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2020年ドバイ国際博覧会は宇宙革命を起こすことができる

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01 Oct 2021 09:10:23 GMT9
01 Oct 2021 09:10:23 GMT9

新型コロナウイルスのパンデミックによって、世界が混乱に陥ったことにより、ドバイで開催が予定されていた2020年ドバイ国際博覧会が延期された。当初の開幕予定日から1年が経過した今週金曜日、世界に向けて2020年ドバイ国際博覧会が開幕した。2020年ドバイ国際博覧会の開幕は、人々が待ち望んでいたコロナからの復興への道が始まったことを告げるようなものだ。新型コロナウイルスにより、全世界が停止を余儀なくされた。それだけでなく、コロナは、どうしたら状況が改善されるのか、ビジネスや一般社会における既存のモデルの実行可能性について、我々に疑問を投げかけた。つまり我々には、復興したコロナ後の世界をどのようにしたいのか、何を変えればいいのか、という疑問が投げかけられたのだ。

2020年ドバイ国際博覧会のテーマについて考えてみたとき、今回の博覧会がコロナパンデミック後の再スタートを意味しているということを鑑みると、思わぬ偶然が見えてくる。我々は、現在最も差し迫った課題に対する、共通の解決策を探すことに焦点を当てつつ、2020年ドバイ国際博覧会が策定した今回のテーマとメッセージに注目すべきである。2020年ドバイ国際博覧会のテーマの例として、健康とウェルネス、気候と生物多様性、都市と農村の開発、寛容と包括性などが挙げられる。しかし、筆者が最も期待している2020年ドバイ国際博覧会のテーマは「宇宙」である。

その理由は、19世紀末に最初に開催された万国博覧会が、産業革命によるヨーロッパの高度経済成長と世界制覇の始まりを告げるものであったように、2020年ドバイ国際博覧会は、デジタル革命だけでなく、宇宙革命の到来を告げるものであると筆者は考えるからである。今後の数十年は、間違いなく宇宙の数十年となるだろう。宇宙への探求により、我々の生活のあらゆる側面が変化することになる。

筆者は、地球上に出現し、現在利用されている技術の多くは、宇宙でこそ真の意味で、大きな目的を見出すことができると信じてやまない。それらの技術には、3Dプリンター、ラボで育てられた食品、遺伝子工学、ロボット、人工知能、ブロックチェーン(分散型台帳やシステム)、再生可能エネルギーなどが挙げられる。これらの技術はすべて、宇宙や新しい惑星での持続的な生活に不可欠なものである。さらに、今世界を魅了している宇宙ロケットの打ち上げは、設計・開発・建設されているインフラの一部に過ぎない。このインフラにより、応用技術を何重にも開発することができ、新しい種類の宇宙起業家の誕生につながるのだ。

また、同様に、宇宙に向けて実現されている進歩の多くは、地球上の私たちの生活を向上させるものとなる。これは実際にすでに現実となっている。環境、社会、ガバナンスの環境面において、宇宙は最大の役割を果たすことになるだろう。企業が環境目標を追跡するには、人工衛星から送られる宇宙ベースのデータが最も効率的な方法となるだろう。これにより、深刻な気候変動のリスクを軽減することができる。エネルギーの安全保障、食料の安全保障、水の安全保障は、宇宙分野が解決に貢献できるテーマである。このような将来的な取り組み以外にも、宇宙分野はすでに活気に満ちた強力な産業であり、そのことは民間企業と公的機関との連携の成功例にも証明されている。とはいえ、これはまだ始まりに過ぎない。

リープフロッグ戦略の話はやめて、宇宙にワープドライブ戦略を実施しよう。

ハーリド・アブー・ザフル

その意味で、2020年ドバイ国際博覧会はまさに宇宙革命の発表の場なのである。このような趣旨で、アラブ首長国連邦(UAE)の先進技術担当相兼UAE宇宙庁長官サラ・アル・アミリ氏が、最新の宇宙研究と宇宙旅行、そして宇宙開発における女性の役割について講演を行うこととなっている。このことは、宇宙への挑戦が中東やヨーロッパにもたらす機会について、真剣に考える絶好のチャンスだと筆者は考える。

2020年ドバイ国際博覧会は、答えを見出すべき重要な質問を投げかけている。この宇宙革命の中で、中東はどのような位置を占めるのだろうか。ヨーロッパの立ち位置はどうだろうか?我々は宇宙という新天地の開拓にどう貢献していくのか。これらの目標がすべての人にとってより良い生活をもたらすようにするには、どうしたらよいのか。筆者にとって、これらの質問に対する答えの始まりは、2020年ドバイ国際博覧会のアプローチの説明にある。それは協調的解決である。なぜ、これが中東やヨーロッパにとって重要なのか、という疑問を持つ者もいるだろう。それは単純に、宇宙開発の同じ分野で競合する我々には、それぞれの居場所があるからだ。我々は、リーダーシップを目指す野心と大胆さを持つべきである。リープフロッグ戦略の話はやめて、宇宙にワープドライブ戦略を実施しよう。

博覧会は楽しみや発見の場でもあるが、今回の博覧会については、宇宙に関する目を見張るような体験ができることを期待している。まずは、UAEの宇宙計画と火星探査機「HOPE(ホープ)」を紹介する「アリフ・ザ・モビリティ・パビリオン」を訪れてみるべきだ。また、スイスのパビリオンは、人間の活動により宇宙に残された未使用の物質である「宇宙ゴミ」の危険性を訴えている。これにより、循環型経済の重要性に対する意識が高まることにつながる。また、ルクセンブルクのパビリオンでは、資源を賢く利用することで、活気満ちたな宇宙産業が誕生したことを紹介している。さらに土曜日には、フランス人宇宙飛行士のトマ・ペスケ氏が国際宇宙ステーションから生電話をかける様子を見ることができる。

しかし、私が今回の博覧会のテーマを受けとめ、宇宙にそのスペースを捧げた(ダジャレだが)多くのパビリオンを訪れてほしいと思うのは、若者たちである。エンタテインメントを通じて、2020年ドバイ国際博覧会は、この変革の火種となる大きな知識の源を提供する場である。また、この博覧会は将来の世代に、より大きな目標に向かって刺激を与えるものでもある。アメリカ館に展示されている月面や火星の隕石などの岩石サンプルや、最先端の宇宙技術を目の当たりにした子供たちは、もっと知りたい、理解したいと思うのではないだろうか。

筆者自身、ヨーロッパや中東のより多くの若者が、宇宙飛行士になることを夢見るだけでなく、宇宙開発の可能性と安全性を実現する起業家になることを期待している。これこそが、筆者が2020年ドバイ国際博覧会に最も期待する影響だ。

  • ハーリド・アブー・ザフル氏は、メディア・テク企業であるユーラビア社のCEOを務める。またアル=ワタン・アル=アラビ誌の編集者でもある。
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