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ベゾス氏に関する捏造記事から明らかになったのは、サウジに対する偏見がいかにメディアに深く根付いているかということだ

アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏 (R) と、その恋人、米国の新人キャスター、ローレン・サンチェス氏。( 記録 /AFP)
アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏 (R) と、その恋人、米国の新人キャスター、ローレン・サンチェス氏。( 記録 /AFP)
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19 May 2021 12:05:33 GMT9
19 May 2021 12:05:33 GMT9
  • 2020 年のスキャンダルが発覚した際、英米の多くの出版社がわれ先にとサウジアラビアを非難した。しかし、リヤドが無関係であったことが明らかとなった際、記事を撤回したのはわずか 4 紙だけだった
  • 事件の発覚は、かつての義理の兄が原因であって、サウジアラビアからではなかったことが最近出版された本で明らかにされた。しかし、ベゾス氏が現在所有するワシントンポストは、彼のことは公正に取り扱わない、と専門家は酷評する。

タレク・アリ=アフマド

ロンドン : いわゆるベゾス・ハックの事件で、王国を非難している人たちが名乗り出て、自分たちの間違いを認めるかどうか、あるいは「単に自分たちのツイートを削除し、当時の立場がうやむやになることを望んでいるだけ」かどうかについて、アーディル・アルジュベイル サウジ外務大臣は 5 月 8 日、ツイッターで疑問を投げかけた。

ベゾス・ハックとは 2020 年 1 月の事件で、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、アマゾン取締役会長ジェフ・ベゾス氏の電話を不正にハッキングしたと、何の証拠もなく非難された。皇太子は、ベゾス氏がワシントンポストを所有するため、テレビ司会者のローレン・サンチェス氏との関係を、米国のタブロイド誌ナショナル・エンクワイアラーにリークした、と非難された。

1 年以上にわたって、主要な西側の報道各社は、ニューヨーク・タイムズやワシントンポストからイギリスのガーディアンやデイリー・テレグラフにいたるまで、サウジアラビアがリークしたと主張する記事や後から分かった新事実を次から次へと書き上げた。

しかし、ブルームバーグ・ビジネスウィークがジャーナリストからの証言を掲載し、作家のブラッド・ストーン氏による、リークの背後に潜む真実を明らかにする、アマゾン会長の暴露本が出版されたのちは、続報を報じる記事は全くなかった。

「これは酷い言いがかりでした。事件が事実でないという証拠が現れたのであれば、報道各社はそれを明らかに報ずるか、以前の記事を訂正することが必要です」、とロンドンに拠点を置く、コミュニケーション戦略コンサルタントのウィリアム・ニール紙はアラブニュースに話した。

「概して、西側の報道各社は、事実を報じるというよりはサウジアラビアに対する悪いイメージを辛辣に書き立てるがままあります。視聴者には、部分的な報告でなく全容を知る権利があります」、とニール氏は話した。

真実は次のように考えられている。ハリウッドの 2流マネージャーであったサンチェス氏の兄が、ベソス氏の「マスコミ対策の妙技」への対価として、妹(のプライベートを)を20万ドルで売ったというだけであった。ただこれでサウジとのつながりが誤りであったことが立証されても、報道機関にとっては重要ではなかった。

ストーン氏が指摘するように、「共通点のない人物同士のあやふやな関係、そしてより奇妙な偶然が重なった、釈然としない一件」、というのがサウジの見方だ。

「ベゾス氏と彼の顧問は今も、離婚を取り巻くきまりの悪い話題を良い方向に持ってゆこうとしています。彼らにとっては、あのような疑惑は少なくとも、不快で込み入った真実から目をそらしてくれるものなのです」、と彼は加えた。

アラブニュースは、ブルームバーグ・ビジネスウィークが新事実を明らかにしてから 2 週間にわたりメディアを監視しているが、最新情報の特集を発行したり、過去の記事を修正したりする西側の報道各社は、僅かしかなかった。つまり、今となっては事実無根であったことが立証されている。

