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宇宙が単なる億万長者の遊び場ではない理由

ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡で捉えた画像が、ニューヨーク、タイムズスクエアのスクリーンに映し出されている。(AFP)
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡で捉えた画像が、ニューヨーク、タイムズスクエアのスクリーンに映し出されている。(AFP)
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23 Jul 2022 12:07:20 GMT9
23 Jul 2022 12:07:20 GMT9

宇宙は億万長者の娯楽であり、彼らは火星への移住を計画するよりも、地球をよりよくすることに注力すべきだ。これは、現在の宇宙活動やこの分野への投資に関する一般的な見方だ。確かに多くの人々は、単なる娯楽でしかなく資金や資源の無駄だと考え、イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、リチャード・ブランソンといった面々が無益な競争をしているくらいに捉えている。数百万ドルもかかる宇宙観光をめぐるメディア報道や宣伝などが、こうしたイメージに寄与してきた。だが実は、これは間違った思い込みだ。実際は、宇宙は急速に、どの国の経済にとっても避けては通れない不可欠な要素となりつつあるのだ。

確かに宇宙旅行は、よい見出しになるし、SNSでも面白い投稿素材になる。しかしそれ以上に、我々の将来の生活に実質的なインパクトを与え、新たなビジネス機会を創出するようなことが起きているのだ。宇宙経済は、地球周回軌道上でもそれを超えたところでも、そして地球上でも、さまざまな機会を生み出すことになる。30年前にインターネットについて考えたように、現在、宇宙について考えてみるといい。インターネットが経済のデジタル化を可能にし、かつては思いもよらなかった発見や機会を生み出してきたように、我々は宇宙を通してこれと同じ変革を遂げていくのだ。まずは、ハッブル宇宙望遠鏡や今ではジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡なども届けてくれる我々の銀河の調査や研究から始まる。そこには、例えば国際宇宙ステーション上の微小重力下で行われる実験などによる、将来の発見も含まれる。

宇宙の調査は我々の地球上での生活を向上させてくれる。宇宙研究は、我々の日常生活に知識、発見、改善をもたらす。将来、月や火星やその先の惑星に移住する太陽系探検家にとって、宇宙研究は不可欠だ。これはSF物語に聞こえるかも知れないが、現実にいくつかの取り組みが既にある。多くは起業家による構想で、月に持続可能なインフラを整備する計画だ。この実現は湾岸諸国にとっては興味深いものとなり、月のような過酷な環境で生活を維持できるのであれば、それはここ地球においてもソリューションとなり得る。

月や火星で見られるであろう過酷な条件や欠乏という困難と、砂漠で直面する困難との間には、明らかな類似点がある。どちらも資源を最大現に活用するための意志と決意を必要とする。実際のところ、エネルギー安全保障、食料安全保障、水の安全保障は月での生活における主要課題であり、これはまた、サウジアラビアや周辺の湾岸諸国にとっての国家的な課題でもある。農業やエネルギーの最適化といった、月での生活や生態系を維持するためにもたらされるソリューションや進歩は、まさに地球上でも同様に必要とされるものだ。

従って、サウジアラビアがアルテミス合意に署名したという先週のニュースは、非常に重要なものであった。NASA第14代長官のビル・ネルソン氏は、この署名によりサウジアラビアは、全人類にとって有益な宇宙利用を促進する一連の共通原則に沿った持続可能な宇宙探査に関与していくと認めたことになる、と述べた。アルテミス合意は、アルテミス計画に参加する各国政府が合意する一連の基本原則だ。月、火星、彗星、小惑星の平和目的のための探査・利用に向けた連携や民間活動の基本原則を定めている。

湾岸協力理事会およびサウジアラビアには、宇宙に関して担うべき重要な役割があり、重要な利害関係国となることができる。

ハーリド・アブー・ザフル

合意には、サウジアラビア宇宙委員会のムハンマド・ビン・サウード・アル・タミーミCEOが国家を代表して署名した。サウジアラビアは21番目に署名した国家となる。この合意は、サウジアラビアの宇宙産業や宇宙研究部門に新たな機会をもたらすとともに、アルテミス計画のさまざまな活動への積極的な参加も可能にする。活動のなかには、2025年までに人類を再び月へ送り込む計画も含まれる。これは、サウジアラビアが将来の月の生態系の発展に関与し、官民が国際協力への新たな道を開くことを強く表明したことになる。

宇宙経済を繁栄させ、2040年までに期待される1兆ドルという規模の価値を達成するためには、我々が宇宙の平和と安定を維持する必要があるという意味でもこの合意は重要だ。アルテミス合意は、人類の大義に向けた目標を引き受け、それを推進していくための重要な役割を担っている。これらの原則はこうした繁栄を創生するための重要な枠組みでもある。地球上で目にする蛮行やいじめのような行為を宇宙でも繰り返すことはできないし、すべきではない。宇宙とは、単に地球の上空100kmから始まる場所というだけではなく、ミッションなのだ。より大きな目標に向けたミッションであり、有意義な達成に向けて人々を団結させる方法なのだ。

宇宙活動の新たなモデルが作られつつある。宇宙を万人にとって手の届くものにすること。宇宙のコモディティ化を解き放つということだ。つまり、億万長者の娯楽とみられている観光にしても、それを万人が共有できる日がやって来るのだ。そして人々は実際に月へバケーションに行き、地球から食料や物資を運ぶ心配をすることなく、美しい地球という惑星の眺めを堪能できるのだ。それまでに月では自給自足が可能になっているだろうから。

湾岸協力理事会およびサウジアラビアには、宇宙に関して担うべき重要な役割があり、重要な利害関係国となることができる。まずは、領有権の問題だ。もしもこの地域が正当なシェアを主張しなければ、それはこの地域全体をリスクに晒すことになる。よって、友好国や同盟国と協力して、地域の能力を増強することが重要だ。第二に、宇宙は経済多様化の重要な要素であり、投資家や起業家にはさまざまな機会をもたらすことだろう。

  • ハーリド・アブー・ザフル氏は、メディアおよびテック企業であるユーラビアのCEOであり、また、『アルワタンアルアラビ』の編集長でもある。
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