Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

バイデン新政権はフーシ派の人道的配慮の利用に注意すべき

ジョー・バイデン大統領の国務長官に任命される予定のアントニー・ブリンケンは、米議員との会談で「テロリスト」指定に反対することをほのめかしている。(Reuters)
ジョー・バイデン大統領の国務長官に任命される予定のアントニー・ブリンケンは、米議員との会談で「テロリスト」指定に反対することをほのめかしている。(Reuters)
Short Url:
22 Jan 2021 10:01:47 GMT9
22 Jan 2021 10:01:47 GMT9

トランプ政権がまさに幕を閉じようとする間際に、マイク・ポンペオ国務長官はイエメンのフーシ派民兵を「外国のテロ組織」、またその最高指導者を「特別指定グローバルテロリスト」に指定した。

この指定は,指定された組織との取引があることが判明した組織を財政的に締め上げる可能性があるため,特筆すべきものである。

ただ、今回の措置は、国民を養うための輸入に完全に依存している国で、何百万人もの国民のために食料を輸入するイエメンの能力への影響を恐れる国連のNGOやバイデン政権の関係者の間に懸念を引き起こしている。

フーシ派は、イエメンへの食糧輸送を行うホデイダの主要港を支配している。フーシ派のテロリスト指定は、国際的なNGOや民間の海運会社が、人道的な目的であっても、この港に関係する取引を行うことを抑止する可能性がある。

ドナルド・トランプ氏のチームは、テロ指定が発動された際に、人道物資が確実に通過できるように特例が設けられると述べ、こうした懸念に対処しようとした。

どちらかと言えば、今回の指定は、フーシ派とその後ろ盾となっているイランよりも、間もなく発足するバイデン政権により大きな影響を及ぼす。食料を武器として、国際社会を脅迫しつつ、イエメンの人々への支配力を維持することをフーシ派に許すことは、民間人の苦しみの軽減にはほとんどつながらない。

フーシ派指導部は、そもそも一般市民の幸福やイエメンの食糧安全保障にはほとんど関心を示さない。

近年、イランのイラン革命防衛隊(IRGC)の要請により、民間人を主な標的とするフーシ派の国境を越えた攻撃が激化している。また、イラン革命防衛隊の訓練と物資のおかげで、その兵器は飛躍的に精密度を増している。フーシ派の支配下にあるイエメンの人々の苦しむは益々深まるばかりである。

ジョー・バイデン大統領の国務長官に間もなく任命されるアントニー・ブリンケンは、米議員との会談で「テロリスト」指定に反対していることをほのめかしている。バイデン政権は同政策を見直し、イエメン人への人道支援を阻害するかどうかを判断するとみられている。

テロリスト指定を維持すべき正当な理由もある。フーシ派はイラン革命防衛隊(IRGC)の地域テロネットワークの一部に組み込まれている。この2つは思想的にも作戦的にも一心同体である。

トランプ大統領は2019年にイラン革命防衛隊(IRGC)を「外国テロ組織」に正式に指定している。IRGCの対外活動とグローバルネットワークは、アヤトラ・アリ・ハメネイ師の戦略的ビジョンを実行している。

民主党政権であろうと共和党政権であろうと、米国の国家安全保障上の利益が、イラン革命防衛隊(IRGC)の影響力と支配力の拡大の恩恵を受けることはあり得ない。

どちらかと言えば、アメリカの外交官や軍人は、急速に増殖してきた新型のプリセッション兵器の数々を利用した型破りなイラン革命防衛隊(IRGC) の代理攻撃に対して、より脆弱になりつつある。

フーシ派はイラン革命防衛隊(IRGC)の地域テロネットワークの一部に組み込まれている。この2つの組織は思想的にも作戦的にも一心同体である。

ウバイ・シャーバンダル

イラン革命防衛隊(IRGC)は先週、どこまでも付け回してくる「自爆型ドローン」と巡航ミサイルを使った軍事演習を開始したが、これは湾岸諸国と西側諸国への警告をも兼ねている。

イランが長年にわたって開発してきた無人機と巡航ミサイルの能力は、中東全域の軍事・民間インフラを正確に標的にすることを可能にする効果的な保有兵器の増強を意味する。

これらの新しい兵器のいくつかは、最終的にフーシ派の司令官の手に渡る可能性があり、実際そうなれば、戦略的な惨事につながる可能性がある。

例えば、サウジアラビア東部のアラムコ石油施設に対する攻撃において、イラン革命防衛隊(IRGC)が使用した「付け回して型ドローン」と巡航ミサイルを効果的に使う能力を実証した2019年の事例を見てみよう。

この攻撃自体は戦略的な損害をほとんど出していないが、真の脅威は、直接の非難や全面戦争を避けながら、精密な付け回しドローンや巡航ミサイルを使用し、友好関係にある勢力の支配地域を利用して重要なインフラを攻撃する能力を示したことにある。

イランはアラムコ攻撃の責任を認めていないが、使われた兵器はおそらくバグダッド政府が管理するイラクの空域から飛び立ったものである。イラクの治安維持の一翼をイラン革命防衛隊(IRGC)の代理勢力が担っているため、イラク領土内でのイラン革命防衛隊(IRGC)の活動に反対することができず、不本意ながらバグダッド政府は彼等に対抗する手段を持たない。

要するに、イラン革命防衛隊(IRGC) は、長距離精密攻撃能力と、アラブ諸国政府とその領土を支配して利用し、秘密攻撃を行う能力の両方を活用することができたのである。

イラン革命防衛隊(IRGC)はフーシ派のおかげで、将来同様の攻撃のための踏み台としてイエメンを利用することができるだろう。イランは本質的に、複数の前線から自爆ドローンの大群と巡航ミサイルを同時に発射することができ、湾岸地域の米軍基地に照準を合わせることができるようになる。

イラン革命防衛隊(IRGC)の軍事戦略は多層的で、イラク、イエメン、シリア、レバノンの代理勢力と連動している。アラムコの攻撃は、領土外からの多面的・多角的な攻撃の一環として「付きまとい無人機」と巡航ミサイルを使用する実績を作りたい、イラン革命防衛隊(IRGC)の願望を叶えるためのリハーサルだった。

イラクで殺害されたイラン革命防衛隊(IRGC)の司令官カセム・ソレイマニのイラクにおける過激派のレガシーネットワークが、イランにバグダッドに対する政治的・軍事的支配と、シリアやレバノンへの兵器供給パイプラインとなっているように、イエメンでフーシ派に何の抵抗も無く支配権を渡すことは、イラン革命防衛隊(IRGC)の兵器庫の範囲をさらに広げることを許すだけである。

このような展開はイエメンの人々にとって大惨事となるだけでなく、ワシントンとその同盟国は、フーシ派が支配する領域から発せられる攻撃に対して、これまで以上に脆弱になる。

バイデン政権は国際的なNGOと協力して、ホデイダでの食糧輸送や人道的な取引行為が法的な見地から問題は無く、安全であることを請け負うことができる。

一方で、フーシ派の指導者たちは、イランを利用したテロネットワークが、現実的で永続的な結果を招き、世界的な孤立に直面することに注意を払うべきである。

  • ウバイ・シャーバンダルは、国防総省の元防衛諜報員および中東アナリストである。イラクやアフガニスタンに派遣され、シリア北部に地上要員として長く滞在した経験もある。現在は中東を拠点に紛争地域のドキュメンタリー映画を制作している。ツイッター: @OS26
特に人気
オススメ

return to top