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グリーンエネルギーの今後を主導するのは湾岸諸国

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04 Feb 2022 03:02:59 GMT9
04 Feb 2022 03:02:59 GMT9

気候変動と世界的格差に対する意識が高まるなか、今後いかにクリーンエネルギーを持続可能な形で生産するかが、熱い話題となっている。社会全体が倫理的投資を実施すると決意すれば、経済・社会基盤がより持続可能な形に強化されていくとの議論がある。

この点で湾岸諸国は主導権を握っており、長期的かつ確実に需要を満たすために、クリーンエネルギー分野で環境・社会・ガバナンス(ESG)に関わる基準を確定・実施するとの覚悟が強いとみられる。諸外国が化石燃料への投資をやめるなか、石油生産国が将来的に地政学的地位を維持するためにも、クリーンエネルギーの供給を継続することが極めて重要だ。

サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)を筆頭とする他の湾岸諸国は素早い動きを見せた。気候変動に対抗する技術革新を採用することで、経済や市場をよりグリーンでより持続可能な方向に進める上で、どれだけ大きなチャンスが得られるかを実証してきた。

エネルギーの大転換からグリーンファイナンスにまで至るまで湾岸諸国は政策を転換し、技術革新とグリーンエネルギーで動く未来を実現するための、官民の協力関係が実現しつつある。

技術が進化し環境パフォーマンスが向上すると、コスト削減やプロセスの効率化につながり、結果として持続可能性を重視する企業は競業他者に対し株価・業績の両面で実績を伸ばしている場合が多いと思われる。

湾岸諸国の株式市場は、環境対策の実施により多大な利益を得ている。アブダビとサウジアラビアの証券取引所はどちらも2021年の世界ランキングでトップ10入りし、アブダビは年間65%の運用益を出してナンバーワンの地位を占め、サウジアラビアは30%の運用益を出した。

今後実行可能な措置の中には、世界中でグリーンな技術革新を加速させ、民間部門による投資や研究開発に助成金を出し、環境汚染技術を推奨せず、よりクリーンで持続可能な技術を支援することなどがある。

湾岸諸国はすでにメガ発電プロジェクトを通じてグリーンエネルギー分野で先行しており、サウジアラビアは最近リヤドで閉幕した「未来鉱物フォーラム」で、関連するイニシアチブを発表した。

サウジアラビアとUAE(OPEC加盟国では石油・天然ガス生産量が1位と3位)は、世界トップレベルのブルー水素・アンモニア輸出国となり、クリーンエネルギー輸出国としてのブランドを確立し、未来型エネルギー分野で世界市場のリーダーとなるべく競い合っている。

上記の目標を達成するため、サウジ国営石油企業「アラムコ」とアブダビ国営石油会社(ADNOC)は、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)プロジェクトに本腰を入れるものと予想される。サウジアラビアのウスマニアとUAEのレヤダにある施設は、それぞれ年間80万トンの二酸化炭素回収能力があり、これを利用して将来的にはブルー水素の生産も可能となるだろう。ADNOCでは、2030年までに二酸化炭素回収能力を年間500万トンにまで拡大する予定だ。

エネルギーを輸入に依存する国は、ブルー水素などの新エネルギーを輸入する準備が完了している。アラムコでは、2020年9月に世界で初めて発電用途のブルーアンモニアをサウジアラビアから日本に輸出した。

ADNOCは2021年1月、2050年までのカーボンニュートラル達成を目標とする日本との間で、初の燃料用アンモニア供給協定を締結した。水素とアンモニアは、日本で発電用燃料として使われる割合が現在0%だが、30年後には10%に到達すると見込まれている。

投資家も湾岸の石油生産国と手を組む動きを見せている。ADNOCは、オランダの化学企業OCIと合弁でファーティグローブ(Fertiglobe)を設立し、ブルーアンモニア年間100万トンを生産するプロジェクトに投資した。

同様に、サウジアラビアが計画するゼロカーボンシティ「ネオム(Neom)」は、ニューヨーク市場に上場する「エア・プロダクツ」およびリヤドに拠点を置く「ACWAパワー」との合弁会社を設立し、世界最大となる50億ドル規模のグリーン水素プロジェクトを立ち上げた。「未来鉱物資源フォーラム」で発表した通り、サウジアラビアは2025年までに約120万トンのアンモニアを生産すると期待されている。

湾岸諸国では他にも合弁事業が開始すると見込まれている。UAEは再生可能エネルギー生産能力が比較的高く、2020年末時点で2.54ギガワットであるのを考えると、グリーン水素・アンモニアの生産能力も高くなる。これに対してサウジアラビアは413メガワットだ。数値の出典は「国際再生可能エネルギー機関(IRNA)」。

人類は今後とも長く、環境・社会・ガバナンス(ESG)気候変動問題に取り組むこととなる。来年アブダビで開催予定のCOP28で、サウジLEAPイニシアチブをたたき台とした議論が再開されるのは注目に値する。

湾岸の石油・天然ガス生産国は財源を自由に使えるため、二酸化炭素の回収・再利用や世界が必要とする新形態のクリーンエネルギーなど、独創的・革新的なイニシアチブを実現・発信する上で大きな役割を果たせる。

  • モハメド・ラマディ博士は以前、銀行役員とダーランの「キング・ファハド石油鉱物大学」の教授(金融・経済学)を兼務していた。
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