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米国とイスラエルの策略で攻撃されるパレスチナ難民の権利

イスラム教徒がイード・アル・フィトルの祈りに参加するために集まっているところで、イスラエル警察のメンバーがパレスチナ人カメラマンと口論している。(AFP通信)
イスラム教徒がイード・アル・フィトルの祈りに参加するために集まっているところで、イスラエル警察のメンバーがパレスチナ人カメラマンと口論している。(AFP通信)
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03 May 2022 08:05:43 GMT9
03 May 2022 08:05:43 GMT9

パレスチナ人は、パレスチナ難民のために国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に与えられた任務が終わりを迎えようとしているのではないかと、当然のことながら心配している。1949年に設立されたUNRWAは、何百万人もの難民に緊急援助と支援を提供してきただけではない。数世代にわたるパレスチナ人の権利を保護し、維持する政治的基盤でもあるのだ。

UNRWAは、それ自体は政治的、法的な基盤として設立されたわけではないが、パレスチナ人が軍事的、政治的な出来事の結果として難民となったため、その任務の背景は主に政治的なものであった。つまり、1948年12月11日の国連総会決議194 (III) に明記されているように、イスラエルによるパレスチナ人の民族浄化と、イスラエルがパレスチナ人の帰還権の尊重を拒否していることが背景となっている。

UNRWAは、国連総会決議302(IV)により、「パレスチナ難民の窮状に対する公正かつ永続的な解決策を待つパレスチナ難民に、援助と保護を提供するための、人道的かつ開発上の任務」をもって設立された。残念ながら、難民の窮状に対する「永続的な解決」も政治的展望も達成されていない。この実情を認識して、パレスチナに正義をもたらす国際社会の失敗を再検討し、イスラエルとその支援者である米国の責任を追及する代わりに、UNRWAが、ひいては難民たちが罰せられてしまっている。

パレスチナ民族評議会のサーレハ・ナーセル政治委員長は24日、厳しい警告を発し、UNRWAの任務が終わりを迎える可能性があると述べた。ナーセル氏は、UNRWAの将来に関するフィリップ・ラザリーニ総監の声明に言及した。前日に発表されたラザリーニ氏の声明には、解釈の余地があるものの、UNRWAの地位、任務、活動に関する基本的な何かが変わろうとしていることは明らかであった。ラザリーニ氏は、「現在の状況が維持不可能であり、必然的にUNRWAサービスの質の低下を招き、最悪の場合、その中断につながる可能性があることを我々は認めています」と述べた。ナセル氏は、これを「資金援助者がUNRWAへの資金提供を停止する前触れ」とであると述べた。

UNRWAの将来という課題は、パレスチナ、そしてアラブの政治的言説の中で、今や優先事項となっている。UNRWAの任務の取り消しや再定義を試みることは、パレスチナ人にとって重大で前例のない挑戦となるだろう。UNRWAは、ヨルダン、レバノン、シリア、ガザ地区、西岸地区(東エルサレムを含む)に住む560万人のパレスチナ人に対して、教育や保健などの支援を提供している。年間16億ドルの予算を持つこの支援と、そしてUNRWAが作り上げた巨大なネットワークは、簡単に代替できるものではない。

UNRWAの政治的性質も、同じくらい重要である。UNRWAが存在するということは、パレスチナ難民の窮状と将来に関して取り組まなければならない政治的問題が存在することを意味する。実は、今回の危機を招いたのは、単にUNRWAに対する資金提供への熱意がなかったからではない。もっと大きな、ずっと邪悪なものだ。

UNRWAの任務の取り消しや再定義を試みることは、パレスチナ人にとって重大で前例のない挑戦となるだろう。

ラムジー・バラウド

2018年6月、ドナルド・トランプ前米大統領の娘婿で顧問でもあったジャレッド・クシュナー氏はアンマンを訪問した。フォーリン・ポリシー誌によると、ヨルダンに住む200万のパレスチナ人から難民認定を外すようアブドッラー国王を説得しようとしたとのことである。これは他の試みとともに失敗した。

その3ヶ月後、トランプ政権はUNRWAへの財政支援の中止を決定した。当時、UNRWAの資金の約30%は米国からのものであったため、この決定は壊滅的なものであった。しかし、UNRWAは民間企業や個人からの寄付への依存度を高めることで、持ちこたえた。

昨年4月、米国がUNRWAへの資金支援を再開するというバイデン政権の決定をパレスチナの指導者は歓迎したが、米国のこの動きに対する注意事項の大部分は秘密にされていた。米国は、UNRWAが「米国・UNRWA協力枠組み(US-UNRWA Framework for Cooperation)」と呼ばれる2ヶ年計画に署名することを条件に、UNRWAへの資金提供に同意したのである。つまり、UNRWAは事実上、イスラエルと米国のパレスチナ政策の基盤となったのである。これを受けてUNRWAは、「いわゆるパレスチナ解放軍のメンバーとして」あるいは他の組織で軍事訓練を受けたり「何らかのテロ行為に関与した」パレスチナ難民に対していかなる援助も届かないようにという米国の、ひいてはイスラエルの要求に、同意してしまったのである。さらに、この2ヶ年計画はUNRWAに「パレスチナのカリキュラム内容」を監視することを求めている。

米国国務省と協定を結ぶことで、「UNRWAは、パレスチナ難民に支援と救済を提供する人道的機関から、米国、ひいてはイスラエルの安全保障と政治課題を推進する安全保障機関へと実質的に変貌を遂げた」と、BADILパレスチナ住民・難民の権利情報センター(BADIL Resource Center for Palestinian Residency and Refugee Rights)は指摘した。

70年以上前に国際社会からUNRWAに与えられた任務全体が事実上変えられてしまったという現実が、パレスチナ人の抗議によって変わることはなかった。さらに悪いことに、欧州議会は昨年9月、イスラエルに対する「暴力を扇動する」とされているパレスチナの教科書の編集について、UNRWAに対する欧州共同体の支援を条件とする修正案を提出し、欧州諸国もこれに追随した。

米国、イスラエル、そしてその支持者たちは、UNRWAの即時閉鎖に焦点を当てる代わりに、その本来の任務を全面的に書き換えることでUNRWAの本質を変えようとしているのである。難民の権利を守るために設立された機関が、今ではパレスチナにおけるイスラエル、米国、そして西洋の利益を守ることを期待されているのだ。

UNRWAは決して完璧な組織ではなかったが、パレスチナ人の窮状の政治的本質を維持しながら、長年にわたって何百万人ものパレスチナ人を助けることに成功してきた。

パレスチナ自治政府、各政党、アラブ諸国政府などは、イスラエルと米国のUNRWAに対する計画に抗議してきたが、UNRWA自体が外部の圧力に屈していることを考えると、こうした動きが大きな変化をもたらす可能性は低い。パレスチナ人、アラブ人、そしてその同盟国は、UNRWA本来の使命のために戦い続けなければならない一方で、難民を守り、帰還の権利が疎外され、やがて忘れ去られてしまうことを防ぐことができる代替案やプラットフォームを早急に開発しなければならない。

パレスチナ難民が、パレスチナの公正にもとづいた平和の未来に関する政治的優先事項のリストから外されてしまえば、正義も平和も達成されるはずがないのである。

  • ラムジー・バラウド氏は20年以上にわたって中東について執筆している。国際的に配信されているコラムニストであり、メディアコンサルタント、何冊かの本の著者、そしてパレスチナ・クロニクルPalestineChronicle.com)の創設者でもある。
    Twitter
    @RamzyBaroud
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