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アッバス議長、二国家解決を保護するための最後の尽力に準備

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18 Sep 2022 05:09:34 GMT9
18 Sep 2022 05:09:34 GMT9

第77回国連総会で、パレスチナ問題が再び議題の中心となるだろう。昨年の国連総会で、1年以内にパレスチナ国家実現への支援を国際社会に求めたパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長が、国連安全保障理事会に対し、パレスチナを占領下にある正式な加盟国として認めるよう強く要請すると見られる。アッバス議長は昨年「イスラエルは1967年に占領した東エルサレムを含むパレスチナ領土から、今後1年以内に撤退するよう」要求していた。

ニューヨークで行われる国連総会は、2022年9月20日火曜日に開会される予定で、そこでは多くの人が「二国家解決」という言葉を、心から真剣にではなく繰り返すだろう。

国連パレスチナ自治政府代表部は、リヤド・マンスール国連大使が「実際的なイニシアチブ」と呼ぶ、二国家解決を保護するための決議を、安保理に働きかける。マンスール大使はパレスチナの提案が承認されるために必要な、理事国15カ国のうち9カ国の賛成を得られると自信を示しているが、拒否権を持つアメリカ大使がどう出るかは未だはっきりしない。ほとんどの安保理事国はこれまで、総会レベルでパレスチナ国家に賛成票を投じている。これまで賛成を投じていた欧州の計13カ国のうち、アルバニア、ノルウェー、アイルランドが現在の安保理事国である。インド、ブラジル、UAEもまたパレスチナ国家への支持が記録されている。

パレスチナの決議は、パレスチナを占領下にあるとしても正式な加盟国として認めることを求めるだけであるため、昨年のイスラエルに対する占領地域からの撤退要請からは一歩後退するものとなる。

国連総会の手続き規則によると、総会は9日間中断することなく開催されることになる。しかし、通常は、全てのスピーカーがスピーチするのには7日間で足りる。アッバス議長は再び本会合でスピーチを行う。87歳のアッバス議長にとって国連での最後のスピーチとなるだろうと多くの人々は考えている。アッバス議長率いるファタハは、2022年末までに第8回総会を開催する予定だ。総会では、パレスチナ動向についての戦略や政策、戦術、また上層部の人事が明らかとなるだろう。

政治的地平の欠如は、占領下の領土における暴力的攻撃を助長する、唯一かつ最も強力な要因となっている。

ダオウド・クタブ

アッバス議長は、パレスチナ-イスラエル紛争の平和的な交渉による解決をしつこく提唱してきた。彼の後継者となるかもしれない人たちは、必ずしもこの特異なアプローチに傾倒しているわけではない。革命的なリーダーが現れ、暴力的アプローチを主張することは考えにくいが、どのような政策やリーダーが選ばれようとも、イスラエル人に対する保護意識は薄れ、1993年9月にホワイトハウスの芝生の上で、アッバス議長と故シモン・ペレス氏が「原則宣言」に署名して以降、パレスチナ指導者の特徴となっている安全保障上の協調には、それほど注力しない可能性が高いだろう。

「原則宣言」署名以降、唯一かつ最も破滅的な統計データは、占領地域の違法入植地や違法居住者数の急増である。ユダヤ人居住者数は3倍になり、パレスチナ領土は没収されている。結果として、海と川の間にあるその地域は、アパルトヘイトの戦争犯罪が例外ではなく、ルールとして文書化されている地域となっている。

バイデン政権はパレスチナ側に対して決議に拒否権を行使することを明言しているが、単にイニシアチブに反対するよりも政治的にははるかに困難なことになるだろう。

アメリカはイランとの交渉や中東湾岸諸国との関係に、より関心を寄せているが、パレスチナとイスラエルをめぐる問題も離れることはないだろう。バイデン政権は現在、有名なアメリカ人TVジャーナリスト、シリーン・アブアクレ氏の殺害について、イスラエルに捜査を求め、苦戦している。現在のイスラエル政府は、パレスチナと政治的に会話することさえ拒否しており、誠実な仲介者であるかのように見せようとするアメリカ政府の試みは失敗している。バイデン米大統領は最近、ベツレヘムを訪問した際、交渉のための「機が熟していない」ことを認めざるを得なかった。

政治的地平の欠如は、占領下の領土における暴力的攻撃を助長する唯一かつ最も強力な要因となっている。イスラエルの政策は、たとえ国際的に認められた合法的な人権団体や、モハマッド・エル・ハラビ氏のような国連の人道援助活動家、あるいは、占領や違法入植事業に反対する権利を主張する一個人であっても、ルールに従わないほぼ全てのパレスチナ人はテロリストであるという主張を軸としてる。

アメリカの反対は空虚に聞こえる。ウクライナの抵抗勢力に何十億ドルも援助しながら、二国家解決を維持することを目的としたパレスチナの「実質的イニシアチブ」には拒否権を発動すると脅しているのだから。1967年6月4日の国境上にあるパレスチナ国家を、国連の正式加盟国として承認するイニシアチブを検討する安保理の会合で、アメリカの外交政策に対する信頼性が再び問われることになるだろう。

・ダオウド・クタブ氏は受賞歴のあるエルサレム出身のパレスチナ人ジャーナリスト。Twitter: @daoudkuttab

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