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北朝鮮の「炎と怒り」が間もなく現実になるかもしれない

朝鮮人民軍戦術核作戦部隊による北海道方面向けミサイルの試射訓練。(AFP)
朝鮮人民軍戦術核作戦部隊による北海道方面向けミサイルの試射訓練。(AFP)
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12 Oct 2022 08:10:45 GMT9
12 Oct 2022 08:10:45 GMT9

ウクライナ紛争、台湾をめぐる緊張、米中対立の激化などを背景に、新たな地政学的危機が表面化しようとしている。北朝鮮はここ3年間、核の挑発を控えていたが、各情報機関は7回目の核実験を行う可能性があると警告しており、11月8日の米中間選挙前にもそれを実行する可能性が出てきているのだ。

5年前、北朝鮮の独裁者である金正恩氏とドナルド・トランプ米大統領(当時)が核戦争の脅威を互いにちらつかせ、世界は「炎と怒り」の予兆に直面した。その後、金正恩は世界の指導者たちと会談した。そこで核プログラムの一部を縮小するという曖昧な約束と引き換えに、北朝鮮への制裁の緩和を獲得したことで、偽りの平和が続いてきた。

2019年にトランプ氏とのハノイ首脳会談が失敗に終わった後、金氏は平壌に戻り、新型コロナウイルスのパンデミックから逃れるため、無駄な努力として、すぐに国家的ロックダウンを命じた。しかし、北朝鮮の核兵器とミサイルの開発は、引き続き急ピッチで進められた。

金氏は2018年初頭に外交活動を開始した際、北の核戦力を拡大する意向を示唆し、実際にその言葉を忠実に守ってきた。現在、北朝鮮が保有する兵器には、約50発に上る核爆弾が含まれていると推定されている。さらに2020年、北朝鮮が潜水艦から発射される方式の新型弾道ミサイルを試射した直後、金氏は、政権の強大な兵器を誇示するための夜間の軍事パレードにおいて、巨大な新型長距離ミサイルを公開した。翌年、国際原子力機関(IAEA)は、北朝鮮がプルトニウム濃縮作業を再開したと報告した。その直後に北朝鮮は、長距離巡航ミサイルと、核搭載が可能な新型極超音速ミサイルの発射実験を行った。

北朝鮮は今年に入ってから、国連安全保障理事会の決議に違反して40発以上の弾道ミサイルを発射している。先月には、カマラ・ハリス米副大統領の日本、韓国訪問の際に発射している。ミサイル1発は日本上空を通過した。また、寧辺の核施設では違法なプルトニウム再処理作業が再開されており、衛星画像からは、豊渓里核実験場で建設工事が行われていることも明らかになっている。このため今、7回目の核実験が間近に迫っているとの懸念が強まっているのだ。

核兵器で敵を威嚇するという金氏の決意と、ウクライナ紛争に起因する地政学的環境の変化により、北朝鮮は、トランプ政権時の対外姿勢を再び示す可能性を高めている。この地域の安定、そして世界の安全保障に対する脅威は深刻である。

米露、米中の関係が急速に悪化したことで、ゲームの流れは変わってきた。

ダニエル・ラッセル

金氏やその前任者たち(父親の金正日氏、さらに北朝鮮体制の創始者である祖父の金日成氏)がかつて、自国の非核化に真剣に取り組んだかどうかは不明である。とはいえ、米国やその他の国の政府は何十年もの間、外交圧力、安全保障上の約束、経済的誘導を組み合わせて、北朝鮮に核兵器開発を放棄させるよう働きかけてきたが、無駄な試みに終わっている。

世界の指導者たちは、北朝鮮の核兵器保有能力が国の「信頼の盾」であり「宝の剣」であることから、それを決して手放さないとする金正恩氏の言葉を信じるべきだ。金氏は先月、外国勢力が自らを政権から排除しようとした場合に核攻撃を許可する新法を発表し、政権はいかなる核兵器も「決して手放さない」と宣言した。「非核化も非核化交渉も、その過程で取引される切り札も、絶対にない」と彼は述べた。

金氏の振る舞いは、たとえ不本意であっても、一核保有国のリーダーとして認められたいという揺るぎない決意の表れである。しかし、彼はこれまでの「行動には行動を」のアプローチ、すなわち自国の核活動の制限と自国への制裁の緩和とを段階的に交換していくことを放棄したのである。その結果、非核化交渉の再開を求めるバイデン政権の度重なる働きかけを認めようともしなくなった。

その代わり、金氏は米国に対し、韓国から米軍を撤退させ、その地域から戦略兵器を撤去するよう要求しているが、これは明らかに非現実的である。次に北朝鮮は、ようやく「ならず者国家」ではなく、核を保有する仲間として認識されることの証として、米国との核軍縮協議を要求する可能性が最も高いだろう。

また、金氏は米国の対露、対中国の外交的対立を利用する可能性もある。北朝鮮の金体制は、大国間の不和を利用する術をとっくに身につけている。それでも、冷戦終結後、米国が北朝鮮の主要な支援国だった中国やロシアと概ね良好な関係を保ってきたため、金政権がそうした戦術を活用する機会は限られていた。

しかし、米露、米中の関係が急速に悪化したことで、ゲームの流れは変わってきた。中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は戦略的同盟関係を結んでおり、両国とも金氏を懲らしめるために西側と手を組むようなことはないと断言できる。習近平氏とプーチン氏は現在、西側諸国の敵対勢力に接近しているのであって、懲罰を与えようとしているのではない。国連安保理において金氏の後ろ盾の国々が北朝鮮に対する行動を阻止している間、金氏は妨げられることなく、核の野望を追求することができるのである。

中国もロシアも原則的には、北朝鮮の核開発に反対である。中国の指導者たちは、自国との国境にごく近い場所で北朝鮮の核実験が失敗する可能性に頭を悩ませてきた。しかし、中国共産党第20回全国代表大会が終了するまでは7回目の核実験を行わない可能性が高いものの、金氏は、習氏もプーチン氏も、今のところ北朝鮮を意味ある形で抑え込む余裕がないことを心得ているはずだ。

実際、習氏とプーチン氏は、米国の関心と資源が金氏によって、それぞれ台湾とウクライナから逸れることに注意を向けている。このことを考えると、最近の北朝鮮の相次ぐミサイル発射が、「炎と怒り」のレトリックを現実化する危険なエスカレーションのサイクルの出発点となる可能性がある。

  • ダニエル・ラッセル氏は元米国国務次官補(東アジア・太平洋担当)で、現在はアジア・ソサエティ政策研究所の国際安全保障・外交担当副所長を務める。

著作権:Project Syndicate

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