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待ちに待ったパレスチナの選挙に漂う不透明感

占領下のヨルダン川西岸のラマラで、パレスチナの指導者に向けて演説するマフムード・アッバース大統領、2018年3月19日。(ロイター)
占領下のヨルダン川西岸のラマラで、パレスチナの指導者に向けて演説するマフムード・アッバース大統領、2018年3月19日。(ロイター)
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24 Mar 2021 10:03:17 GMT9
24 Mar 2021 10:03:17 GMT9

ヨルダン川西岸地区およびガザ地区のパレスチナ人を対象に、5月22日に行われる15年ぶりの立法評議会選挙に向けて、中央選挙管理委員会は132議席の立法評議会に立候補するリストの登録申請を開始した。パレスチナの各派閥は先週、選挙結果を尊重し、あらゆる透明性と公平性を備えた選挙法を遵守することを誓う「行動規範」に署名した。ファタハとハマスの2大勢力は、前者がヨルダン川西岸地区を、後者がガザ地区を実効支配している。

前回、公正な選挙が行われた2005年には、ハマスが地滑り的な勝利を収めている。当時、パレスチナ自治政府(PA)のマフムード・アッバース大統領は、イスマイル・ハニヤを首相に指名せざるを得なかったが、その数ヵ月後にはハニヤを解任した。その結果、ハマスは反乱を起こし、ファタハやPAとの血みどろの対立の末にガザ地区を支配するに至った。反乱の終結と政党間の和解を求める多くの試みは失敗に終わっている。ハマスは次期選挙に臨む用意があるとしながらも、ガザの支配を終わらせることを約束していない。

法令に基づいて統治を行っているアッバス大統領は、立法評議会選挙(7月には大統領選挙)の実施を、PAの主な財政支援国である欧州諸国から要請されていた。

この動きは、イスラエルとの和平交渉再開の可能性に先立って、パレスチナの機関の正当性を更新することを目的としている。アッバス大統領はここ数ヶ月の間に多くの物議を醸す法令を発布しており、こうした法令は司法の役割を制限し、若い活動家の出馬を妨げていると批判されている。

アッバス大統領は、ハマスの候補者が再び地滑り的勝利を遂げることを恐れ、次期立法評議会で過半数を確保するために、ハマスとファタハの共同リストを作ることを検討した。しかし、イスラエル、そしておそらくアメリカからの圧力により、この異例の計画は頓挫した。ハマスがPAに権力を引き渡すことを約束しなければ、共同リストはパレスチナ人の政治的・地理的な分断を深めることになる。それはおそらく、パレスチナの大義を弱める新たな二重性を正当化する。このような共同リストは、パレスチナの次期内閣での権力の両立につながるが、ハマスをテロリスト集団とみなしているイスラエルと米国は、こうした状態を忌避している。

しかし、選挙を物語るパレスチナ人批評家が最も恐れているのは、この選挙が占領の正当化につながり、オスロ合意に新たな息吹を吹き込むことである。批評家たちは、占領下にある人々が、占領者が土地を支配し、選挙のプロセスとその結果を妨害できるような状態で選挙を行うのは正常ではないと主張している。イスラエルは前立法評議会の多くの議員を逮捕し、最終決定権を持つのは自分たちであり、選挙で選ばれた者でも免罪符を持っている訳ではないことを強調している。

さらに、批評家たちは、オスロ合意は25年以上の歳月を経て、全くの失敗に終わったことが明らかになっていると批判する。イスラエルは公約のほとんどを反故にし、入植地を拡大、パレスチナ人の家を取り壊し、入植者によるパレスチナ人への威嚇を日常的に許し、PAの管理下にある地域への侵入を平然と続けている。また、イスラエルは、東エルサレムのパレスチナ人に投票権を与えることをまだ約束していない。

一方、パレスチナの最大派閥であるファタハは、内部分裂が激しい。人口の大半を占める若いパレスチナ人は、平均年齢が約70歳の支配者層にうんざりしている。ファタハ内では、イスラエルの刑務所で終身刑に服しているマルワン・バルグーティを大統領候補に指名しようという動きがあった。ファタハの長年のリーダーであり、バルグーティの友人でもあるナセル・アルキドワは、今月、選挙に参加するための独自のリストを作ることを企図したため、アッバス大統領から追放された。

選挙の実施に向けての道筋は敷いたものの、85歳のアッバス大統領は、次期立法評議会でファタハが過半数を獲得できないと判断した場合、選挙を延期する可能性も残っている。また、大統領選挙が予定通りに行われる可能性も低い。

選挙を物語るパレスチナ人批評家が最も恐れているのは、この選挙が占領の正当化につながり、オスロ合意に新たな息吹を吹き込むことを危惧している。

オサマ・アル・シャリフ

パレスチナの選挙は、イスラエルの人々がこの2年間で4回目の総選挙投票を行う2ヵ月後に行われる。しかし、イスラエルの有権者や候補者にとって、占領や和平プロセスの行方は優先事項ではない。イスラエルの総選挙の結果が出ても、500万人以上のパレスチナ人が占領されている現実は変わらない。パレスチナの選挙が自由で公正であるとすれば、オスロ合意の締結以来、最も重要なイベントになる可能性もある。あるいは、皮肉なことに、1993年以来パレスチナ人が直面してきた悲しい政治的現実を固めてしまうかもしれない。

  • オサマ・アル・シャリフは、アンマンを拠点とするジャーナリスト、政治評論家である。ツイッター:@plato010
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