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ナスラッラー師、米国の敗北を喜び、レバノンのアフガニスタン化を目論む

2020年9月29日に撮影された、レバノン南部タイレ近郊の高速道路に設置されたヒズボラのリーダーであるハッサン・ナスラッラー師の看板。(ロイター)
2020年9月29日に撮影された、レバノン南部タイレ近郊の高速道路に設置されたヒズボラのリーダーであるハッサン・ナスラッラー師の看板。(ロイター)
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23 Aug 2021 02:08:24 GMT9
バリア・アラマディン
23 Aug 2021 02:08:24 GMT9

ヒズボラのリーダーであるハッサン・ナスラッラー師は、パラレルワールドに生きているのだろうか。レバノンは火の海と化しつつあるが、師は発言のたびに新たな火種を生んでいる。

ナスラッラー師は、イランからのディーゼル燃料を満載した船をレバノンまで運んだことで、救世主を気取っている。国民に対しては、恩人のイランのため感謝の涙を流すよう呼びかけている。しかし、イランはタダで石油を提供した訳ではないし、国際的に制裁を受けているイラン産石油を買おうとする国は少ない現在、逆にレバノン側が便宜を図ったとも見なせる。

普通の国では、まるで砂漠の中で6ヶ月間飢えていたかのように、大げさに感動してディーゼルタンカー到着を祝ったりしない。こうした一方的な演出は、意思決定を担う主権者であるはずのレバノン議会や政府機関を弱体化させるだけだ。

ドロシー・シア駐レバノン米国大使は、今更ながら、世界銀行の資金で、エジプトの天然ガスを使ってヨルダン経由でレバノンに電力を供給する案を検討していた。アラブ諸国によるレバノンへの介入を排除しようと何十年も努力してきたナスラッラー師が、実際にレバノン人の生活を向上させるかもしれないプロジェクトに激怒するのは当然である。盟友であるミシェル・アウン大統領が大使に感謝する一方で、ナスラッラー師は大使を「レバノン国民に対する共犯」と激怒した。ヒズボラにとっては不満だが、レバノンがエジプト産燃料やヨルダン産電力を輸入すれば、国際制裁に違反せずにアフガニスタン化を避けられる。

ナスラッラー師は、米国大使館に作戦室があり、レバノンの経済的混乱と燃料不足を首謀していると支離滅裂な発言をしている。燃料不足がどこに由来するのか、ナスラッラー師は誰よりもよく知っている。ナスラッラー師に従うヒズボラのメンバーが、燃料不足にもかかわらずレバノン産燃料を国境を越えてシリアに密輸するのを統率しているからだ。そもそも、なぜレバノンがこれほど深刻な燃料不足に陥っているのか、ナスラッラー師には問いたいものだ。

ナスラッラー師は、多くの国民が実は外国からの干渉を恐れるどころか、犯罪者で非常に無能な政治家よりも外国勢力にレバノン経済を運営してほしいと望んでいることに気づいていないのだろうか。手遅れになる前に、エマニュエル・マクロン仏大統領に介入してほしいと嘆願したレバノン人もいたことが思い出される。ナスラッラー師の言う「作戦室」にモサドのエージェントが紛れ込み、レバノン経済破壊のためにあらゆる工作をしていると判明したとしても、アウン大統領、ナスラッラー師、ベリ議長以上の損害を与えはしないだろう。

ナスラッラー師は、外国大使館にコンタクトしただけでも市民を裏切り者として糾弾するが、その基準からすれば、彼こそレバノン最大の裏切り者である。ナスラッラー師は外国人と話すだけでなく、外国から給料をもらってその国の破壊的な意図に従って行動し、そのことを自慢すらしている。彼は、裏切り者をどのように罰するべきだと言うのだろうか?

