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地域はイランとの思い切った交渉が必要

イラン最高指導者アリ・ハメネイ師は、テヘランで、日本の総理大臣である安倍晋三と会談している。(ロイター)
イラン最高指導者アリ・ハメネイ師は、テヘランで、日本の総理大臣である安倍晋三と会談している。(ロイター)
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15 Jan 2020 06:01:00 GMT9

ワシントンがイスラム共和国に対して新たな制裁を科したこととは裏腹に、先週、イラン担当特別代表ブライアン・フックが、米国は「平和を受け入れる」準備ができていると発表した。制裁がイラン経済に大きな損害を与えているとしても、圧力下にある政権が米国の要求に屈すると決めてかかるべきではない。

降伏には戦争が必要だろう。イランとの戦争は同地域にとって破壊的なものとなるだろう。また、米国にとって、ひどく評判の悪いイラクとの戦争よりも悲惨で費用がかさむ可能性がある。最大の圧力を加える運動と並行して外交がやり直しとなった理由はこれである。日本は優れた調停者の代表だ—— 日本は比較的にイランとの関係がよく、同地域で過去に植民地を持った西側権力とは違う。安倍晋三の前回の奮闘は、去年のことである。首相が最高指導者のアリ・ハメネイ師と会おうとしていた時に、日本のタンカーが攻撃されたことで、その努力は拒絶されたと主張する人もいるかもしれない。しかし、安倍は米国大統領であるドナルド・トランプの大使としてテヘランに行ったのだ。その努力を活かすために、安倍は、国連の指揮下で公平な調停者として行かなければいけない。

バラク・オバマとトランプは、二つの全く異なるアプローチをとった。オバマの見解では、経済的な報酬を差し出すことで、最終的にイランがイデオロギーに見切りをつけ、平和がもたらされる。その一方、トランプは、正反対のことを信じている。彼は、イランに厳しい制裁を科し、抑圧することで、否応なく変化が生まれると考えている。しかし、どちらのアプローチも経済面にしか注目していない。どちらもイランの安全やイデオロギーを考慮していない。同地域および米国にはイランとの思い切った交渉が必要である。実際、テヘランは既に、より大きな理想に向かって柔軟に対応することを表明している。ハサン・ロウハーニー大統領は、昨年9月にニューヨークの国連で、「より多くを望むなら、より多くを差し出す必要がある」と明言した。

米国の現政権は、制裁を解除するための条件の中でも、イランはとりわけ、核開発プログラム、弾道ミサイル、同地域の民兵に見切りをつける必要があると示唆している。これは交渉ではうまくいく見込みがない。それらが同時に実現するのは、イラン政府が崩壊する場合だけだ。しかし、政権交代は平和裡には実現しないだろう。彼らは激しく闘うだろうし、この地域を戦闘に引きずり込むだろう。他の選択肢は行動の変化だ。イランが政権の面目を保ち、その安全を保障するような交渉を提案されれば、これは可能である。

私たちはまた、イランの政治制度がイデオロギーに立脚していることを忘れてはいけない。政権の支援者は何年にもわたって、国家またはウマーの崇高な包括的目標を達成するため、個人的な犠牲を強いるように命じられた。政権は今、革命の偉大な目標を諦めたと支援者に告げることはできない。それは政権の正当性を奪い、最終的には、イラン・イスラム共和国の終焉を意味するだろう。

イランで導入されているすべての政策はイデオロギーに支配されている。これが理由で、潔く敗退する条件は、政権がその目標を達し、革命を「伝播する」局面が完了したように見せることである。これまでの革命の伝播の主要な柱は「パレスチナの解放」であったため、国連決議とアラブ平和イニシアティブに基づくパレスチナ人との公正な取り決めによって、イラン政府にこの潔い敗退を提示することができる。これはまた、まことしやかな物語を提示し、代替軍は武器を下ろして、政党に変わるだろう。確実に武装解除を完了させるために、同地域の国々の相互の合意の下に、監視機構が導入されるべきである。

イランが近隣諸国に対して脅威であるのと同じように、イランも近隣諸国を脅威と感じている。イランの上層部は国民に対し、サダム・フセインが武装解除した時に米国人がイラクに入って国を占拠し、以来、混乱が続いていると言い続けてきた。政府を嫌っているイラン人でさえ、イランは適切な防錆システムを持つべきであり、その権利があると信じている。イランに武器庫の解体を頼むのではなく、イランと近隣諸国との間に信頼醸成措置をとるように推し進める方がよい。その場所ではイランが武器の貯蔵を宣言し、軍事施設への訪問を許可している。また、ミサイル実験の際は事前に近隣諸国に通知し、その逆もまた然りである。イランは、これらの関心事にすべて対処したら、核交渉やその類の協定に再び参加するべきである。おそらく、ロウハーニーが示唆したように、イランは、世界がその善行への報酬としてさらに利益をもたらすような新たな取り決めを結ぶだろう。

イランに武器庫の解体を頼むのではなく、イランと近隣諸国との間に信頼醸成措置をとるように推し進める方がよい。

ダニア・コレイラット・ハティブ博士

イランとの交渉を成功させるには、米国はイラン政権の視点で考えるべきである。テヘランは、その生き残りを確保するであろう保証を手にしないかぎり、国民と地域の支配を諦めないだろう。適切な合意はまた、同地域の国々との間の論点を整理するはずである。17世紀の欧州の三十年戦争を終わらせたウェストファーレン条約のような協定が中東に必要な理由はこれである。調停者の第一歩は、イランとサウジアラビアの会談を実現し、両者の違いを調整することだろう。後の段階では、同地域の国々を含むより大きな議会を組織すべきである。

その努力が複雑に見えれば見えるほど、挑戦する価値がある。戦争を終えて合意書に署名するよりは、大なり小なり、状況が制御できているうちに、今すぐ協定に取り組む方が絶対によい。

  • ダニア・カレイラット・ハティブ博士はロビー活動に重きをおく米国・アラブ関係の専門家。エクセター大学で博士号(政治学専攻)を取得し、ベイルート・アメリカン大学イッサム・フェアーズ公共政策および国際問題研究所のアフィリエイト・スカラーである。
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