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イランはどのようにしてシリアを代理戦争の場にしたか

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18 Mar 2022 12:03:32 GMT9
18 Mar 2022 12:03:32 GMT9

イラン政権の主な政策の一つに、「他国、特にアラブ諸国を代理戦争の場にすることで、この地域における政治的利益と覇権への野望を満たす」というものがある。イラン政権は、中東の不安要素となる非対称戦法を習得したようだ。

例えば、今月のイスラエルの空爆により、シリアでイスラム革命防衛隊の幹部2人が死亡した際、イラン政権が報復を約束したことで、この地域の緊張は一層高まった。神権政治の戦術の一つには、「他国の混乱や紛争を利用する」というものがある。注目すべきは、穏健派、強硬派、原理主義派のイラン指導者たちが、シリアでは政治スペクトルの違いを超え、同じ外交政策を目指しているように見えることだ。これは恐らく、アリー・ハメネイ最高指導者、イスラム革命防衛隊(IRGC)の上級幹部、IRGCの精鋭部隊であるクドス部隊(政権の革命的・イデオロギー的原則を推進するために外国で活動を行う)の指示だと思われる。

他の国々は、イランがシリアを代理戦争の場にしたことから重要な教訓を学ぶべきだ。イラン政権は何年もかけて計画を練り、シリアに甚大な影響力を行使し、アラブ諸国を戦場にしていった。2011年にシリア紛争が勃発すると、イラン・イスラム共和国は政権への助言サービスや道徳的支援を提供するという形を取りつつ、干渉を開始した。その後、混乱が拡大し、シリア軍が弱体化して複数の重要な戦闘に敗北し、領土が反対派や反乱軍に奪われると、イランは更に関与を強めていった。イラン政権はハメネイ最高指導者の指示の下、アサド政権に対する軍事、情報、経済支援を開始した。

次の段階へと進んだイラン政権は、IRGCの下級兵士だけでなく、上級将官までもシリアに派遣し始めた。更に、ヒズボラや各地のシーア派民兵などの代理権を利用しつつ、アフガニスタンなどから戦闘員を募ってアサド軍と共に戦わせた。更に重要なのは、イラン政権がダマスカスを経済的に依存させ、紛争を経済的に利用したことだ。イランはアサド政権に信用与信枠を設け、それを延長し続けている。イラン政権は、年間160億ドルもの資金をアサド政権に投じている。こうしたマキャベリズム的戦略により、イラン政権の支配層であるムッラー(イスラム教徒)たちはシリアの政治、軍事、安全保障機構の中枢部へと入り込んでいった。

しかし、これだけではなかった。イラン・イスラム共和国は、人口構造改革に着手したのだ。例えば、ヒズボラや他の民兵組織からシーア派の家族を移住させることでシリアでの長期的な影響力を高め、アサド政権の支配を強化していった。

イラン政権は何年もかけて計画を練り、シリアに甚大な影響力を行使し、アラブ諸国を戦場にしていった。 

マジッド・ラフィザデ博士

イデオロギー的に言えば、イラン政権はソフトパワーを利用することで、より強力かつ容易に革命理念を輸出できる。例えば、イランのイスラムアザド大学はシリアに新たな支部を開設した。その一方で、イラン政権はシーア派モスクを建設し、近隣の国々にシーア派の神殿を増やす計画に投資している。

戦略的、地政学的に言えば、イラン政権はシーア派勢力と民兵の連合体を強化し、イラク、パキスタン、アフガニスタン、レバノンからシリアを侵略していった。民兵の多くは、すでにシリアの社会政治的、社会経済的インフラの基盤と化した。イラン政権はまた、シリアに軍事基地と人員を配置することで、レバノンのヒズボラなど近隣の代理人に製造武器を輸出する費用を抑えることができた。

イランのIRGCとクドス部隊は、シリアの不安定な情勢を利用し、主な競争国であるイスラエルとの国境近くに軍を駐留している。IRGCはまた、シリアに恒久的な軍事基地を設置し、同国の複数の空港を強力に支配している。イラン指導者の立場から見れば、これで地域のパワーバランスが有利になる。

イラン政権はまた、高性能な弾道ミサイルや他の兵器を製造する工場をシリアに設立した。ここでは、特定のターゲットを攻撃できる技術が備わった精密誘導ミサイルも製造されている。イランは海外に兵器工場を持つことで、シリアなどの第三国を通じ、戦争や他国への攻撃に有利な軍事力を有するようになった。

イラン政権はまた、シリアの民兵組織を利用し、イスラエルを標的にすることもできる。イランのある軍事顧問は、2013年に「戦線はヒズボラによって守られている。戦闘員はイラン人、ヒズボラのメンバー、イラク人、そしてアフガニスタンのムジャーヒディーンなどで構成されている」と述べた。彼は質問を受け、「彼らは正しい側の人間だ。なぜなら、ハメネイ最高指導者の命令に従っているからだ」と断言した。

他の国々は、イランがシリアの不安定な情勢を利用し、アラブ諸国を永遠の代理戦争の場にしたことから教訓を学ぶべきだ。

  • マジッド・ラフィザデ博士:イラン系アメリカ人の政治学者。ハーバード大卒。ツイッター:@Dr_Rafizadeh
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