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暴力を誘発しているイスラエルには暴力について不満を抱く権利はない

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02 Apr 2022 07:04:26 GMT9
02 Apr 2022 07:04:26 GMT9

暴力はパレスチナ人とイスラエル人の間の終わりのない対立の答えにはならない。命が失われることは、犠牲者の民族や国籍に関係なく、いつでも遺憾であり、悲劇的だ。だが、イスラエル政府が妥協に基づく平和を受け入れ、パレスチナ人がイスラエル人の権利を認めてきたように、パレスチナ人の権利を認めようという心からの努力をし始めるまでは、暴力が続くことに誰も驚きはしないだろう。

暴力は、世界中のすべての国、すべての都市で起こっている。暴力を減らすことはできても、決して止めることができないのは事実だ。たとえばシカゴでは、2021年に800件近く、つまり、1日2件以上の殺人が起こっている。それでも、シカゴは宗教や国籍が暴力を煽る要因となるイスラエルやパレスチナと違い、宗教と国籍で人々を差別する軍事占領下にあるわけではないのだ。

イスラエル占領下のヨルダン川西岸にあるヤバド村出身のパレスチナ人、ディア・ハマルシュ氏(27)は先週、イスラエル人5人を射殺した後、イスラエルの治安部隊によって射殺された。イスラエルは直ちにハマルシュ氏の親族を逮捕し、おそらく一家の所有する家と財産も破壊するだろう。これは、ハマルシュ氏が行ったことと同じくらいの犯罪行為だ。

その翌日、イスラエル兵はヨルダン川西岸のジェニン近郊のパレスチナ難民キャンプを襲撃し、襲撃に抗議したパレスチナ人2人を殺害、14人を負傷させた。

ジョー・バイデン米国大統領は、ハマルシュ氏が殺害した犠牲者の家族に哀悼の意を表し、「テロの脅威」があると述べたが、イスラエルによるパレスチナ人の殺害については言及しなかった。

ハマルシュ氏がイスラエル人を殺害したことと、イスラエル兵がパレスチナ人を殺害したことは、どう違うというのだろうか?

なぜ暴力は存在するのだろうか? イスラエルはパレスチナ国家を設立するための交渉を拒否している。その代わり、1967年に占領した土地の支配を続けることを望んでおり、ヨルダン川西岸の大部分をイスラエルの一部として併合する計画を検討している。

平等な権利をはく奪され、抑圧された何百万人もの一般市民に対する国家による暴力という空気が蔓延するなか、抑圧された人々の一部が怒りを感じ、反撃し、暴力に走ることは予想できないだろうか。

レイ・ハナニア

もちろん、イスラエルがヨルダン川西岸地区の併合について語る場合、それは土地だけを併合することを指しており、パレスチナ市民たちは排除され続ける。イスラエルは土地を手に入れるが、人種差別的なアパルトヘイト制度をそのままにキリスト教徒とイスラム教徒を投獄し続け、人々の権利を否定するだろう。

平等な権利をはく奪され、抑圧された何百万人もの一般市民に対する国家による暴力という空気が蔓延するなか、抑圧された人々の一部が怒りを感じ、反撃し、暴力に走ることは予想できないだろうか。

暴力はキリスト教徒やイスラム教徒のアラブ人やパレスチナ人だけによるものではない。ユダヤ人やイスラエル人からも暴力を行使している。だが、イスラエル人がパレスチナ人を殺害しても、イスラエル政府は軽い罰で済ませるか、まったく罰を与えないことも多いのだ。イスラエル人テロリストの家族を逮捕することはない。イスラエル人テロリストの家を破壊することもない。

メディアは常にイスラエル人による残虐行為の深刻度を実際よりも軽く報道する。パレスチナ人やユダヤ人以外の人々に対してそうするように、1人か2人の犯罪者の行動を理由にイスラエル人やユダヤ人の人種や宗教でまとめてステレオタイプ化し、悪人扱いをして中傷することはない。イスラエルとメディアはアラブ人、パレスチナ人が行ったことすべてに対して、その全員を誹謗中傷し、テロリストと呼ぶのだ。

もしイスラエルが暴力を止めたいと望むなら、彼ら自身が行っている暴力も止める必要がある。また、イスラエルが憎しみを向ける者たちを止めたいと願うなら、イスラエル自身が憎むことをやめる必要がある。ユダヤ人とイスラエル人がアラブ人に対して抱いている憎しみは、キリスト教徒とイスラム教徒のアラブ人とパレスチナ人が彼らに向ける憎しみと同じかそれ以上に大きいからだ。

暴力をなくしたいか?もちろんだ。そのためにはどうしたらいい?人種差別主義をなくすのだ。差別を終わらせるのだ。イスラエルと親イスラエルは、偏った西欧諸国のニュースメディアによって受け入れられてきたダブル・スタンダードと偽善、相手を悪魔扱いすること、嘘を終わらせるのだ。

まるで、イスラエルは暴力を止めたくないかのようにすら思える。イスラエル政府はパレスチナの暴力を止めたいと望み、非難するが、イスラエル人による暴力を止めたくはないのだ。彼らは暴力を望んでいるのだと私は思う。暴力があれば、平和を拒否し、外国人への嫌悪と反パレスチナ政策を正当化することができる。暴力はいい言い訳になるのだ。

パレスチナ人が暴力を放棄しても、イスラエル政府は暴力を用いてさらなる暴力を誘発しようとする。イスラエルのイツハク・ラビン首相がパレスチナ国家を認めることに同意し、2国家解決に向けた交渉に入った時にそうしたように。このプロセスが真の和平を実施する段階に至る前に、ベンヤミン・ネタニヤフ元首相の過激な反和平レトリックに感化された25歳の過激派のユダヤ人入植者イガール・アミル氏が、和平交渉プロセスを阻止するためにラビン首相を殺害したのだ。

アミル氏と彼に影響を与えた過激派政治家たちは、ラビン首相殺害によって平和運動をも殺し、さらなる暴力を煽った。イスラエルの過激派はこの暴力を和平と2国家共存を否定する口実として利用している。

暴力のおかげで、多くのイスラエル人は、パレスチナの土地を盗み続け、ユダヤ人以外の権利を否定し続けることを自分の頭の中で正当化すること、さらに重要なことに、自分たちを実際の抑圧者ではなく「被害者」として描くことができている。

もしイスラエルがこれ以上の暴力が起こることを避けたいのであれば、まず自らの暴力を終わらせる必要がある。イスラエルは、この紛争において確立され、公式に認められている政府だ。パレスチナ人は占領され、抑圧された人々なのだ。

  • レイ・ハナニア氏は受賞歴のある元シカゴ市役所の政治記者で、コラムニスト。問い合わせは彼の個人的なウェブサイトwww.Hanania.comまで。Twitter: @RayHanania
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