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イラクのマフィア民兵がパンドラの箱を再び開ける

25 Aug 2019 02:08:54 GMT9

新たなイラク戦争はすでに始まっている。ここ数週間にわたりイスラエルは、イランに支援されたシーア派民兵の管理下にある場所に爆撃を行ってきた。これに対し準軍組織は、米国の外交および軍事施設、および同地域の石油インフラを攻撃した。

国が外部からの攻撃に晒される中、悪質な病が内部からの崩壊を引き起こしている。イラクは各地区、各州ごとに準軍事部隊として同時多発的に機能する犯罪集団によって分断されてきた。ニネベ、サラディン、その他の場所で奪還された油田は、これらの部隊のドル箱となっている。イラクの天然資源はタンカーで密輸され、近隣諸国へ売られている。民兵がダーイシュから石油施設を奪還した際、バイジなどでは略奪行為があまりにひどかったため、まったく使えない状態になっていた。さらに民兵による奪還した地域住民の取り扱いもダーイシュの超暴力的なものに匹敵するかそれ以上に残虐なものであった。

バグダッドの地区は様々な「マフィア」民兵により支配され、彼らはお互いに縄張り争いをしている。カラダとアルジャドリヤではバドルとイマームアリ旅団が、またサドルシティではアサイブアールアル=ハクと平和旅団が、さらにパレスチナ通り沿いはヒズボラ大隊が支配し、残りの地域をより小さな勢力が争っている。銀行はテヘランに代わって資金洗浄を担当し、一方、都市廃棄物、金属くず、復興事業など、経済部門全体は準軍事組織が独占している。人々は身代金目的に誘拐されたり、チェックポイントでは貴重品を強要されるなどしている。

2019年3月にモスル近郊で定員オーバーで不安定なフェリーが転覆した際、約100名が死亡した。調査担当者は、アサイブアールアル=ハクと繋がりのある著名な人物の不正行為が観光および旅行部門の安全性を損なったことに関心を示したため、脅迫を受けた。事故が起こったリゾートへの出資者は、みかじめ料として収益の30パーセントを民兵に支払っていた。専門家は、ダーイシュから奪還した地域のイラク経済の3分の1は、ハッシュドアシュ=シャビの手に渡っていると推計している。

準軍事組織はダーイシュを根絶する目的でイラク全土に守備兵として配置された。しかし、彼らはダーイシュにとって代わって民間人を迫害している。ダーイシュとハッシュドはいずれも、数千エーカーの農地を意図的に焼き払い、暮らしを崩壊させ、食糧備蓄を破壊したとして非難されている。

イラクには機能する政府が存在しているのか。有名無実のアーディル・アブドゥルマフディー首相は、閣僚席を埋めるだけで1年を費やした。バルハム・サリフ大統領は人柄はいいが、彼の役割は単に儀礼的なものにすぎない。権力は完全にシーア派の議会のリーダー、すなわち、トラブルを頻発したマフディー軍の指導者ムクタダー・アッ=サドルと、イランに支援されたビナ民兵同盟が握っている。

ハッシュドはもはやダーイシュと戦うそぶりさえ示していないが、国家予算に占めるシェアは2016年から2019年にかけて16億ドルから21.6億ドルに急増している。非政治的な部隊は素直に動員解除されたが、親イラン派はハッシュド委員会の支配から利益を得て給与全体を貪っており、その資金の一部はテヘランに吸い上げられている。

勢力が弱く分断化された状況にあるスンニ派、クルド人、キリスト教徒、その他の少数派は、政府の省庁を解体して自らの力を強化する党派的なシーア派の勢力争いの結果、州を去っていった。ディーヤーラーなどの州では、ハッシュドは、地方議会の支配を悪用して腐敗した同盟に直接資金を提供する一方、町全体と復興機関および行政資金を枯渇させている。

これらの勢力は、同じシーア派のコミュニティに対してさえ脅威となっている。バスラには広大な油田があり潜在的な富の上に存在しているが、その住民は慢性的な停電に耐え、貧困と汚染された水に苦しめられている。彼らが怒りを露わにし、ハッシュドの地方事務所を破壊し、イラン領事館を焼き払ったのも頷ける。イラク人が、巡礼、観光、またはビジネスのためにイランに旅行した際に、イランの公務員からの軽蔑的な無礼な仕打ちに耐えなければならなかったという話も多い。イラク人女性がイランの空港職員に殴られている写真が先週出回った。

テヘランのイラク人の定義はまさに寄生虫である。イラクの隅々までその犯罪性と残虐性を蔓延させ、国の天然資源を食い尽くし、イラン人の親分と戦利品を共有しているというのだ。

2018年の中ごろにテヘランがハッシュドに対して中距離ミサイルの輸出を始めた際、その結果は明らかであった。イスラエルはすでにシリアの南西部の同様の場所に砲撃を開始していた。イランの軍事的な支援が直接敵対していなかったイエメンとレバノンを対立に巻き込んだのと同じように、バグダッドの人口密度の高い地域に対する攻撃を誘引したいという意図的な欲求があったのは間違いない。

準軍事組織の司令官(国際テロリストに認定されている)アブ=マフディ・アル=ムハンディスは、イスラエルがイラクの標的を攻撃するのを支援したとして米国を非難した。ムハンディスは、首相兼総司令官のごとく振る舞い、両国に対する報復をすると脅迫した。彼の準軍組織の部下はさらにこれを一歩進めた。彼らはバグダッド上空で偵察機から発砲したと主張し、最近の攻撃を「宣戦布告」と説明、米国に対し「米国がこの地域から永久に撤退しない限り戦いを続ける」と警告した。

2003年にサダムが解任された際、イランの指導者たちは、自らの脅威やライバルとなる可能性のある強力なイラク国家の建設を阻止することを決意し、分裂と不和の種をまくために党派的な民兵を積極的に展開した。イラクがダーイシュの復活、イスラエルによる空爆、腐敗による経済的壊滅、民兵による犯罪行為などの脅威に晒されているのを受け、テヘランとその準軍組織は、イランは戦争の範疇に入るダル・アル=ハーブを永続的なものにするという決意を継続して示している。

 

バリア・アラマディンは、受賞歴のあるジャーナリストであり、中東および英国で活動するブロードキャスター。彼女はMedia Services Syndicateの編集者で、多数の国家元首にインタビューを行っている。

https://www.arabnews.com/node/1545121 

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