地下の帯水層や配水網に侵入することにより、水供給そのものと水質の両方に影響を与えることになる。我々が見ているものは、気候サイクルの中にいくつもの影響を及ぼす点を含む雪だるま効果であるようだ。降水量の劇的な減少はまた、海水淡水化の需要を増加させるが、これは非常に費用のかかることだ。そしてそれはまた、水処理システムの維持費や修理費を上げ、インフラコストを増大させることにもなる。

橋は必要な修理がされずに老朽化し、大きな懸念となっている。耐震プロジェクトが助けにはなっているが、しかし気候変動はその全体に損傷を与え続けている。

橋梁インフラは、気候変動によるストレス要因の増加に備えて強化する必要がある。調査によれば、道路は地域社会を結びつけるものであり、橋が道路インフラの重要なつなぎとなっている。興味深い事実だが、開通と同時に劣化が始まる橋は、通常100年以上の耐用年数で設計されている。適切なメンテナンスがされていれば、既存のほとんどの橋は安全性が損なわれることなく問題なく機能していることが実証されている。

しかし、このようなインフラを有する国々では長年にわたり予算が繰り返し削減され、その耐用年数は短くなっている。気候変動は、橋の安全性、性能、寿命に多重的な悪影響を及ぼしており、極端な場合には、極端な気温、水位や流速の上昇、山火事などで、失われる橋も出てくる。新たな橋は、気候変動の影響を緩和すべく、新たな基準に沿って設計・建設するよう推奨されている。

明らかに、既存の橋を気候変動の影響に照らし合わせて評価する新た技術を開発し、橋の性能と持続可能性を向上させる費用対効果の高い方法を見つけ出すという課題がある。

地盤変動も、気候変動の影響を受けてインフラに影響を及ぼす分野だ。山岳部や丘陵地帯はより地滑りが起きやすくなってきている。これらの現象は通常、激しい降雨や人の活動が引き金となる。

気候変動はこれら両方のパターンを変化させている。土砂崩れの危険は着実に上昇しており、成長した樹木を含む土砂の塊が川を下って橋を襲ったり、水路を詰まらせたりして、コストが嵩むことになる。

統合的な「環境に優しいインフラ」戦略を推進する取り組みが、気候変動への適応と緩和の相乗効果を促進させることになり得る。

テオドレ・カラシク博士

上記のような自然の力による被害に対して、その救済措置が必要だ。特に気候変動が緩やかではなく大規模になってくると、インフラや都市システムに対するリスクも増大するが、リスク管理戦略があれば、これらのリスクやそれによる将来の破壊的影響を軽減する素晴らしい可能性が期待できる。統合的な「環境に優しいインフラ」戦略を推進する取り組みが、気候変動への適応と緩和の相乗効果を促進させることになり得る。「環境に優しいインフラ」は、公営企業、民間企業、地域社会の連携を通して進められることが多く、負担の分担や地域の意識の高まりによってコストを削減することができる。気候変動でインフラが破壊されると、都市部と農村部の分断が加速する。農村部開発のための新たなインフラ建設を避ける地域社会は、より良い経済的機会がやってくるまでその限られた資金を、既存インフラを良好に保つための費用に使う可能性がある。

しかし、新型コロナウイルスパンデミック関連の経済危機により、気候変動がインフラに及ぼす影響を短期間で対処することが難しくなり得る。世界中であらゆるレベルの政府が予算を削減される中、多くの自治体は危機状態に陥り、インフラ修理は二の次にされるだろう。市街化調整区域法の見直しや改訂や、土地利用地図の作り直しをすれば、インフラ保守の役には立つだろうが、その場しのぎの解決策を永遠に続けることはできない。

  • テオドレ・カラシク博士は、米政府の湾岸諸国分析上級顧問を務めている。かつてはランド研究所の上級政治学者として安全保障問題を扱い、UAE10年居住していた。ツイッター:@tkarasik
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