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気候変動による移住に世界はどのように備えるべきか?

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27 Jul 2021 05:07:23 GMT9

ここ数週間の出来事によって、世界中で気候変動の影響が迫っていることが浮き彫りになった。米国では異常な熱波と歴史的な山火事が発生し、中東では危険な熱波が発生し、ヨーロッパ、インド、中国では致命的な洪水が発生している。この夏の極端な異常気象により、気候変動の目前に迫った影響や将来的な影響が改めて注目されている。人々の移住もその一つだ。

既に、毎年、何百万人もの人々が環境ストレスに反応して移住している。近年では、シリア、インド、バングラデシュ、アフリカのサヘル地域、米国のルイジアナ州やアラスカ州など、さまざまな場所で環境要因による移住が増加している。気候変動は、自然災害の頻度や深刻度を高め、海面上昇や砂漠化などの長期的な変化を引き起こすため、大きな要因となっている。環境問題は通常、移住の理由の一つに過ぎないため、環境要因により移住する人の数を定量化することは困難だ。国連難民高等弁務官事務所の気候アドバイザーであるアンドリュー・ハーパー氏が最近述べたように、気候変動は「脆弱性を拡大させるもの」である。

既に何百万人もの人々が移住している中、気候変動が将来的に大きな移住の流れを引き起こすことは明らかだ。多くの専門家は、気候変動が人類史上最大の移住の流れを引き起こすだろうと予測している。

移住のほとんどは同一国内で起こると考えられる。環境要因に関連した移住に関する研究によると、人々は遠くへは移住できない、あるいはしたくないことが多いという。人々は、洪水や嵐などの脅威が少ないと思われる近くの場所に移住したいと考える。同一国内での移住は、通常、国境を越えるよりも容易である。しかし、全体の中では少数派であるが、安全を求めて国境を越える人々もいる。

気候変動による移住は、都市化の傾向を強める可能性がある。例えば、農作物が不作になると、農民は都市に仕事を求めるようになる。人々は、都市にはより良いセーフティネットとより多くの資源があると信じている。南アジアや中東などでは都市への移住が既に起きており、その理由の一部は環境要因である。一方で、多くの都市、特に沿岸部や乾燥地域の都市は、気候の脅威の増大に直面することとなる。

人々は、一つ以上の突発的な出来事や、より長期的な変化に対応して移住する。そして、これらの要因が移住の流れを形成することになる。人々は、激しい嵐や洪水などの直接的な災害に反応して移住することが多い。通常、そういった人々の多くは、被災地の再建のために戻ってくる。しかし、特に将来的に災害が起こる恐れがある場合は、すべての人々が戻ってくるわけではない。海面上昇や砂漠化などの長期的な要因の場合は、人々は農場や家に見切りをつけて移住するため、よりゆっくりとした流れになる傾向がある。このような移住は、ペースは緩やかだが、帰ってくる可能性はより低くなる。

多くの専門家は、気候変動が人類史上最大の移住の流れを引き起こすだろうと予測している。

ケリー・ボイド・アンダーソン

気候変動による移住は、世界全体に影響を及ぼす可能性が高い。もう既に、一部の先進国では限定的ながら見え始めている。しかし、世界には特に脆弱な地域がある。アフリカ全域、特にサヘル地域は脆弱だ。また、南アジア、中東、中米から南米にかけての乾燥地域でも、気候変動の影響が大きくなれば、大きな人口の移動が起こる可能性がある。

もし、世界的に対策を講じることができなければ、絶望からくる大規模な移住の流れは広範囲にわたって悪影響を及ぼすことになるだろう。気候変動による移住は、食糧生産の失敗、貧困、都市インフラへの圧力、民族や人種の不平等、社会的・政治的な不安定、紛争などを激化させる可能性が高い。家族やコミュニティが根こそぎにされ、分断されることで、人々の苦しみは計り知れないものになるだろう。

幸い、グローバルレベル、国レベル、地域レベルでリーダーが今すぐ行動を起こせば、これらの悪影響を軽減し、さらには移民のスキルやエネルギーが受け入れ先の社会に利益をもたらすような仕組みを見つけ出すことも可能だ。

まず最初のステップは、脆弱なコミュニティの回復力を高め、彼らが家やコミュニティに留まることができるような方法で、気候変動に適応できるようにすることだ。解決策はさまざまだが、警告システム、ストームシェルター、打たれ強いなインフラや住宅などがその一例だ。

多くの人々が将来的に移住しなければならないという現実を受け入れ、移住を積極的に管理する方法を見つけることが重要だ。政府の買い取りプログラムや支援は、被害を受けやすい地域に住む人々が移住するのに役立つ。政府は、より小規模な都市への移住の機会を創出し、人々を、キャパシティーオーバーの巨大都市ではなく、より管理しやすい都市部に移住させることを今から計画すべきだ。もう一つのアイデアは、気候変動のヘイブン(避難所)を作ることだ。つまり、気候変動の影響を受けにくく、成長の余地と資源がある地域の都市が移民を受け入れるということだ。気候変動のヘイブンとなる可能性のある都市は、今からインフラの整備を計画し、住宅やサービスをどのように拡充するかを検討し、現在および未来の住民をサポートするための統合計画を策定する必要がある。大都市は、気候変動に直面しても既存の人口と増加分の両方をサポートできるよう、レジリエントなインフラ整備を計画する必要がある。

気候変動による移住の多くは国内で起きると思われるが、国際社会は今のうちから国境を越えた移住の増加に備えておくべきだ。国連の「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」はその重要な取り組みの一つだ。

最も根本的な解決策は、気候変動の根本原因に対処することだ。気候変動による移住は増加するであろうが、将来の移住の規模は気候変動の規模による。すべての国が二酸化炭素の排出量を減らすために行動すれば、気候変動とそれに関連した移住の最悪のシナリオを回避することは可能だ。各国は、今秋グラスゴーで開催される気候変動枠組条約締約国会議で、行動を起こす大きな機会を得ることになるだろう。

  • ケリー・ボイド・アンダーソンは、国際的な安全保障問題や中東の政治・ビジネスリスクに関する専門的なアナリストとして16年以上の経験を持つ、作家・政治リスクコンサルタントである。Twitter: @KBAresearch
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