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エルドアン大統領よ、聞け:トルコは地中海周辺で警告を受けている

トルコの軍艦が、地中海東部のキプロス近海へ派遣されたトルコの採掘船「フェイス(信仰)」号の横で警備にあたる。(ファイル/AFP)
トルコの軍艦が、地中海東部のキプロス近海へ派遣されたトルコの採掘船「フェイス(信仰)」号の横で警備にあたる。(ファイル/AFP)
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27 Jan 2020 09:01:09 GMT9
27 Jan 2020 09:01:09 GMT9

「キプロスの国家領土に対する完全統治権」を支持するという先週のサウジアラビアの宣言が、地中海東部、さらには中東の戦略的均衡にとっても、重大な変化の訪れる予告であったことが証明される日がくるかもしれない。

それは、サウジアラビア外相のギリシャ訪問やキプロス外相のリヤド訪問といった外交活動が交わされている最中の宣言であった。ギリシャ政府は、自国のパトリオットミサイルをサウジアラビアへ配備して空域防衛体制を強化するという誓約まで行った。こうした動き全ての要因は、中東においてますます独断的行動をとるトルコに対して、近隣地域の不安感が広がりつつあるということを意味するのは言うまでもない。

サウジとトルコは、現在起きている多くの紛争や危うげな展開に関して、ますます敵対関係を深めている。例えばエジプトでは、トルコはムハンマド・ムルシー大統領のムスリム同胞団政権を支持していたのに対し、サウジは現在のアブデル・ファタ・エル・シシ政権を支援していた。またリビヤではこの二国は異なる政権主張者を支援している。さらにカタールがサウジアラビアや他のペルシャ湾岸諸国によるボイコットの対象となっている一方で、トルコ政府からは支援を受けている、といった具合だ。

カタールでもリビヤでも、トルコは軍隊配備によって実力行使を示唆している様相だ。同地域内のライバル国たちは、ソマリアとスーダンに軍事基地を建設しようとしているトルコの動きにも動揺を隠せない。

さらに、トルコとリビヤの国民同意政府は、地中海地域における「排他的経済水域」にトリポリで合意したが、これは国際法を無視するものだ。トルコ政府は地中海海域における採掘船を護衛するための海軍の行使をますます拡大し、近隣諸国を脅かしている。極め付けに、トルコは米国やベルギーの反対を尻目にシリア内戦にも介入した。これら全ての動きについて、サウジのみならずアラブ首長国連邦やエジプトをはじめとする近隣諸国は、トルコのリジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が同地域での優位性を高め、おそらくはムスリム世界のリー ダーたらんとしているのだろうと見ている。

エルドアン大統領が、「トルコを再び素晴らしい国に」という野心を持っているのは間違いない。彼は2003年に大統領に就任した瞬間から、トルコはあまりにも長い間国際政治の舞台で二級扱いされ続けてきたという自分の思いを表明し、トルコの経済的・軍事的手腕と戦略的ロ ケーションをもってすれば、単に外部の支配力の配下にとどまるのではなく支配力を及ぼす立場に立つのにふさわしい国なのだと明言してきた。さらに、トルコという国に対するエルドアン大統領のビジョンは、彼自身の国内外における歴史的役割に対するビジョンの一部でもあるのだ。エルドアン大統領が国政において達成させた完全なる支配力によって、政策の実施がより一層容易なものとなっている。

カタールでもリビヤでも、トルコは軍隊配備によって実力行使を示唆している様相だ。同地域内のライバル国たちは、ソマリアとスーダンに軍事基地を建設しようとしているトルコの動きにも動揺を隠せない。

ヘンリー・J・バーキー

エルドアン大統領はイスタンブールにおけるジャマール・カショーギ氏の惨殺を利用した。その事件を、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子を貶めるのに絶好の道具と見たのだった。サウジ皇太子に対抗したく、またそれが可能な野心的リーダー、エルドアン大統領の考えはそういうことだった。

キプロスに関する新たなサウジの宣言がエルドアン大統領からの攻勢に対する応酬で、トルコの脆弱さを狙った一つの作戦である可能性は極めて高い。キプロス、特にトルコの統治下にある北キプロス・トルコ共和国(TRNC)は、いまだにトルコ政府にとって苦々しい幻滅感の象徴となっている。キプロス北部で他国に占拠された孤立領土であるTRNCは、トルコ以外のどの国もその主権を公認していない。キプロス共和国はキプロス人の唯一の正式国家としてなんとか欧州同盟への加盟を認めてもらっている。TRNC を支援する数少ないグループの一つがイスラム協力機構(OIC)だが、その組織ではTRNCは傍聴人の立場を与えられいる。エルドアン大統領は欠席だったが、2019年5月のOIC サミットでようやくOICはTRNCのトルコ領キプロスという位置付けを強く支持した。

サウジアラビアは現在もOIC の最重要メンバー国となっている。OIC が将来の声明を劇的に変更するということは考えにくいが、同時にサウジが全般的にキプロスを支援するという事実にも変わりはない。また、地中海東部一帯における動向への懸念表明は、トルコに対する重大な警告を意味している。事実上、サウジ政府は地中海におけるエジプト-ギリシャ-キプロス-イスラエル路線への支持を間接的に表明したということになる。

トルコに対するイスラエルの立場についてサウジが支持表明したことは、たとえそれが間接的な形であっても、サウジ政府がその二国に対していかに異なった見解もっているかということを表しているとも言える。理解に難くないが、サウジは常にイスラエル国およびそのパレスチナ政策に反対してきた。しかしサウジがイスラエルに脅威を抱いているのではないことは明らかだ。そしてトルコに対しては脅威を抱いている。つまり、我が敵は我が同志、と言う具合だ。

  • ヘンリー・バーキーはリーハイ大学国際関係学部のコーエン(Cohen 教授で、国際関係委員会中東研究の非常勤上級研究員を務める
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