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国連は気候変動の現実に気付くが、未来は依然として暗い

アントニオ・グテーレス国連事務総長。(ロイター)
アントニオ・グテーレス国連事務総長。(ロイター)
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13 Apr 2022 11:04:09 GMT9
13 Apr 2022 11:04:09 GMT9

国連事務総長が世界の指導者に苦言を呈するのは珍しい。したがって、気候変動に関して各国政府や企業が嘘をついているとアントニオ・グテーレス事務総長がツイッターで非難したことは、嬉しいサプライズではあったが、驚きであった。

今月の一連のツイートでグテーレス事務総長は、二酸化炭素排出量の削減を約束したにもかかわらず、実行できていない政府や企業のリーダーが散見されると述べた。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書には、気候変動に関する果されなかった約束が羅列されている。一部の政府や企業のリーダーは、言っていることとやっていることが食い違っている。彼らは嘘をついている。もう地球を『燃やす』のはやめにしないか」と、IPCCが最新報告書を発表した日にグテーレス事務総長はツイートした。

異例ではあったかもしれないが、グテーレス事務総長の苦言は、国際レベルで気候変動に取り組む上での最大の課題を浮き彫りにした。2015年のパリ協定と、それ以降の気候変動に対処するためのあらゆる協定の根本的な欠陥が浮き彫りになったのだ。これらの協定では、世界の気温上昇を「産業革命前の気温プラス1.5度」にできるだけ近づけるために二酸化炭素排出量を減らし、あらゆる温室効果ガス排出を大幅に削減することに、多くの国々が合意した。様々な活動家によって何度も指摘されていることだが、最大の弱点はどの協定にも拘束力がないことである。

パリ協定には、進捗状況を監視したり、約束した目標を達成できなかった国に制裁を加えたりする仕組みが無い。すべての国が自己規律を保ち、何の管理・監督もなく目標を達成するという期待は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の夢物語だったのだ。

パリ協定ほど緩い国際協定はほとんどなく、ほとんどの協定には、違反した国に厳しい制裁を課すなど、非常に強固な監視体制がある。1987年に締結された「オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書」を例にとると、強力な監視体制が盛り込まれており、違反した国に対する罰則規定が明確に示されている。ゆえにモントリオール議定書は、環境関連の多国間協定の中で唯一機能しているのだ。また、国際的な取り決めによって各国を抑制してきた他の例としては、ルールを破った国に対して制裁や罰金を科してきた世界貿易機関(WTO)がある。

よって、何の監視機能もなくすべての国が約束を守り、スケジュール通りに排出量を削減すると思ったUNFCCCは、現実が見えていなかったのである。実際、国連にとっての最初の赤信号の一つは、「気候変動に関する協議が、30年以上にわたって何の合意も得られないまま進行してきた」という事実であったはずである。さらに、国連がパリ協定を祝うのは明らかに時期尚早であり、必要なチェックアンドバランスが欠如していた。さらにパリ協定以降の7年間で、後ろ向きな国連やその他の関係者に対し、油断しないようにという警告が何度も発せられた。

実際、IPCC(国連が気候変動の追跡調査を委任した科学者の国際機関)は、四半期ごとの報告書の中で毎回、世界が破滅的なシナリオに向かっているという問題を指摘している。なぜならパリ協定以降、二酸化炭素の排出量は減少するどころか絶え間なく増加しており、少なくとも一握りの主要排出国が約束を守っていれば横ばいの状態にはなっていたはずなのだ。それどころか各報告書では、世界がこの重要な問題解決に乗り遅れていることに、より厳しい警告を発している。

ゆえにこの遅すぎる段階で、グテーレス事務総長が国連の科学者チームを信用することにしたのは実に意外だ。しかし、遅きに失するよりはましである。迅速な行動を怠れば破滅的なシナリオに向かうという警告こそ出ているものの、グテーレス事務総長にとって、そして世界にとって幸いなことに、IPCCの報告書では、人類が排出量を削減することは技術的に見ればそれほど高価でも困難でもないことを強調しているのだ。

何の監視体制もなく、すべての国が公約を守り、スケジュール通りに排出量を削減するという仮定は空想に過ぎなかったのである。

ランヴィル・S・ナイヤー

IPCCの報告書では、太陽光発電や風力発電、バッテリーのコストは2010年以降85%低下し、数々の法律によりエネルギー効率が大きく向上したという。さらに2030年までには、すべてのセクターで二酸化炭素排出量を少なくとも半分に削減することが可能であり、しかるべき政策と技術があれば、2050年までに最大で70パーセント削減することができるという。

また同報告書によると、低コストの地球温暖化対策はいくらでもあり、2030年までに地球の温室効果ガス総排出量を半減させるには、二酸化炭素排出量1トン当たり100ドル以下のコストで実施することが可能であるとしている。さらに、その選択肢は破壊の道を進み続けるコストよりもはるかに安く、持続可能であるとしている。

IPCCの警告は明確だ。2030年までに排出量が現在のレベルから43%削減し、2025年までに世界の排出量がピークに達しなければ、気温上昇は1.5℃を突破することになるというのだ。特にパンデミック収束後に世界中の排出量が一貫して増加していることを考えると、このレベルでの削減はまさに不可能であり、これは委員会側の希望的観測に過ぎないように思われる。仮に今後3年以内に排出量が奇跡的にピークに達したとしても、2030年までに排出量が4分の1以下(現在の排出量の記録を見ればこちらも不可能に近い)にならない限り、世界が2℃の気温上昇へと向かっていくのは明らかだ。

IPCCの次回報告書の提出期限まであと3カ月を切った。グテーレス事務総長からのさらに厳しい言動が予想される。しかし、目標未達成国に対する罰則や制裁の問題が解決されない限り、グテーレス事務総長もそれ以外の人々も、できることはそれくらいしかないだろう。

  • ランヴィル・S・ナイヤー氏はMedia India Groupの編集長。
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