ラワン・ラドワン
ジェッダ:サウジアラビアの茫漠とした砂漠を前にして、起業家たちは企業の社会的責任を負うことを受け入れ、環境保護のために出来うる限りのことをしている。
エンジニアのムハンマド・アル‐ハリドの取り組みであるナバティックは、誰もが数クリックで植林できる仕組みとその過程でサウジアラビア国内の種苗場を支援できる仕組みを構築しようとしている。
森林破壊は大気への二酸化炭素放出量を増加させ、それにより気温の上昇が引き起こされ、その結果、水域の温度上昇、夏期の記録的な暑熱、激烈で破壊的な暴風雨、さらには、生態系に対して有害な影響が発生する。しかし、生じてしまったダメージをある程度軽減する方策もあるのだ。
「必要なのは単純なことです―植林です」とアル‐ハリド氏はアラブニュースに語った。
樹木には炭素隔離を行う強い潜在力があるため、植林は気候変動の影響を緩和するのに有用で、地球温暖化に取り組むのにもっとも簡便で手ごろな取り組みだと一般的に考えられている。
何千エーカーもの森林が日々伐採されている。さらに多くの森林が無くなってしまった場合に何が起こるかを示す研究が数々ある。そうした恐怖感を抱かせるような見通しにせき立てられるように、NGOや政府機関、政府系機関、事業者たちは環境保護の方法を模索している。
二酸化炭素排出量を相殺し、気温を低下させる樹木は、家庭でのエネルギー効率向上に貢献し、空気を浄化し、粉塵の発生を低下させるとアル‐ハリド氏は言った。「樹木の多い地区は健康な住人の多い健康な地区ということです。木々は歩行者たちのために日陰を創り出し、住人たちの心のやすらぎの源になります」。
サウジアラビア東部出身のアル‐ハリド氏は、自身の父と共に旅行中だった20年前に最初の植樹を行った。「子供の頃、樹木や植物にとても興味を持っていました。苗木を最初に植えた場所の辺りに戻ってみたら、枝を伸ばした大きな木があり、その木陰で燃えるような日差しから身を守ることができました。この事が忘れられず、後に、事業を始める着想の原点となったのです」。
「私たち若者は未来の管理者です。この地球上で持続可能な生活を送り、さらに未来の世代の成長と繁栄を確実なものにすることは私たちの責任です。サウジアラビアの樹木や森林の必要性を軽視することはもう論外です。植生は必須なものなのです。気候変動が不可逆の現実となりつつある現在、樹木と森林の重要性は益々高まっています」。
都市部の地域や公園での植林によって住みやすく持続可能な地域社会の構築が可能となることが樹木のもたらす恩恵であるとアル‐ハリド氏は指摘した。
ナバティックは、買い手の利便性を考慮したプラットフォームである。
インドセンダン、インドボダイジュ、ブーゲンビリア、火焔樹、大実レモンなどから買い手は樹種を選択できる。選択された樹木は買い手の自宅に配送され、植樹されることになる。より確実に樹木の寿命を伸ばすために手入れを行うオプションも近々利用可能になる。
ナバティックのウェブサイトに掲載されている樹種は、生態学的な生育力と経済的な継続性から選択されている。ナバティックの樹種は、過酷な環境条件に適応可能で、水の消費量が少なく、インフラに有害な影響を与えない。炭素吸収率も高く、さらには、都市部や家屋の景観の美化に役立つのだ。
「持続可能性というテーマは数多くのフォーラムで中心的な関心事項の1つです。全世界で日々議論が積み重ねられています。多くのサウジアラビア人が自身の事業計画にいかに持続可能性を取り入れるかについて考慮しています」。
100万本の植林を2030年までに達成するという目標は、一層環境に優しいサウジアラビアの実現を目指すサウジビジョン2030改革計画に役立つ。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子立案のサウジビジョン2030の開始以来、植林キャンペーン行われてきている。ナバティックは、サウジビジョン2030の文脈の中で有意義な役割を果たし、サウジアラビアの生物多様性に貢献することを計画している。
ナバティックは東部州の地方自治体との連携を目指しており、その後はサウジアアラビア全域への展開を企図している。種苗場との協力を通じてサウジアラビア国内の種苗生産能力の向上を実現すると共に、成長途上で利益の見込めるベンチャーとしての種苗場への事業者の投資を促進することが目標なのである。
「もっと事業が成長すれば、需要も供給もさらに高まります」と、アル‐ハリド氏は付け加えた。