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2020 年は中東に本当の変化がもたらされた年だ

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02 Jan 2021 07:01:22 GMT9

自身の予想を見返すというのは、いつもハッとさせられるものだ。それゆえ、本論考、2020 年における湾岸地域および 2021 年に予想されることについて書き始める前に、昨年私が書いたものを振り返ってみた。私は 1978 年にイランで起こったことから書き始めた。1978 年は、ホメイニー (Khomeini) の支持者がアバダンのレックス シネマ (the Rex Cinema) を焼き討ちし、それに続いたあらゆる死をイラン国王の責任に帰した年であった。未来について記述する時にも ( あるいはとりわけその時には )、歴史は重要である。そしてそれは、あらゆる動乱と共に、同地域のある基本的な特徴が長きにわたって不変であり続けたことも一つの理由である。重要なことはそうしたことなのであって、一部の評論家が極度に興奮しがちな一時的な事件ではない。

時々、本当に時々ではあるが、重要な何かが変化したことを感じることがある。ある長い期間続いている根本的な前提が誤りであったことが判明し、ある変曲点を通過する。そして、同じことは二度と起こらない。3 つの理由から、私が 2020 年についてどのように感じるかについて以下に述べる。

まず、コロナウイルス感染症 (COVID-19) である。権威主義の再興が流行りのような世界で、ウイルスは非常に平等主義者であり、国境にも地位にも頓着しない。ある国では、どうやって別の国よりも影響をうまく抑え込んできたかについて、実に多くが語られてきた。個人的には、結論は未だ出ていない、と考えている。いまとなっては、スウェーデン モデルについて感心しながら話す人は誰一人としていない。ヨーロッパ各地で、私たちは、政府が疫学的統制を明白な形で再実施するのを目にしてきたが、感染発生が再燃しただけだった。経済的闘いが、起こっては終焉するのを目の当たりにしてきた。ニュージーランドやシンガポール、あるいは中国といった特異な国々、もっとも中国は高度に中央集権的で十分な監視体制を持つ政治システムを備えているが、こうした国々が、多数の観光客やビジネス旅行者がいる、大きく多様で人口密度の高い国々にとって、実行可能な手本となる可能性はない。湾岸諸国は、パンデミックに実に上手に対処してきたように見える。しかし、明らかに重大な問題はあり、イラン、イラク、シリア、イエメン、そしてこの地域の多国においては、ほとんど確実に圧倒的に過少報告しかされていない。

どれほど頑張ったとしても、ひとたびこの特殊なウイルスを手なずけたとしても、かつてと同じ世界的成長に立ち返るのを目にすることはほぼない

そして、増え続ける人々の強い願望に見合うように経済を再構築する中で、この地域のあらゆる政府が直面する課題が、この危機によって浮き彫りとなっている。本当の試練は、個々の国々が、ウイルスの影響すべてから経済をどれほど上手に何とか保護することができたかということや、どれほど早く回復したか、ということだけではない。そうではなく、繁栄し、社会的一体性を改善し、国際的な連帯感を再構築する、新たなより良い方法に思いを巡らせるために、どのように一体となってこの危機を利用するか、ということだろう。どれほど頑張ったとしても、ひとたびこの特殊なウイルスを手なずけたとしても、かつてと同じ世界的成長に立ち返るのを目にすることはほぼない。その起源が何であれ、生物学的脅威に対する開放経済の脆弱性がまざまざと明るみにされてきた。これによって、国家の回復力が以前よりもより切実な問題となるだろう。国家間、そして実は国家内に高まった疑念の時代に私たちは生きている。すでに、その取引慣行と知的財産に対する横柄な態度のために、中国に対する不信感が大きくなってきた。トランプ政権の対立戦略について、論陣を張ることはできるかもしれない。しかし、アメリカ人のほとんど、そしておそらくヨーロッパ人のほとんどは、一理あると考えている。これは変わることはないだろう。

その間に、南シナ海における中国の攻撃的な拡張主義は、同地域における防衛体制に対するワシントンの態度が曖昧なことと相まって、日本、韓国、台湾そしてオーストラリアがそれぞれの防衛体制を再考し、同諸国がより集団行動をとるよう促している。また同様に、湾岸地域、イラクおよびシリアにおける米国の意図が不明確であるため、同地域諸国は自ら事に当たるようになっている。関連勢力の不均衡は至る所に見受けられる。そしてまた、とりわけロシアとトルコであるが、状況を複雑にする部外国も存在する。こうしたすべてが積み重なって、冷戦以降、私たちが目にしたことにない水準の世界的地域的な不確実性と変化となっている。

