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「忘れられた」ガザに必要なのは、深刻ぶったメッセージや空虚な約束ではない

「ガザは解放される必要がある。ガザの人々が呼吸できるように」と、クリス・ドイル。(AFP)
「ガザは解放される必要がある。ガザの人々が呼吸できるように」と、クリス・ドイル。(AFP)
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15 Dec 2021 03:12:19 GMT9
15 Dec 2021 03:12:19 GMT9

半年と少し前、イスラエルはガザへの攻撃を終了し、ハマスもロケット弾攻撃を停止した。これは、今世紀に入ってから5回目のガザに対する戦争だった。争いが一段落した後、平穏を取り戻し、根本的な問題に対処しながらガザの復興を支援する必要性について、様々な取り決めや誓約が為された。これらの約束は守られたのだろうか。そして、私たちは今回起こったことの本質について何を学んだのだろうか。

この紛争に対しての国際的な関心が、これほど急速に失われたことは珍しい。紛争終了後の数週間ですらない、数日後には、各国の外相たちはガザについての深刻ぶった発言をするのをやめてしまった。援助国からの支援もほとんど止まった。UNRWAは12月には職員の給与を支払うことができなくなるかもしれない。

これまでと同じように、平穏は取り戻されたが、それは片方の政治的立場、片方の人々にとってだけだった。イスラエルのカフェやバー、ナイトクラブはすぐににぎわい始め、テルアビブのビーチは混み合い、イスラエル人は例年のように遠方にバケーションに出かけるようになった。

だが、ガザのパレスチナ人はどこでバケーションをとるのだろうか。パレスチナの子供たちは「バケーション」という言葉の意味すら知らない。ほとんどの人々は、この地獄のような場所から出たことがない。彼らにはパスポートも必要ない。目にする飛行機は、自分たちを爆撃しにくるものだけだからだ。ビーチに行くことはできるが、毎年最大8000万リットルもの汚水が部分的に処理されただけで捨てられているガザの海で、誰が泳ごうと思うだろう。イスラエル人たちはすでに自宅に戻っているが、国連によれば、ガザでは56000戸の家屋が今も5月の紛争による損害の復旧を待っている。これらの家屋の多くは冬の雨で浸水してしまった。

イスラエルは、この11日間の紛争において、イスラエル軍はハマスの軍事インフラのみを標的とした外科的攻撃に従事していると主張していた。当時も、現地からの証拠によって、この主張には大きな疑問が呈されていた。それからの6ヶ月間、さらにその主張を覆す新たな証拠が明るみに出ている。

主要な出来事のひとつとして、AP通信やアルジャジーラのオフィスがあったアルジャラ・タワーがイスラエルによって爆撃されたことが挙げられる。この攻撃は激しい批判を浴びたが、イスラエルは、ハマスがこの高層ビルを軍事作戦に使用していたという路線を貫いた。11月になる頃には、イスラエル政府はこのような攻撃を正当化するために必要な情報を欠いていたこと、米国に渡った証拠さえ改ざんされていたことが、イスラエルに関する報告書で明らかになった。

監視団体「Airwars」は、イスラエルによるシリアへの空爆と5月のガザへの空爆を比較し、11日間のガザでの空爆において、8年間のシリアに対する攻撃全体の10倍の民間人が殺されたと結論を出した。これは、この2つの軍事攻撃の明らかな目的を浮き彫りにするものだ。

イスラエルは14年間続いたガザ地区の封鎖を終わらせるどころか緩和することすらなく、逆に封鎖を強化し続けている。

クリス・ドイル

シリアでのイスラエルの軍事行動は、イランの軍事展開とミサイル計画を抑制し、ヒズボラへの武器輸送を阻止することに重点が置かれてきた。ガザでも、イスラエルは正当な予防措置としての目的を掲げてはいた。自国の領土に発射されるロケット弾や迫撃砲を阻止することだ。だが、これまでの紛争と同様に、標的の幅広さはその軍事攻撃が多分に懲罰と抑止のための戦略でもあることを示している。

