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日本人作曲家坂本龍一氏の最後の作品『Opus』がヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映

Kab Inc提供の2022年の写真で、来月ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミア上映される空音央監督の新作映画『Ryuichi Sakamoto|Opus』でピアノ演奏を披露する坂本龍一氏。(AP)
Kab Inc提供の2022年の写真で、来月ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミア上映される空音央監督の新作映画『Ryuichi Sakamoto|Opus』でピアノ演奏を披露する坂本龍一氏。(AP)
Kab Inc提供の2022年のこの写真には、来月ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミア上映される空音央監督の新作映画『Ryuichi Sakamoto|Opus』に出演する坂本龍一氏が収められている。(AP)
Kab Inc提供の2022年のこの写真には、来月ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミア上映される空音央監督の新作映画『Ryuichi Sakamoto|Opus』に出演する坂本龍一氏が収められている。(AP)
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30 Aug 2023 01:08:16 GMT9
30 Aug 2023 01:08:16 GMT9

東京:殺風景なスタジオのグランドピアノの前に一人座り、坂本龍一氏は自身の作曲である20曲を演奏しながら、聴き手を自身の人生の旅へと誘う。

全編モノクロ、3台の4Kカメラで撮影された空音央(そら ねお)監督の映画『Ryuichi Sakamoto|Opus』は、詩的でありながら大胆で、深く心に響く日本人作曲家坂本龍一氏の最後の作品である。

この作品のワールドプレミアは来月のヴェネツィア国際映画祭で行われる予定だ。撮影は3月28日に71歳で亡くなるわずか半年前、数日間にわたって行われた。

坂本氏は2014年からがんと闘い、コンサート活動ができなくなったため、映画制作に目を向けた。

坂本氏はピアノソロで演奏したことのない曲を演奏する。テクノ・ポップ・グループのイエロー・マジック・オーケストラに在籍していた初期の頃の曲で、1970年代後半、アジアのミュージシャンがまだ欧米ではマイナーな存在に甘んじていた時代、坂本氏を一躍スターダムに押し上げた『東風(Tong poo)』を、印象的なスローテンポの新アレンジで披露している。

「その後、私はすっかり虚しい気分になり、病状は約1カ月間悪化しました」と坂本氏は声明の中で語っている。

坂本氏は映画の中でほんの数行しか話していない。

「ちょっと休ませてほしい。これはきつい。僕は自分を追い込んでいるんだ」と、映画の中盤あたりでかろうじて聞き取れる日本語で語っている。

また坂本氏はもう一度シークエンスを演奏したい旨を示して「もう一度やろう」とも言っている。

約2時間の映画の続きを、坂本氏はピアノに語らせる。

彼の指から紡ぎ出される音は、クローズアップで愛情を込めて撮影され、時にゆっくりと、一音ずつ哀愁を漂わせながら響く。またある時には、彼らは坂本氏のサウンドを決定づけた、荘厳でアジアを想起させるコードで即興演奏することもある。

一曲演奏し終えるごとに、坂本氏は両手を鍵盤から上げ、そのまま宙に浮かせる。

『Opus』は、坂本氏の伝説的なフィルモグラフィーの証明である。ベルナルド・ベルトルッチ氏、ブライアン・デ・パルマ氏、三池崇史氏、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ氏、ピーター・コズミンスキー氏、大島渚氏など、世界の偉大な映画監督たちに楽曲を提供している。

この映画は、坂本氏が最後の最後まで現役であり続けた証拠でもある。坂本氏は今年初めにリリースされた瞑想的な最後のアルバム『12』より選曲した曲を演奏する。

坂本氏が1987年のベルトルッチ監督作品『ラストエンペラー』のメロディーを弾き始める頃には、感動はもはや圧倒的なものになっている。ミュージシャンのデヴィッド・バーン氏も参加した同作のサウンドトラックは、アカデミー賞とグラミー賞を受賞した。

ニューヨークと東京で育った空音央監督は、坂本氏の最後のパフォーマンスとなる可能性があることを誰もが認識している本作で、坂本氏の芸術において非常に重要である、時間と永遠性の感覚を捕らえようとスタッフと共に決心したと語る。

通常、ポストプロダクションで取り除かれる、衣擦れ音、爪で弾く音、坂本氏の呼吸音などは、ミックス作業の中で最低限に抑えられることはなく、意図的に残されている。

「モノクロで撮影することにした理由の一つとしては、ピアノの白黒の鍵盤を使うことで、彼の身体の身体性も強調できると考えたからです」と、2020年に『フィルムメーカー』誌の「インディペンデント映画の新しい顔25人」の一人に選ばれた空監督は語った。

坂本氏はまずセットリストを考え、映画制作者たちは坂本氏と事前に映像的なナラティブやコンセプトについて綿密な計画を練った。

単なるパフォーマンスのドキュメンタリーではなく、最初から映画としてデザインされたこの作品は、撮影監督のビル・カースティン氏が考案した照明デザイン、技巧的な長回し、ズームレンズを使ったクローズアップが特徴だ。

「これまで撮れなかった手や鍵のショットが撮れたのです」と、カースティン氏は映画のイメージをデッサンに例えた。

カメラドリーがきしみ音を立てることなく静かに動くように、何百ポンドもの重しが床に敷き詰められた。

印象的なのは終盤、坂本氏がデヴィッド・ボウイ氏主演で金獅子賞を受賞した北野武氏も出演した1983年の大島映画の同タイトルから『戦場のメリークリスマス』を演奏する場面だ。

坂本氏はこの映画にも出演し、捕虜収容所を指揮する第二次世界大戦の日本兵を演じた。若く、やっと30代になったばかりだった。しかし、多くの点で彼は変わらず、痩せて銀髪で眼鏡をかけた姿で、ピアノの前に座り込んでいた。

映画が最後の曲に移ると、坂本氏は姿を消し、天国と呼ばれるあの世に行ってしまう。スポットライトに照らされたピアノが、坂本氏の音楽が永遠であり、今でもここにあるということを思い出させてくれる。

AP

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