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「新たな世界秩序」が生まれるならば、イランは取り残されそうだ

イランの最高指導者アリー・ハメネイ氏。(ロイター)
イランの最高指導者アリー・ハメネイ氏。(ロイター)
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06 May 2022 11:05:14 GMT9
06 May 2022 11:05:14 GMT9

イランの最高指導者アリー・ハメネイ氏は先週、「世界は新たな世界秩序に向かおうとしており」、その創出にテヘランが重大な役割を果たすと言明した。これはイランの最高位聖職者からの、イランの大学に在籍する学生達に向けたメッセージだった。以前に、ハメネイ氏は世界政治の未来に関する所見をイラン専門家会議に向けて述べている。今回は聴衆が異なった。

ハメネイ氏は、アメリカの大学に通いつつ米国の帝国主義の本能を嫌悪している学生が多数いるとしている。同氏は、彼らにイランを理解させ、西側メディアによる偏見だと同氏がみなすものから離れてイランの本性と特質を知らせるために、こういった学生との接触を開始するよう聴衆を促した。

同氏は、イランはこの「新たな世界秩序」を先導する国のひとつになるという自らが信じる事実を強調した。この国際政治の再編成がアメリカの影響力に取って代わるだろうと、同氏は予測していた。その背景には資本主義と西側の影響力が損なわれつつあり、その結果として米国の衰退は避けられないという事実がある。

この政治的予測がなされたのは、イランと米国がイランの核計画に関する合意を目指して交渉する最中のことだった。最高指導者ハメネイ氏は、アメリカは日に日に弱体化しているとも述べた。そして同氏は、新たな世界秩序の台頭とウクライナにおける戦争の間につながりを見いだした。

改めて、同氏はイラン国民にこの新たな世界秩序の出現に備えての準備を呼びかけた。この新たな秩序は多極化へ向かうものであり、世界政治を長期にわたって支配してきた二極化もしくは単極化体制から脱却するものだと、同氏はとらえている。

しかし、ハメネイ氏はどういった過程を経てこのような激変が起こるかの詳細については述べなかった。こういった国際政治の大転換においてイランが果たす役割を明示しなかった。また、アメリカの衰退による敗者と勝者を列挙することもしなかった。

地域におけるアメリカの軍事力の低下は、必ずしもイランの核戦力の強化につながるものではない。米国は、軍にあまり多くの費用をかけられないイランと比べて強大な軍事力を維持するだろう。イランの軍事費は耐え忍ぶイラン国民の幸福を犠牲とするものだ。いかなる国家間関係の仕組みも、それを支える大きな軍事力に依存する。しかし、米国は格別の軍事国家であるため、イランが米国の軍事力を追い抜くことは不可能だろう。ちなみに、ロシアとウクライナの戦争が国際政治の基盤をどのように変えるかについてハメネイ氏は説明しなかった。

おそらくイランは、特に制裁が解除された後には世界の他の国々と関わりを持とうとするだろう。しかし、外部との接触を増そうとする試みは拒絶されることになるだろう。ほとんどの国々は、イランがテロ支援国家であることを知っている。また、イランが国民を抑圧しており、民主主義国ではないことも十分に認識している。イラン政府はひどい人権の歴史を世界から隠すことはできない。イランが政治体制に失敗しているなら、その外交政策がどうして国家間の関係を大きく変える触媒となり得るだろう。

地域におけるアメリカの軍事力の低下は、必ずしもイランの核戦力の強化につながるものではない。

マリア・マーロウフ

世界はイランの外交政策が、地域の支配と多くの社会の首尾一貫した社会的・政治的構造の崩壊という特異な目標を持つものであると知っている。繰り返しになるが、他国の国益を損なうことを外交の基本としている国が、どうやって国際社会のリーダーになれるというのだろう。

おそらくイランは、現在のところオブザーバーとして参加している上海協力機構のような外交的集まりに加盟すれば十分だと考えるだろう。しかし、もし中国とロシアがイランの正式加盟申請を拒んだら、イラン政府の指導者たちにとってかなりの痛手となるだろう。それは、イランが国際関係の方向性の変化に対する自国の先駆的役割を語っても、同国を最も支持する2つの国家でさえも重要な地域の国家間組織へのイランの正式加盟を認めないというメッセージとなる。イランは反米国家の連携によって国際政治に変化をもたらすことはできない。

ハメネイ氏の発言は世界政治の未来を予測するものだった。しかし、イランは国家間関係のシステム改善に貢献できる良い要素や建設的な要素を何も持ち合わせていない。

  • マリア・マーロウフ氏はレバノン人のジャーナリスト、ブロードキャスター、出版者、執筆家である。リヨン大学で政治社会学修士号を取得している。ツイッター: @bilarakib
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