注意ぶかく見てみれば、イスラエルの戦略は一目瞭然だ。元イスラエル外相のツィピ・リヴニ氏は、2009年のガザ攻撃について次のように述べている。「我々は均衡を崩したということをハマスに証明してみせた。イスラエルの民に銃を向ければ、この国は手に負えないほど暴れることで返答する―そして、それは良いことだ」

「手に負えないほど暴れること」は今もプログラムの一環であり、回を重ねるごとにイスラエルの攻撃の激しさは増している

国際社会の主要な立役者となっている国々―コミュニティがあるというふりをするのはやめよう―は、たとえば2009年の紛争の際のように、独立した調査を適切に行うことについて言及する素振りすら見せなかった。イスラエルはまたしても、近い将来に説明責任を求められるという流れを恐れる必要すらないのだ。

イスラエルとエジプトはガザ地区の復興についての話し合いを行ってきた。これは、「紛争の縮小」というアプローチとまさに合致している。イスラエルのヤイール・ラピード外相は、「安全と引き換えに経済を」と表現する自身の計画をエジプト当局と共有した。イスラエル政府は、まだ正式にはこの構想を採用していない。だが、エジプト政府側は、ガザに対しての責任を自分たちに押しつけようというイスラエルの長期的な目的を重々、承知しているはずだ。エジプトは復興に着手してはいるが、それだけではほとんど変化はもたらすまい。

より詳細な情報を待ちたい。だが、イスラエル・エジプト間の封鎖を軽くいじるだけで奇跡を期待することはできない。ガザは解放される必要がある。ガザの人々が呼吸できるように。正常な貿易が許されない限り、ガザに本当の意味での経済活動は存在できない。封鎖は最低限を残し、解除される必要がある。沈黙を強いられた長期的停戦は、イスラエルの極右勢力とハマスの利益に合致する。どちらも、正式な交渉で導かれる結果や、譲歩できない条件には直面したくないのだ。このままでは、危機は解決されない。

イスラエルは14年間続いたガザ地区の封鎖を終わらせるどころか緩和することすらなく、逆に封鎖を強化し続けている。最近も、3年以上をかけて、ガザの周りに新たな壁を完成させた。このハイテク版の壁は65kmの長さに及び、遠隔センサー、カメラ、地下壁、海洋バリアなどを備えている。イスラエルが最初に壁を建てたのは1994年だ。監獄の壁をさらに厚くしたとしても、イスラエルの人々にとってはうわべだけの安全が少しばかり増すだけだ。ロケット弾や迫撃砲は壁を越えて飛んでくる。逆方向には爆弾が降り注ぐ。

再度の紛争が起きる条件は確実に揃っている。2022年とは限らないが、1~2年以内に起こってもおかしくはないだろう。どちらか一方が戦闘の再開を望む時が来るはずだ。イスラエル政府は「芝刈りをする」必要性を感じるようになるだろう。「芝刈り」は、イスラエルの戦略家たちが嵐のような爆撃をチャーミングに表現した言い方だ。ハマスは、イスラエルの市民に向けてロケット弾を打ち込む能力がまだあること、自分たちがまだ存在していることを誇示したいと感じ始めるかもしれない。ハマスの指導者たちの多くはガザ地区の外に住んでおり、彼らの支配下で生活し、紛争の後に瓦礫の中を歩いて遺体を探したり、決して消えることのないトラウマを抱えて生きなければならない200万人のパレスチナ人の幸福をほとんど顧みることはないのだ。

ハマスがこのような攻撃で何を達成できると考えているのかは、まったくの謎だ。ガザ地区を永遠に封鎖しておきたいと望むイスラエルの指導者たちは満足しているが、封鎖の緩和や解除を望むかもしれない者にとっては、その意欲を失わせることになる。

何が起きれば、国際社会の主要な立役者たちは目を覚ますのだろうか。代償はあまりにも大きい。援助国は何百万ドルも費やし、封鎖を助成している。問題が再燃しないように祈るよりも、もう少し野心的になるべき時だ。

  • クリス・ドイル氏はロンドンに拠点を置く「アラブ・英国相互理解のための協会(CAABU)の会長。Twitter: @Doylech
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