イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相は慌だしい初の国連訪問を行ったが、P5+1との間で行われている核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」の復活に向けた協議の再開について、期待を抱かせることはなかった。彼はウィーン会議への復帰の具体的な時期を示す代わりに、マフムード・アフマディネジャド元大統領の側近であるサイード・ジャリリ氏を彷彿とさせる「権利ベースのアプローチ」を唱えた。イランの政権交代から3ヶ月が経過したにもかかわらず、新政府の立場、特に2021年に核協議を再開するつもりがあるのかどうかについては、多くの不信感が持たれている。
バイデン政権は、フーシ派民兵やヒズボラの好戦的な行為を非難する際の言葉を和らげている。最近の声明では、これらの組織を明確に名指しすることを避けており、これらのテロ組織に対してよりソフトな姿勢をとっていることを示している。ここで注意したいのは、このようなソフトなアプローチは積極的な歩み寄りではなく、むしろ弱点と捉える人々が少なくないということだ。結果遅かれ早かれ、イランがウィーンでの協議に復帰する際には、柔軟性は失われ、強硬性が増すことになるだろう。
その兆候はいたるところに現れている。例えば、国際原子力機関(IAEA)とイランとの合意を見てみよう。9月12日、IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は次のように述べた。「嬉しいことに、今日は非常に建設的な結果を得ることができました。これは、ここでの機関の機器の運用を継続することに関係しています」。そして、そのためには、IAEAと世界が「必要な保証と情報」を得ることが不可欠であるとした。そのわずか2週間後、国連の核監視団は次のように述べ、失望を表明する。「TESAのカラジ遠心分離機部品製造工場への立ち入りを認めないというイランの決定は、9月12日に発表された共同声明の合意事項に反しています」
これに対し、イランのIAEA特使であるカゼム・ガリババディ氏はTwitterで次のように反論。「監視装置に関してイランが行ったいかなる決定も、法的な検討ではなく政治的な検討に基づいているに過ぎない。IAEAはこれをその権利のひとつと考えることはできないし、そうすべきではない」
また、イラン原子力機関のスポークスマンであるベフルーズ・カマルバンディ報道官も、カラジの遠心分離機組立現場への立ち入りを求めるIAEAの要求を「一方的で偏ったもの」として一蹴している。IAEAの保障措置に準拠したナタンツの核施設は6月、テヘランがイスラエルによるものとした破壊工作の標的となった。衛星画像では、屋根の損傷とその後の修復作業の様子が確認できた。カマルバンディ氏もこの事件で負傷し、入院したという。国連の核監視委員会は、監視カメラのうち1台が破壊され、もう1台が深刻な被害を受けていることを確認した。イラン原子力庁(AEOI)は、監視カメラをすべて民間エリアから撤去したことを認めている。
遅かれ早かれ、イランがウィーンでの協議に復帰する際には、柔軟性は失われ、強硬性が増すことになるだろう。
ムハンマド・アル・スラミ博士
テヘランがIAEAの要求に応じてビデオ映像を公開することは、被害の詳細とその原因を自発的に提供することと同義である。もしそれが内部的な障害による事故であれば、イランは大きな恥をかくことになる。しかし、もし妨害工作であった場合は、どのような映像であっても、攻撃者が結果を評価し、次の行動を計画するのに役立てる恐れがある。テヘランは、JCPOAの課題を未解決にしたまま、すべての映像の公開を控えている。
先月、グロッシ氏がテヘランを訪問した後、IAEAとイランの共同声明の抜粋にはこう書かれていた。「IAEAの査察官は、特定された機器を修理し、その記憶媒体を交換することが認められており、それらはイランのIAEAとAEOIの共同シールの下に保管される。その方法と時期は双方の合意による」とある。しかし、ガリババディ氏これを独自に解釈し、こうツイートした。「イランは、TESAのカラジ施設が現在も治安・司法の調査中であるため、同施設に関連する機器は整備対象に含まれていないことを、テヘランおよびウィーンでの協議で示している」
テヘランのメフル通信社は先週、イランがライバル国のスパイ機関に「支援され、指導された」テロリスト部隊を解体したと発表したと報じた。この、被害者としてのストーリーはJCPOAで規定されたレベルを超えて核技術や核物質を獲得しようとするイランの動きをうまく補完するものである。テヘランはウラン濃縮をより速いペースで、より大きく、より近代的な遠心分離機カスケードで進めているだけでなく、重要かつ広範囲な意味を持つウラン金属のノウハウを蓄積、または利用している。
ライシ政権は上海協力機構(SCO)への正式加盟という幸先の良いスタートを切ったが、オーストラリアの潜水艦取引を巡って激しく対立しているにもかかわらず、米国、フランス、英国のイランの核活動に対する方針は変わっていない。しかし、イランは、パキスタン、アフガニスタン、アゼルバイジャン、トルコとの緊張関係を背景に、ますますタカ派的な姿勢をとる可能性がある。より良い条件のJCPOAの締結を遅れさせれば、この地域でのイランの力が増すことになる。したがって、イラン新政権は、ウィーン会議への復帰時期について、今後も慎重且つ曖昧な姿勢を取り続けるだろう。
ムハンマド・アル・スラミ博士は、国際イラン研究所(Rasanah)の所長である。ツイッター: @mohalsulami