ヨーロッパにとっては、その国際的関与を、とりわけ中東と北アフリカにおいて増大させる機会だ、と無邪気に主張する人がいる。これは幻想だ。ヨーロッパの関与は、米国との協力があってのみ意味がある。ヨーロッパの立場が、リビア、シリアあるいはイラクにおいて単独であったことは一度たりともなかった。そして、イランに対するヨーロッパの主要国の姿勢が相反することについて昨年私が書いたものは、今も真実である。その上ヨーロッパは、トルコの地域的冒険主義、ヨーロッパや NATO 同盟国に対するレジェップ・タイイップ・エルドアンの扇動的な行動や言動の見解に同意することすらできない。

そして、このことから、私は第二の論点を得る。この地域における最も重要な政治的発展は、従来の外交交渉では実現してこなかった。その代わり、アラブ首長国連邦、バーレーン、スーダン、そして今はモロッコによる、イスラエルとの関係正常化に向けたトランプ主導の動きだ。これらすべてが目にするままであったわけではない。モロッコは、時に秘密にしていたこともあるにせよ、イスラエルとの関係はすでに悪くない。大きな、そして影響力が増大しているミズラヒ社会との歴史的関係のおかげで、容易であったのだ。正常化に関する最近の発表は、トランプ政権の退陣にとって明らかに都合が良い。そして、これは非常に高い買い物である。西サハラに対するモロッコの主張をアメリカが認めることは、私たちすべてを再び悩ませることになるのかもしれない。しかし、イスラエルとペルシャ湾諸国の適切な関係の必要性を公に認めることは、共有する利害の合理的な計算に基づいている。他の湾岸諸国が歓迎することもある。そして、イスラエルと同地域のそれ以外の国が地域の安全保障に関する課題に今後取り組む方法に、根源的歴史的な変化が表れる。

イスラエルとの正常化は、同地域の外交構造における長く先送りされてきた変化を表す

繰り返しになるが、これはすべて順調に進むということを意味しない。パレスチナ問題は、1956 年、1967 年、そして 1973 年あるいは貧しいレバノンの長期にわたる苦しみを個人的に体験した人たちにとっては特に、かつてあったような理屈抜きの様相を呈するわけではないかもしれない。しかし、国家による自己決定に対する長く根深いパレスチナ人の希求に対する取り組みへ失敗することは、変わらず政治的な悩みの種である。とりわけ、パレスチナ人の絶望と怒りによって、ガザ、西岸地区、あるいはエルサレムの聖地における暴力が再び繰り返された場合にはそうである。その場合、正常化によって、イスラエルの新たなアラブ友好国は責任ある立場に置かれることとなるだろう。単に引き下がることはできない。解決の一環である必要があるだろう。

しかし、これによって双方が関与し、正真正銘の建設的な機会が得られる。そして、強力な影響力が得られる。少なくとも、バイデン政権が最終的にこの問題に注意を向けた場合、あるいはその時には、あらゆる新たな交渉過程において重要なパートナーに位置づけることとなるだろう。最も重要なのは、これが、同地域における外交構造の長く先送りされてきた変化を表すということだ。そして、数十年にわたり事実上誰もが理解してきたことが公表される。それは、イスラエルは留まるためにここにあるのであり、同国はほとんどのアラブ諸国と戦略的利害を共有する、ということだ。真に統合された地域市場が最終的に出現する日を夢見ることもおそらく可能である。そして、とりわけ若者の並外れた潜在性を無為にすることに終止符が打たれることとなる。そして、より直近では、あらゆる複雑な原因の絡み合った、地域の不安定性という試練に最終的に向き合うための、真の全体的な努力を想像することだ。

そして、このことから、私は第三の論点を得る。不安定性の主な原因は、悪政と政治的腐敗である。これによって、レバノン、シリア、リビアそしてイラクにおいてこの数年、国家の準崩壊が加速度的に助長されてきた。悪政は捕食者を引き付ける。その中には、最も最近では、ロシア、トルコそして地域勢力が含まれていた。しかし、1979 年以来最も決定的な捕食者はイランだった。

しかしイランでもまた、根本的変化が起こっている。ほとんどのイラン人は国家を愛しているが、イスラム共和国は好きではないことに注意を払う人には明らかだ。そして、イスラム共和国には、独自の基準によるのではあるが、悪い一年となった。一月には、最高指導者アリー・ハーメネイー (Ali Khamenei) の最も忠実で有能な補佐官の二人、見るからに難攻不落のガーセム・ソレイマーニー (Qassem Soleimani) とアブー・マフディー・アル・ムハンディス (Abu Mahdi Al-Muhandis) が殺害されるという大打撃から一年が始まったのだ。テヘランは復讐すると脅した。そしてその後、これといったことは起こらなかった。イマード (Imad)、ジハード・ムグニヤ (Jihad Mughniyeh) が殺された時、ムスタファ・バドレディン (Mustafa Badreddine) の時 ( 公正に言って、ソレイマーニー自身が暗殺を手引きしたため、この原因は詩的正義とするべきであろう )、あるいは 2018 年、テヘラン中心部の外見上は安全な倉庫から保管されていた核が密かに運び出された時、あるいは不可解なサイバー攻撃の結果として、あるいはナタンツ (Natanz) の妨害行為、シリア全体そしてイラク国境に及ぶイランの資産と立場に対するイスラエルの度重なる攻撃、アルカイダの上級指導者、アブ・モハメド・アル・ムスリ (Abu Mohammed Al-Masri) がテヘラン路上で 8 月に恥ずかしいことに暗殺された時、これといったことが起こらなかったのと同様だ。そして今、イランの核開発計画につながる、別の人物モフセン・ファフリザデ (Mohsen Fakhrizadeh) が白日の下で暗殺され、今年は締めくくられた。イスラム革命防衛隊 (IRGC) は、空から制御される奇跡の装置で彼を殺害するのか、あるいはいつも通り狙撃団により射殺し、霧散されるのかを決めることができない。権力者が自由に、彼らが好きでない普通のイラン国民を捕らえ犯人に仕立て上げ、そして事件は解決したと宣言するだけである。

