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新型コロナウィルスのワクチン分配にはグローバルな発想が必要だ

ファイザーとビオンテック、モデルナ、オックスフォード大学とアストラゼネカのワクチンはすべて、開発に約9か月かかった。(AP写真)
ファイザーとビオンテック、モデルナ、オックスフォード大学とアストラゼネカのワクチンはすべて、開発に約9か月かかった。(AP写真)
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15 Dec 2020 09:12:02 GMT9
15 Dec 2020 09:12:02 GMT9

世界が新型コロナワクチンを待ちわびる中、人々はその開発に携わった驚くべき科学者たちを祝福し、その栄誉を讃えるべきだ。そうする中で、無視されるべきではない重要な教訓がある。何よりも、ワクチンが人類全てのためのものであり、最も裕福な国々の最も裕福な人々のためのものではないことを忘れずにいるべきだ。

これらのワクチンは史上最速で人類への使用が公式に許可された。ファイザーとBioNTech、モデルナ、そしてアストラゼネカとオックスフォード大学のワクチンは全て9ヶ月ほどで開発され、後者2つが最終承認を待っている段階だ。その前の最速は、4年で作られたおたふくかぜのワクチンだが、ほとんどのワクチンは7年ほどかかる。これら全てに、根気強い大きな努力が必要だ。そして今日の全ての主要な科学的進歩と同様、国境を越えるものも含む協力やパートナーシップも必要だった。

ファイザーとBioNTechの新型コロナワクチンの成功は、イスラム教徒の夫婦のおかげであったことを知っている人はどのくらいいるだろうか。おそらくこの命を救うワクチンに助けられる人の多くがそれを知らないままだろうし、イスラム教徒が関わったことを知って腹を立てる人さえいるだろう。ドイツの会社BioNtechは、トルコ人移民を親にもつUgur Sahinと妻のOzlem Tureciが設立した。ドイツの極右勢力は何年もトルコ人移民を標的にしていることを思い出してほしい。

しかし歴史を翻れば、ヨーロッパ人が東から来たこのような薬に助けられたのは初めてではない。過去の世代を苦しめた天然痘のワクチンを初めて開発したのは中国人と考えられている。中国人は病気にかかった人の天然痘の膿疱を健康な人に移して免疫を持たせられることを学んだ。この手法はその後インドを通して中東に伝わった。

18世紀初頭、夫である駐トルコイギリス大使と同伴していたメアリー・モンタギュー夫人は、多くの年老いたトルコ人女性が、客人に天然痘物質を注射するために天然痘パーティーを開いていることを発見した。彼女は、おそらく最初のワクチン反対派と言えるであろう多くの人々がそのような怪しい「ムハンマド的」手法を拒絶したにもかかわらず、その知識をイギリスに持ち帰って広めた。

これは全て、新型コロナワクチンの素晴らしい開発者たちが、何百年も続く科学者たちの仕事を受け継いでいることを強調するための話だ。彼らは多くの文明や国家に存在した巨人たちの肩の上に乗っているのだ。

ワクチンの開発は、今回のパンデミックに対する国際的な対応の他の分野に比べれば、かなり成功したようだ。国家や指導者たちが自分たちだけの道を進んで、ウィルス蔓延防止に必要な国際協力を拒絶する局面が多すぎた。中国は、初期段階の透明性の欠如のためにこれについて主要な責任を負うべきだが、責任があるのは中国だけではない。このことはワクチンの展開のためにも良い前例とは言えない。

ワクチン分配に関しても、国粋主義や世界主義的な態度が見られるだろうか。まだ初期段階だが、すでに最も裕福な国々が最初の受益者になっている。ファイザーとBioNTechのワクチンが、まず最初にイギリスで一般使用が承認され、その後、カナダ、バーレーン、サウジアラビア、メキシコとアメリカが続いた。

民衆の信頼を得るためには厳しい試験と検査を経てからのワクチン承認が要件だ。SNS中に虚な陰謀論を広めた人々を含むハードコアなワクチン反対派を説得するのは不可能かもしれない。しかしながら、他にも多くのワクチン慎重派、つまり試験では分からなかった副作用がある可能性を正当に不安がっている人々がいるだろう。

ワクチンの展開は、最新の供給システムにとってさえ試練となるだろう。ファイザーとBioNTechのワクチンは、冬の南極より少し寒いマイナス70度で貯蔵しなければならない。モデルナのワクチンはマイナス20度で貯蔵でき、承認されればより管理しやすいが、供給が最も楽なのは、普通の冷蔵設備で保存できるアストラゼネカとオックスフォード大学のワクチンだ。このワクチンの良いところは、オックスフォード大学の要求により他の2つよりもずっと安価に設定されており、低所得から中所得の国々には1回分3ドル、他の国には4ドルから5ドルで提供されるところだ。このワクチンの3分の2が発展途上国に行く予定だ。悲しいことに、1社だけでは全世界には提供できない。

裕福な国々はワクチンを溜め込んではならず、公衆衛生は企業利益よりも大事であると理解すべきだ。

クリス・ドイル

もちろん世界で最も裕福な国々が最も得するだろう。彼らはインフラとワクチンのコストを払うことができるので、このような国々の生活が一番先にほぼ元通りに戻るだろう。最も裕福な国々がすでにファイザーとBioNTechのワクチンの96%を購入した。カナダは自国民全員に5回ずつ接種できる量のワクチンを獲得した。ワクチンへのアクセスを公平に行い、少数民族が後回しにされないことが極めて重要だ。

だがそこまで裕福でない国々に住む無数の人々はどうなるのだろう。初期の見積もりだと、世界の一部の地域では人々にワクチンが行き渡るのは2024年になるとされる。多くの国々では、最前線の医療関係者でさえも、来年になってもワクチン接種をなかなか受けられない可能性がある。「民衆のワクチン連盟」は、世界で最も貧しい70ヵ国では、2021年終わりまでに人口の10%しかワクチン接種できないだろうと報告している。その下層国に入るのはアフリカのほとんどの国々、そしてシリアやイエメンなど紛争に苦しむ国々と見られている。

だからこそ、GAVIアライアンスとCOVAXメカニズムの働きが決定的に重要なのだ。今までのところ、92の低所得及び中所得国が恩恵を受ける予定だ。COVAXは各国の人口の少なくとも20%へのワクチン提供を目標にしている。しかしこれでは足りない。

新型コロナのパンデミックは全ての国家が集団免疫を獲得するまで終わらないだろう。グローバルなパンデミックである以上、グローバルな努力が必要であり、その結果も皆で共有するべきだ。裕福な国々はワクチンを溜め込んではならず、公衆衛生は企業利益よりも大事であると理解するべきだ。私有の知的財産から自由なワクチンの大量生産を許可すべきだ。科学、そしてワクチンは、300年前と同じように、共有するべきものである。

・クリス・ドイルはロンドンを拠点とするCouncil for Arab-British Understandingの会長を務める。ツイッター:@Doylech

 

 

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