とりわけ、ニューヨーク・タイムズや CNN といった報道各社は、記事を掲載しなかった。これは、プロとしてのジャーナリズムの慣行と業界の規範に反する決断だ。一方、ベゾス氏の所有するワシントンポストは、これが自社にとって利益相反となることに気づき、この困った事態からオーナーを全力で擁護した。つまり、新たに分かったことについては、沈黙を守っている。

「報道各社が、間違った記事を訂正する時間がない、また新しい情報が見つかった時に訂正を発行する場合に、その偏見が表面化すると言えます。あるいは、報道各社が訂正を発行するのを目にすることも時々ありますが、彼らはそっと訂正するだけです。結果、当初の誤った記事がより大きく注目を集めるとこととなるのです」、と米国のメディア監視企業 AllSides 社マーケティング・ディレクター、ジュリー・マストリン 氏はアラブニュースに話した。

「『偏りのないニュースというものはない』、というのが私たちの立場です。視聴者が本当にすべきことは、その事実に気が付くこと、そして、どうやって偏見を見分け、政治の世界を広く読み解くかについて学ぶことです。その結果、視聴者は多様な視点を持つことができます。そうした視点は、視聴者が批判的に考え、多角的に検討する、ある種のきっかけとなり得るのです。」

しかし、ベゾス氏が所有するワシントンポストの利益相反は、ニューヨーク・ポストやウォールストリート・ジャーナルにとって取材ネタとなっている。両紙は、デイリー・メールやタイムズも同様であるが、ベゾス氏がワシントンポストを所有している立場をどう利用したか、そして、彼を「政敵」として陥れようとする、ナショナル・エンクワイアラーと繋がりがあると噂されたドナルド・トランプ前米大統領をどのように利用したか、について明らかにする特集を発行している。

「記事を盗用、あるいは捏造した記者に責任を転嫁できない限り、視聴者に嘘をついたと認める新聞はまずないでしょう。この場合、記者は編集者と報道機関を欺いた、と言われることでしょう。今ワシントンポストには、この説明がぴたりと当てはまるオーナーがいるのです」、とジャーナルのホフマン・W・ジェンキンズ氏はコラムで述べた。

ジャーナリストからの証言や、作家のブラッド・ストーン氏による、リークの背後に潜む真実を明らかにしたアマゾン会長の暴露本が、ブルームバーグ・ビジネスウィークから発行された。( アマゾンとは無関係 )

「西側メディアが、他者に対して責任があるという、前述したジャーナリズムの基準により非難されるのは、今回が初めてというわけではありません」、とサウジの新聞編集者、そしてサウジ ジャーナリスト協会会員は話した。

「この業界では、大方の編集者が好むのは、悪いニュースやスキャンダルです。こうした英米紙に対し、サウジアラビアを好意的に取材するよう求める人は誰もいません。けれど、私たちがジャーナリストの仲間として彼らに期待するのは、プロとしての彼ら独自の基準を持ち、誤った記事を発行した場合には、撤回、あるいは謝罪する、ということです」、と彼らは加えた。

西側メディアが持つ偏見の別の例としては、去る 3 月の報道が挙げられる。それは、フーシ派による銃撃により、イエメンの移民収容所で数十人のエチオピア人が死亡した時のことだ。この事件を取材した西側のメディア各社は、片手にも満たなかった。一方、サウジアラビアが犯したいかなる過ちでも、王国がそれを認め謝罪した場合には、即座に報道機関の取材を受ける。

移民銃撃の取材が無かったことは、ブラック・ライブズ・マターのニューヨーク州創設メンバーからの批判を受けすらした。

「これは、憂慮すべき問題です。無視できることではありません。そして、私は無視できません。44 名の方が殺害されているのに、ニュースでは関心すら払われないのです」、とホーク・ニューサム氏は、アラブニュース提供のラジオ番組レイ・ハナニアでのインタビューで話した。

「ニュースで関心が払われないのには、大きな理由があると、私は考えています。それは、彼らが黒人ではないからです。世界中の黒人のために戦うこと、それが私の使命です。」

Twitter: @Tarek_AliAhmad

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