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「戦略」でウイルスに勝つのではない、兵站で勝つのだ

ベルギーのプールスにあるファイザー製造工場の荷積み所から冷凍トラックが出発する。(AP)
ベルギーのプールスにあるファイザー製造工場の荷積み所から冷凍トラックが出発する。(AP)
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30 Jan 2021 12:01:50 GMT9
ファイサル・アッバス
30 Jan 2021 12:01:50 GMT9

2020年を生き抜いてきた人々にとって、この惨憺たる年が終わりを迎える頃にコロナワクチンが開発されたことは、非常に暗いトンネルの向こうに垣間見える歓迎すべき光であった。科学者、生物学者、ウイルス学者、製薬会社らによる前代未聞の世界的協力の産物である。

しかしその後、2つのことが起きた。世界中の多くの国民が警戒を緩めたのと同時に、ウイルスの新たな変異種が現れ、さらなる感染拡大とそれによる死者数の急増を招いたのだ。

悲しい真実は、新型コロナとの戦いは終わりに近づいてきてはいるのかも知れないが、すべてが過ぎ去るにはまだほど遠いということだ。サッカーに例えれば、90分は終了したが、今や延長戦に突入し、サドンデスのルールが適用されたということだ。

その結果、これまで以上の注意が必要となった。これまで以上に自覚し、これまで以上に警戒しなければならない。同僚や友人からの悲痛な知らせを聞かない日は1日たりともなく、それがワクチンの集団接種や予防措置の重要性を嫌が応でも突き付けてくる。

英国やEU諸国といった先進国から、レバノンのような発展途上国まで、現在我々が世界中で目にしているのは、間違いがいかに命取りとなり得るかという実証だ。

新たなワクチンが開発段階や治験段階にあった時、世界にはそれが実際に使える日に向けての準備に10カ月の期間があった。事の重要性を完全に把握し損なった国もあれば、問題を政治化させてしまった国もあった。

第二次世界大戦のオマール・ブラッドレー米軍司令官の有名な言葉に、「素人は戦略を語り、プロは兵站を語る」というものがある。良識ある人でワクチン接種戦略に疑問を持つ人はいない。問題は、いかにしてできるだけ多くの人に接種するだけのワクチンを入手するかだ。

ワクチン投与に関して、一部の国が差別に甘んじてしまっているのは悲劇である。

ファイザル・J・アバス

言い争いをしたり非を押し付け合ったりしている場合ではない。我々はみな同じ船に乗っているのだ。サウジアラビアがイエメンその他の裕福ではない国々にワクチンを供給するのは、このような状況においてである。「我々は、できる限り多くのワクチンを提供できるよう、特に低所得国に対して提供できるように、多くのワクチン製造会社と交渉しています」とサウジのモハンマド・アル・ジャダーン財務相は、ダボス世界経済フォーラムのテレビ会議で語った。

このウイルスには、国境や人の引いた境界線など認識できないのだ。ウイルスには宗教も関係ない。したがって、一部の国がワクチン投与に関して差別主義に甘んじてしまっているのは悲劇である。イスラエルが、パレスチナ人への接種を否定する一方で、自国のワクチン接種プロジェクトの成功を自慢するのには正当性がなく、想像しうる限り最も卑劣な差別主義だといえる。

コロナを打ち負かすことについて言えば、我々は全員がこの戦いの中にいるのだ。ワクチンに有効性を持たせるには、我々全員が責任を持つ必要がある。すべての人が守られているように、とりわけ、いかに大きな意見の相違があろうとも、我々の隣人たちが守られているように配慮しなければならない。ひとつの致命的な生物学的ウイルスとの闘いは十分に困難なものではあるが、ヘイトや差別も、有害なウイルスとなり得るのだ。これ以上、ウイルスを自分たちで創り出す必要はない。

  • ファイザル・J・アバスはアラブニュースの主筆である。

ツイッター:@FaisalJAbbas.

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