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イランとイスラエルがじりじりと深淵に近づいていく

イランのナタンズ核開発施設での爆発後の様子。(MAXAR 経由ロイター)
イランのナタンズ核開発施設での爆発後の様子。(MAXAR 経由ロイター)
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18 Apr 2021 02:04:41 GMT9
18 Apr 2021 02:04:41 GMT9

ヨッシ・メケルバーグ

イスラエルとイランが裏舞台では戦争状態にあるということはもはや周知の事実であり、両国の間では常に喧嘩腰の言葉のやり取りが交わされている。実際その対立抗争はこの数ヶ月でエスカレートしている。彼らの敵対関係は闇の中から明るみへと姿を現し、一見 もっともらしく否認をするそぶりも余裕ももはやかなぐり捨て、ジリジリと際限のない対立激化への道を辿りつつある。互いの間の溝は深まるばかりであり、ますます直接的な衝突へと向かいつつある。

イスラエルとイランの間に起きている最近の好戦的行動からすると、さらに多くのより危険なエスカレーションは避けがたい様相を呈している。この二国の現在の関係を極めて危険な状態にしているものは、性質こそ異なるが、イランとイスラエルの政治制度が共に脆弱で、慢性的な内紛にあえいでいるという現実だ。そのことによって彼らは挑戦的な外交政策を志向する傾向にあり、結果的に誤算を招くリスクがより大きくなっている。 

先週の謎に満ちた爆発事件は停電を引き起こしてナタンズのウラン濃縮施設に損害を与えた。イスラエルの官僚たちの反応を耳にすると、その真相がなんとなく見えてくるのだが、一方イランのジャヴァド・ザリフ外相をはじめとする官僚たちは、この事件を「核テロリズム」だとした。この一件は、公海におけるイスラエルとイランの船舶に対する継続的な攻撃合戦、主要施設へのサイバー攻撃、イラン最高峰の核科学者と見なされていたモフセン・ファクリザデ氏の殺害でピークに達したイラン科学者の暗殺に続くものとなった。状況を変えつつあるのは、「言葉の戦争」から「戦争の言葉」への急激かつ公然たるエスカレーションで、双方とも自らの挑戦的行動に対する責任をとる準備はあると平然と言ってのける。

20年以上の間、イスラエルはイランが核軍事力を拡大することを阻止するための果てしない外交的・軍事的キャンペーンを続けてきたが、その一方で軍事作戦となると曖昧な姿勢を示していた。そのアプローチが次第に薄れていき、この変化が戦略的理由によるものなのか、むしろベンジャミン・ネタニヤフ首相が現在直面している国内政治および法的窮状や、米国政府が包括的共同作業計画(JCPOA)核合意に復帰する意向を示していることと関係があるのか、様々な思惑が取りざたされている。

イランとイスラエルのライバル関係は、1979年以降中東政治における永久不変の特色となっている。核能力の獲得はイランの呈する驚異の一面に過ぎず、シリアでバッシャール・アサド殺人政権に加担する強力かつ明白なイランの存在は、目と鼻の先にあるゴラン高原のイスラエル占領地区にとって気が気ではない。また、イスラム教シーア派と同盟関係にあるイスラエルの宿敵ヒズボラが、非常に高性能のロケットやミサイルなどの兵器で武装しており、さらにパレスチナの過激派グループへも支援している。これらによってイスラエル国内では、イランがイスラエルの死活に関わる脅威を呈していること、あるいは少なくともイスラエルが直面する最も深刻な戦略的課題であるということが、非常に広範にわたるコンセンサスとなっている。しかしこうした状況には外交ツールを複数組み合わせた慎重な対応が要求される。現在イスラエルは、イランが先週の攻撃のみならずイランへもたらした公然の屈辱から報復行動に出てくるように仕向けているのだ。

ネタニヤフ首相の不正問題は、長い間彼の政治的判断を曇らせている。そして彼は最も激しく声高なJCPO反対論者でもある。また、似た者同士だった前米国大統領の4年任期が幕を閉じた後、新バイデン政権のイラン核合意復帰への前向きな姿勢を見て、この動きを覆すため、これまで以上に攻撃的な方策をとるようになった。JCPOAをめぐる米国とイランの間の間接交渉がウィーンで再開されたのと時期を同じくして、ナタンズ施設への攻撃が起きたことは、とても偶然とは思えない。さらに、その爆発はロイド・オースティン米国防長官のイスラエル訪問中に起きている。はそのワシントンは攻撃への一切の関与を否定しているが、そうした上位高官の訪問中にこの事件が起きたことには、米国が絡んでいることを匂わせるものがあり、イスラエルと米国の緊密な同盟関係において、イスラエルは必ずしも自国より強大な同盟者の言うことに追随するわけではないというメッセージを発信したことになる。

 

状況を変えつつあるのは、「言葉の戦争」から「戦争の言葉」への急激かつ公然たるエスカレーションだ。

ヨッシ・メケルバーグ

2015年の核合意は当初から完璧にはほど遠いものであったことは概ね同意されている。しかし、全関係者にその規約を確実に準拠させるような改善が施されるなら、国際関係が急速に悪化するよりは望ましいと言える。「イランがウランをこれまでで最高の60%に濃縮開始、またもやJCPOA違反」という発表があったが、先週の爆発事件に対抗するイランのこの挑戦的な反応は、彼らがそう簡単には屈しないということを知らしめようとしているものだ。大統領選挙までわずか2ヶ月というプレッシャーから柔軟性を示すといった可能性は、さらに考えにくい。

これは、イランに脆弱さがないという意味ではなく、国際コミュニティは別の方策に出る前に、交渉の場で彼らの虚勢を試す必要があるということを意味する。イランの外交政策には根深い被害者意識、被害妄想、好戦的気質が織り交ざっている。しかし、結局考えられるのは、外交努力の成果が上がらないのではなく、イラン政府がアメとムチの組み合わせを提示された時に論理的に考えることができないのだ。

イスラエルの政治を襲った異例の状況の中で、ネタニヤフ首相は法相の指名を阻止しており、アヴィチャイ・マンデルブリット司法長官によると、極めて緊急な議題についてでなければ、またリクード党と「青と白」連合の二大党派から同数の閣僚によって構成されない限り、特別安全保障内閣を召集する可能性はないという。このことによって極めて危うい状況が生まれることになる。つまり、主な敵国と敵対した場合に、機能する安保内閣が存在せず、ベニー・ガンツ国防相とガビ・アシュケナージ外相というイスラエル国防軍の元指導者たち両方が、意思決定プロセスから外れることになるのだ。

一方、不正裁判の窮地にどっぷり浸かっている首相は、最大の国家利害に関わる問題を緊急事態にしてしまうことに自分個人の利害が絡んでいるため、自分がトップに立つもう一つの連立政権の結成を強引に行うことで、首相が事実上その問題に関する唯一の意思決定機関となる。すべての関連有力団体たちは細分化され、クネセトの監督も無い。

イランが核軍事力を拡大させないようにすべきなのは言うまでもない。イランの核武装は中東を一層不安定化させ、中東の他の地域における破壊行動や国際交渉経路の妨害を増大させることになる。しかし、イランを思いとどまらせることと、イランに恥をかかせることは全く別物だ。後者は、イランを崖っぷちへ追い詰めるというリスクがあり、イランの指導者たちのさらに過激で敵対的要素にますますパワーを与えることになってしまう。

  • ヨッシ・メケルバーグは国際関係の教授で、チャタム・ハウスのMENA プログラムの研究員。彼は国際的な出版・電子メディアに定期的に寄稿している。

ツイッター: @YMekelberg

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