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大胆なアメリカの介入はイランとの対話の可能性を高める

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07 Jan 2020 10:01:39 GMT9

アメリカは最近、地域の趨勢を変化させ、イランを交渉のテーブルに着かせ得る2つの思い切った措置に出た。12月29日、カターイブ・ヒズボラ所有のイラクとシリアの複数の施設を攻撃したのだ。この組織はそれ以前に、アメリカ、イラク、そして多国籍部隊が駐留するキルクークの軍事基地にロケット弾の集中砲火を浴びせ、アメリカ人契約職員1人を殺害し、複数の部隊の隊員に怪我を負わせていた組織だ。そして金曜日、アメリカのドローンがコッズ部隊の長でイランの地域での活動を首謀するカセム・ソレイマニを殺害した。

これら2つの展開は驚くべきものだった。イランの挑発に対するアメリカの制裁が行われて数ヶ月後の出来事だったからだ。また、イランに直接対峙するという意味において、異常なまでに頑強で大胆だったため、注目に値するものにもなった。

このような行動は、国際船舶や石油施設に対するその恥知らずな攻撃に関して、いかなる結果も生じなかったとする考えや、意のままに、必要な時には最大限の暴力を用いて、イラクやシリア、レバノン、イエメンの未来を形作ることができるというイランの考えを正す上でも必要なものだった。

しかし、効果的なものにするためには、アメリカの軍事的圧力は、イランが力で応じる場合には維持されなければならない。加えて、軍事的圧力には経済的圧力と外交が伴わなければならない。信頼できる圧力に裏付けられていない外交努力に効果がないのは外交政策の自明の理であり、また、軍事的成功は、政治的優位と訳せる外交と組み合わせた場合にのみ、望む結果を得られるということも、同じく真実である。

カターイブ・ヒズボラを貶め、ソレイマニを消し去るのは、外交と組み合わせた場合に効果を発揮し得る圧力の良い例だ。これらは、明確な目標を持った長期的戦略の一部として見なさなければならず、キルクークのアメリカ人契約職員の死亡など、特定の挑発に対する単なる手あたり次第の、ないし他とは切り離した出来事として見なすべきではない

ソレイマニが殺害されて、彼が代表していたより過激な要素は弱まるかもしれない。

アブデル・アジーズ・アルウェイシグ

交渉は、イランとアメリカ(湾岸諸国のパートナー、また実際には世界の他の国々に加えて)の対立を解決する唯一持続可能な選択肢だ。皮肉なことに、イランはアメリカのイラクにおける頑強な反応の結果、テーブルに着くのをより厭わなくなるかもしれない。イランは、特に2019年は、事をエスカレートさせてきたが、アメリカや他のどの国からもほとんど反発を受けなかった。そのため、交渉する動機は全くなく、好戦的な態度を取り、交渉の呼びかけに反応を示さなくても何も失うものはなかった。

もし持続させることができれば、このようなアメリカからの反応を受けて、イランは自分たちのやり方をこの地域で無理やり押し通すのではなく、交渉することに価値を見出すかもしれない。宥和政策や見て見ぬふりをすることでは、ソレイマニの恥知らずな行動が象徴するような、地域における冒険主義を取ろうとするイランの意欲を抑制することはできなかった。

事態を見守る人の中には、ソレイマニの死後の噴出する彼に対する支持の声について指摘し、イランはアメリカやその湾岸諸国のパートナーに対して復讐することにしか興味を持っていないと結論付ける人もいる。しかし、ソレイマニに対する支持の大部分は仕立て上げられたものであり、体制が望めば消し去ることも可能だ。彼の死に関するつかの間の騒ぎは、体制の長期的な関心と混同すべきではない。死を悼む仕組まれた葬列が行われたとはいえ、司令官は、穏健派の一部指導者を含む多くの理性あるイラン国民の悩みの種だった。

また他の多くの人にとっては、ソレイマニは国内の平和的な反対の暴力的弾圧に関わった人物で、国外では主戦論者だった。彼は認定テロリストであり、シリアやその他の場所で自身が首謀した残虐行為を考えると、未起訴の戦争犯罪者だった。イランでソレイマニに対立した人は、自分たちの考えを表明したり、デモを催して彼に対する感情を表明したりできなかったのは明らかだ。ソレイマニが殺害されて、彼が代表していたより過激な要素は弱まるかもしれない。

また、事を見守る他の人の中には、日曜日のイラク議会による票決を、アメリカの行動が裏目に出て、交渉の開始をさらに難しくしてしまったことのもう1つの印だと捉える人もいる。しかし、票決はほぼ象徴的なものだった。議会は単に政府に対し、イラクにおける外国部隊の駐留終了を「模索」するよう求めただけで、どの部隊のことかを具体的には示していない。これは、議会に先立って行われたアーディル・アブドゥルマフディー首相の発言からも明らかだ。彼は、イラクという国家だけが武器を所持し使用する独占的な権利を持っているのであり、ある組織が政治的役割を果たそうとする時には、その武器を手放さなければならないと語って、イランが支援する民兵に対してもメッセージを送っていたのだ。従って、議会の票決は、拘束力を持った法律ではなく、フラストレーションの表明として受け取るべきだ。いずれにせよ、重要な政治ブロックが会をボイコットしたため、この票決に対する支持は限定的だった。

イランとイラクの両国における感情は、アメリカのドナルド・トランプ大統領が過去に繰り返し求めながらも、イランの指導者が拒否してきた交渉をこれによって妨げるべきものではない。最高指導者アリー・ハメネイがアメリカとの対話を拒み、ソレイマニの死後も拒否する姿勢を繰り返したのは事実だ。しかし、必要なのは、共通の基本原則に基づく、具体的な問題に焦点を当てた交渉であり、結論の出ない対話ではない。交渉はアメリカとだけではなく、複数の当事者と共に行わなければならない。

イランとのやり取りの中で、湾岸協力会議はこれらの基本原則について明確に言及し、国連憲章の順守を強調した。これはつまり、国境の尊重、政治的独立、近隣諸国の領土保全、内政への不干渉などを意味する。これらの原則には、政治的目的の達成を目的とした武力行使や宗派間闘争の自制も含まれている。

イランの近隣諸国が気に掛けている問題に関する政治交渉のこの野心的目標を前に進めるためには、アメリカは明確な目標を持ち、良い態度に対しては見返りを与える外交と組み合わせながら、最大限の圧力を用いる路線を維持しなければならない。政権の目的に対して国民の支持を得るためには、外交は、政治の時期的な難しさはあるとはいえ、自国から始めなければならない。アメリカの同盟国やパートナーも、なかにはまだ懐疑的な国もあるが、イランとの交渉プロセスの支援に携わらなければならず、支援することが求められているのだ。

  • アブデル・アジーズ・アルウェイシグは湾岸協力会議政治問題・交渉担当事務次長で、アラブニュースのコラムニスト。本記事で表明した見解は個人的なものであり、湾岸協力会議の見解を必ずしも代表するものではない。ツイッター: @abuhamad1
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