
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、世界中で何億人もの雇用を破壊し、更に旅行、観光分野では少なくとも1億8,000万人が余剰人員となっている。
これは、国内総生産(GDP)の15%を観光に依存するオーストリアなど多くの国にとって重要事であり、タイやモルディブなどの発展途上国ではなおさらであり、多くの人が観光やホスピタリティ部門で働いている。
また、ビジョン2030改革計画の下、今後10年間、旅行や観光が経済及び雇用に不可欠な要素となっているサウジアラビアにとっても他人事ではない。
では、観光の未来はどうなるのだろうか?
これまでも観光セクターが環境を保全し、生態学的にも持続可能を維持しながら、経済成長に貢献するにはどうあるべきかという議論が長い間なされてきた。
持続可能性と雇用創出という明らかに相反する2つの目標を兼ね備えた観光プロジェクトがあるとすれば、それこそ水曜日にモハメド・ビン・サルマン皇太子が、多くの聴衆の前で紹介した、シュライラ島のコーラル・ブルーム・リゾートであろう。
このリゾートは、サウジアラビアの紅海沿岸のユニークな動植物からインスピレーションを得ている。そこは、世界的な海面上昇からの浸食を防ぐ防御層を兼ねた人工海浜と組み合わされて、旅行慣れした観光客をも魅了する見事に構築された建築物が連なっている。
プロジェクトは順調に進んでいるが、結局は贅沢な旅行をする余裕のある一部の人のためのプロジェクトに過ぎないじゃないかと主張する人もいるだろう。そうではない。この新規の、ユニークなリゾートは、雇用を提供しながら持続可能性と観光を両立させるために必要な方法を示している。世界の観光産業全体に光を当てるものだ。
コーラル・ブルーム・プロジェクトは、すべての条件を満たしている:このプロジェクトは、新しい地に観光を導き、雇用を創出し、環境を保護すると同時に、パンデミック後の世界の観光業の在り方に一石を投じるものである。
コーネリア・マイヤー
ビジョン2030プロジェクトは、革新的で環境的に持続可能なものであり、サウジアラビアだけでなく、湾岸協力会議諸国(GCC)や中東地域全体を21世紀に向けて、より良い雇用とより良い社会を創出するための方向性を示すものである。
コーラル・ブルームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、容易に挫折しそうなものだが、そうはならなかった。逆に、より良いものを構築しようというマントラが、先月のサウジアラビアのソブリン・ウェルス・ファンドの年次フォーラムであるパブリック・インベストメント・ファンドのフューチャー・インベストメント・イニシアティブで力強く踏襲された。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以降も人々の生活は続き、世界には旅行や観光の場があるだろう。しかし、大きな問題は、その時の観光セクターがどのようものになっているかである。
世界的な健康上の危機は、環境、持続可能性への投資に焦点を当てる、これまでにも存在した時代の方向性を加速させる役割を果たしているが、ESG(環境、社会、コーポレートガバナンス)はその内の一つに過ぎない。
その意味では、コーラル・ブルーム・プロジェクトはすべての条件を満たしている:このプロジェクトは、新しい地に観光を導き、雇用を創出し、環境を保護すると同時に、パンデミック後の世界の観光業の在り方に一石を投じるものである。
アイランドリゾートは、今後数十年の観光業の進むべき方向性を示す重要な指標となる。
世界は環境基準を損うことなく、観光業で雇用を生み出すことを求めている。容易には達成できない目標である。しかし、コーラル・ブルームは、様々な目標を一つのプロジェクトにまとめられることを証明しようとしている。こうして世の中に見本を示すことが出来れば、その影響範囲はサウジアラビアにとどまらない。
同様に重要なのは、コーラル・ブルームのように、環境意識と観光を融合させたプロジェクトこそが、最終的には世界の環境意識に何よりも貢献するということであり、持続可能性という高尚な原則と雇用創出が矛盾した目標ではないことを示している。
全体として、コーラルブーム・プロジェクトは、観光産業の持続可能性に新たな基準を打ち立てると同時に、ビジョン2030の不可欠な要素でもあり、将来の観光産業の道標ともなっている。