ソレイマーニーとアル・ムハンディスの暗殺が私たちに語りかけることは、同地域のアメリカの陸上部隊にとって未来がどんなものであろうとも、米国は空からやりたいようにできる、ということだ。結局、10,000 フィートに即席爆発装置を設置することはできない。そして、別の事件から明らかなことは、責任ある人物であれば誰でも、あらゆる人やものに、いつでもどこでもたどり着ける、ということだ。これは、自国の安全保障文化に誇りを持っている国家にとって好都合ではない。とりわけ、安全保障を担保すると考えられている当の IRGC 将軍が、カーメニーがいずれ退陣した時に完全に引き継ぐ準備がある、としている場合はそうである。

イスラム共和国には、独自の基準によるのではあるが、悪い一年となった。ガーセム・ソレイマーニーとアブー・マフディー・アル・ムハンディスが殺害されるという大打撃から一年が始まった。

それに加え、最大限の圧力のアメリカの軍事活動が、イラン、イラク、シリア、そしてレバノン ( それに今は面白いことに、トルコであるが ) の名のある個人を次第に標的としてきたのだが、実際にかなり功を奏してきた。イスラム共和国がいまだ存在することを理由に、この軍事活動は機能していない、と評論家は主張したがるが、しかし、これは政策の重点を政権の打倒を前提としたものである。仮に実際に圧力をかけ、冒険主義の代償をつり上げ、多国を害する機能に制限をかけるつもりであるとすればどうだろう。効果はあった。イラクのホメイニー主義者の民兵は、幹線道路に爆弾を仕掛け、グリーン ゾーンに向かってロケット弾を発射するかもしれない。ヒズボラは、イスラエルの日時には番号が割り振られていると主張し続けるかもしれない。そして、IRGC 将軍は、アメリカを破壊する、と豪語するかもしれない。しかし、もしワシントンが最終的に地上部隊を同地域から撤退させるとしたら、それは国内政治が原因で、金銭的余裕のないテヘランやその同盟国から活動地域が脅威を受けたためではない。そしてそのことによって、米国がその大規模な影響力を、仮に望んだ場合に、行使する計画を止めることもない。

そして、短期的に安全保障空間で何が起ころうと、とりわけ若者は例外的にそうではないが、同地域の普通の人々は、イランの得意とする、無意味な破壊行動といった類のものには飽き飽きしている。過激派が偉大な宗教を政治の道具にしていることや、堕落したエリートが国家の資源を掠め取っていることに飽き飽きしているのと同じである。

来年、イスラエル、イラン、イラクでは選挙が行われる。しかし、選挙自体が変化へつながるわけではない。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエルの歴史において最も完璧な政治的策士であるし、イラン、イラク両国では、 賄賂、退廃、脅迫は決定的となるだろう。しかし、国家について選挙から学べることはいまだ多い。そして、4 年間のトランプ政権を通じ私たちが目にしてきた根源的変化を強化し、同地域の人々の本当の優先順位について証拠から明らかとなることを真剣に反映させ、革命ではなく進化に重点を置き、私たちが全体としてどのように前進してゆくかについて、アメリカ同盟国の間で新たなコンセンサスを形成する準備がバイデン政権にあるのならば、世界は機会に満ちたものとなる。

これ自体はまだ新しい。しかし、一つ変わらないものがある。ポスト COVID-19 の世界にどのような変化が訪れようとも、価値あることを成し遂げたいと考えるのであれば、私たちにはまだアメリカのリーダーシップが必要なのだ。

  • ジョン・ジェンキンズ卿は、ポリシー・エクスチェンジ (Policy Exchange) の上級研究員である。2017 年 12 月まで、彼はバーレーンのマナーマに拠点を置く、国際戦略研究所 (IISS) の客員理事 ( 中東担当 ) であり、イェール大学ジャクソン国際情勢研究所の上級研究員であった。彼は、2015 年 1 月まで、サウジアラビアへのイギリス大使であった。
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