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すべての社会において、女性の才能は発展のために不可欠だ

サウジの映画学科の学生たち。2018年3月7日、ジェッダで撮影。(ロイター)
サウジの映画学科の学生たち。2018年3月7日、ジェッダで撮影。(ロイター)
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08 Mar 2022 08:03:54 GMT9
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今年の国際女性デーのテーマは「持続可能な明日に向けて、ジェンダー平等をいま」で、ジェンダーについての先入観や偏見(ジェンダー・バイアス)が女性の生活やキャリアにもたらす影響についての認識を高めることに重点が置かれている。女性や女子たちは生まれたその日から様々な形のジェンダー・バイアスに直面する。家庭では、男子の方が大切に扱われ、栄養面や医療面でも優遇されるかもしれない。一方、女子は教育や仕事、結婚に関してほとんど選択権を持たずに成長することが多い。生涯を通じて、女性は様々な直接的、間接的差別を体験し、それらが女性の選択や機会、リソースや権利、コミュニティでの活動や、昇進、社会に貢献していく能力に影響を与える。

長年、サウジアラビアの女性はこのジェンダー・バイアスに苦しめられてきた。不幸なことに、これは宗教の名を借りて押しつけられたものだった。イスラム教は人権や男女平等の概念が成文化されるずっと以前から、女性に平等な権利と社会的な地位を与えてきたにもかかわらずだ。だが今日、ここ数年の政治、法律、社会関係における劇的な変化によ、イスラムの公正の原理が復活したことで、私は今こそがサウジアラビアの女性にとって最高の時代だと心から言える。先月、エジプト石油ショーに際して開催された「エネルギーにおける平等についてのカンファレンス(Equality in Energy Conference)」でも、私は同様の見解を述べた。エネルギー業界は、おそらくまだジェンダー・バイアスが存在する分野の一つだからだ。

エネルギー分野における女性の参画について話ができたこと自体が、女性の立場がどれほど変わったかを物語っている。他の分野ほどエネルギー関連職につく女性の数は多くないが、少なくとも、女性が参加し、成長するための機会はある。新たに女性に対して開かれたというわけではないものの、サポートや受け入れ体制はより整ってきている。とはいえ、女性に「適した」学問や業界があるというある種の考え方や文化は、世界中の多くの女性にとっていまだに障壁となっている。

アラムコは、1960年代から女性を雇用してきたパイオニア的存在であり、女性を歓迎する環境が整っている。だが、女性の教育の機会が限られていること、社会的な要因に阻まれることなどから、実際に入社する女性はほとんどいなかった。しかし、有能で高いスキルのある専門職の人材が不足している一方、多数の未開発の女性の人材が存在することに気づいたアラムコは、メンターシップ・リーダーシッププログラムなど、女性の入社や昇進をサポートするいくつかの取り組みを開始した。こうしたプログラムは現在、あらゆる分野で必要とされている。より多くの若い女性が新しい分野に進出し、スキルや知識、能力をより重視する新しい仕事環境を経験するようになってきたからだ。

以前は、教育の機会も限られ、業界も女性に開かれていなかったため、科学やテクノロジー、エンジニアリング、数学(STEM)を専攻する女性は少なかった。またジェンダーロールについての偏った考え方も深く根づいていた。この10年間で、より多くの女性がSTEM分野で学び、働くことができるようになったが、ジェンダーロールについての偏見はいまだに消えていない。女性はキャリアのどこかの段階で家族か仕事のどちらかを選択し、課せられた役割と責任のバランスをとらなくてはいけない、いわゆる「ガラスの天井」に出世を阻まれるなどの現状がある。アラムコは、女性が必要とするサポートの提供に成功してきたモデルであり、現在では、すべての部署と、現場のエンジニアリングにおいても女性がリーダー的ポジションで活躍している。

研究によると、クリーンエネルギー産業には女性の経済的地位向上の機会が豊富だという。特に太陽光発電の分野で成長している持続可能エネルギーシステムへの移行が、女性の雇用の機会を増やしている。女性は、環境やサステナビリティに関わる問題により敏感な傾向があるためだ。国の調査では、クリーンエネルギー分野で働く女性の割合は、エネルギー分野全体よりも高いことがわかっている。

サウジアラビアでは、エネルギー省をはじめとする公的機関及び民間のエネルギー分野や、アブドラ国王石油研究センターなどの科学研究の分野で、女性がより重要な役職につくようになってきている。女子大学として初めて工学部を開設したエファット大学では、エネルギー工学の修士号を取得することが可能で、石油工学や再生可能エネルギーに特化したオプションも用意されている。また、太陽光発電に焦点を当てたプログラムも開始した。さらに、2012年からは「サウジアラビア女性のためのイブン・ハルドゥーン・フェローシップ」として、博士号を取得したサウジアラビア人女性の科学者や技術者に米国のマサチューセッツ工科大学で1年間研究を行う機会を提供している。

しかし、女性の才能が十分に活かされる社会にするためには、新たな政策を導入する必要がある。女性の職場進出を阻む要因として、産休や育休に関する政策、フレックスタイム、ジョブシェアリング、パートでの在宅勤務、事業所内保育など、家庭を持つ社員向けのよりよいワーク・ライフ・バランスを可能にする政策の欠如、そして不平等な賃金政策が挙げられる。また、メンターシップやトレーニング、ネットワーキングのプログラムと機会も必要不可欠だ。「男性社会」に入るのは簡単ではない。

この10年間で、より多くの女性がSTEM分野で学び、働くことができるようになったが、ジェンダーロールについての偏見はいまだに消えていない。

マハ・アキール

職場全体、またはリーダー的役職における男女バランスに関して、男女比率を考慮した採用制度をめぐる議論は続いている。エジプトでのエネルギー・カンファレンスでは、女性からも数よりも質を重視する意見が多く、性別にかかわらず、能力や資質が重視された。男女比率を考慮した採用制度は初期段階では有効だと考えるが、その場合でも、しっかりとした基準に基づいて慎重に人材を選ぶ必要がある。女性が性別だけを理由に採用、昇進の機会を得たという非難を受けるようなことがあってはならないからだ。女性がその能力を理由に採用されたとしても、女性だからということだけで雇われたのだと揶揄する人がいることはめずらしくない。だからこそ、採用プロセス、昇進決定プロセスにおける透明性は非常に重要だ。

残念なことに、ジェンダーにまつわる偏見やステレオタイプ、不平等はすべての社会に現実に存在している。重要なのは、問題を認識し、政策やプログラムを通じてそれに対処すること、その効果を評価し、調整していくことだ。社会が発展するためには、男女両方の才能と洞察、エネルギーが必要なのだから。

  • マハ・アキール氏はジェッダ在住のサウジアラビア人ライター。Twitter @MahaAkeel1
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