ナスラッラー師は、「白昼堂々」とイラン製品を輸入すると言って自慢している。なんという怖いもの知らずだろうか。米国財務省は現在、イラン産原油を輸入して国際制裁に違反した可能性のあるレバノンの金融機関に対して、新たな金融罰則を起草中である。

ナスラッラー師は、米国がアフガニスタンで「屈辱的な歴史的敗北」を喫したことを、米国への依存が何をもたらすかの証拠として提示しているが、彼本人がレバノンのアフガニスタン化を全力で目論んでいる。

バリア・アラマディン

ナスラッラー師は、イラン産石油を積んだタンカーはレバノンにおいて救世主だと考えるべきだと、威嚇しつつ警告している。万一、米国やイスラエルがタンカーを沈没させようとしたら、ヒズボラはどのように報復するつもりなのだろうか?そして、なぜナスラッラー師は、レバノン自体よりも、これらの船の状況を非常に気にかけているのだろうか?何といっても彼は、ヒズボラが管理する倉庫にあった約3,000トンの爆薬で、レバノンの首都ベイルートの半分を爆破させた男である。一方、イスラエルがシリアにあるヒズボラの武器庫や基地を爆撃し、同国の監視機がベイルート上空を旋回している間は、ナスラッラー師は無力であり、地下壕に籠ってレバノン国民全体を人間の盾のように利用している。

イランの組織がレバノン経済に深く入り込み、ナスラッラー(悪魔の党)がレバノンを麻薬、武器拡散、テロリズム、組織犯罪に深く巻き込むほど、同国は国際システムから切り離されることになる。それこそ、イランの狙いだ。レバノンがイランに毒されるたびに、レバノンのアラブ・アイデンティティや国際的で寛容な文化が一歩ずつ失われていく。

ナスラッラー師は、米国がアフガニスタンで「屈辱的な歴史的敗北」を喫したことを、米国への依存が何をもたらすかの証拠として提示しているが、彼本人がレバノンのアフガニスタン化を全力で目論んでいる。彼は、レバノンに恥をかかせてはならないと延々と語っているが、彼こそが国の恥の象徴である。彼は恥ずかしげもなく、人々の苦境をレバノン国家のせいにしている。貴族主義的なレバノン国家が国民を何百万回も裏切ってきたのは確かだが、彼もレバノン国家の一部なのだ。外国の操り人形となっている彼自身も、今までの失敗、盗み、災難に対して責任がある。ヒズボラは、レバノンを救う魔法の治療薬なぞ持っていない。

イスラム主義反政府勢力である ”サイード”ナスラッラー師の目的は何だろうか?最近では、イスラエルがまもなく崩壊し、イスラム世界が直にエルサレムを取り返すと言う馬鹿げた威勢いい発言が国民の失笑をかっている。エルサレムに到達するものがあるとしたら、それはレバノンのガソリンを求める人の列だろう。

レバノンは、公共の場での議論や民主主義への参加という面で、常に一番開放的な環境を維持してきた。これらの価値観こそ、国民を解放してくれるものだ。次回選挙では、給料をもらっているメンバー以外、誰がヒズボラとその腐敗した取り巻きに投票するというのだろうか。

「ヒズボラ・アル・シャイターン」は宗派間対立を悪化させ、お互いに殺し合うよう仕向けているが、真の問題はキリスト教徒、スンニ派、シーア派、ドルーズ派の共存ではない。むしろ、ジブラーン・バシール氏やナスラッラー師のような人物が、国家の統一を犠牲にして宗派間の権力対立を利用しているのだ。

逆に言えば、ナスラッラー師、バシール氏、アウン大統領をはじめとするレバノンの軍閥領袖は全て、国家統一のために使える最高の勢力となりうる。ただし、全国民が一丸となって、犯罪者たちを選挙できっぱり権力の座から引きずり下ろすことができた場合の話であるが。

  • バリア・アラマディン氏は、中東と英国で活動する、受賞歴あるジャーナリスト兼アナウンサーだ。メディア・サービス・シンジケートの編集者でもあり、多くの国家首脳にインタビューを実施してきた。
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