サンディエゴの隔離病棟で2週間の隔離期間を終えたコロナウイルス(COVID-19)患者を誤って数時間にわたって解放してしまった件は、いくつかの事実を証明している。ひとつは、COVID-19が大都市圏で拡散していくことが濃厚であるなか、一律的なクオリティコントロールが必要だということだ。この出来事は米国で起こったのであるが、中国国外の大都市圏で他者に感染させたという「疑惑の晴らされていない」者の影響はどのようなものになるだろうか? 先週行われた推計によると、中国ではCOVID-19に感染した人ひとりにつき、さらに14人が感染しうるとのことだ。
以下のことを繰り返して言う必要がある。COVID-19は、2週間の潜伏期間がある病原体であり、そのあいだに症状は無い。咳・くしゃみ・接触による病原体の拡散力は証明されている。中国におけるCOVID-19の症例は、中国の軍隊が秩序維持を求めたことを含め、疾病の拡散や監禁や国民の反応のような諸問題という観点からすると、はるかに劇的なことであるように見える。武漢じゅうで霧を散布している映像は、中国が都市の街区を消毒する技術について疑問を呼び起こしている。病原体の突然変異によって消毒の方法が変わってしまわない限りは、そのような消毒プログラムを中国国外で実施することは、よりよく研究されるべき対象である。もしも抑制されなければ、COVID-19は世界人口の60%に感染するおそれがある。香港の一流の公衆衛生疫学者は、中国流の封じ込め措置の採用を検討すべきだと述べた。
ワクチンの研究が行われているものの、今のところ成果は上がっていない。
セオドア・カラシク博士
COVID-19のような疫病大流行は、治療・緩和・拡散阻止に関するあらゆる側面の需要と供給が、ビジネス遂行能力に影響を与えるというシンプルな事実によって、経済に影響を与える。それはまた、身体の、あるいは手と手の接触(例えば、食事の支払い)に関することでもある。この病原体は突然変異し、このような接触が貨幣の交換は非衛生的と見做されることを意味するようになるだろうか? この突然変異という疑問は、医療の専門家や従事者らが依然として議論していることである。
朗報は、査読された業績によって、中国における病原体のピークが3月となることが示されていることだ。「今のところ」リスクは低いが、その状況は変化するおそれがある。さらに、ワクチンの研究が行われているものの、今のところ成果は上がっていない。米国疾病抑制防止センター(CDC)は、研究は始まっていると発表したが、一般的にワクチンの開発には5〜8年かかるということを思い出すことが重要だ。人間での第一段階試験にはふつう2ヶ月半かかる。さらに、試験後分析に6ヶ月かかる。
CDCによるワクチン開発の遅れは、COVID-19の拡散を止めるために、いかなる措置が取られる必要があるのかという問題を提起する。学校でのこの疾病の拡散は、感染に関連した社会的な孤立という諸問題を提起する。この独特の病原体環境において接触をなすものという理解の応用が、人的要因モデルであり、それは子どもたちが「家族に種をまく」可能性があるために、大きな理解を必要とする。ここで、テレワークや遠隔授業を用いたアプローチは、社会的な孤立の発生を助長するであろうし、また、病原体が一斉に拡散しないよう時間稼ぎをする一助ともなりうる。これは、何らかの形の不安を叩き込もうと意図しているのではなく、科学者や医者はどのように難しい問題について問わなければならないのかということを示している。
疾病の拡散に関するこれらの考えは、もう一度サプライチェーンへの影響に戻る。この病原体は、少なくとも今は、山や谷がありながらも持続力がある。商業的なものにしろ、娯楽を目的としたものにしろ、観光業や物流に関わるすべての人への影響について見てみよう。現在、2,000人以上の乗客・乗員が、クルーズ船であるダイヤモンド・プリンセスの船上で隔離されており、この船はこの病原体がどのように拡散するのかについてのケーススタディとなりつつある。月曜日、船上で新たに66件の感染が確認され、隔離が始まって以来最大の上げ幅となった。乗客はほとんど自室に閉じ込められており、彼らの主な人間との交流は、1日に3回食事を運んでくるスタッフとのものである。乗客は、1回1時間、交替でオープンデッキに出ることが許されている。ただし、フェイスマスクを装着し、互いに2メートル以内に立たないことが条件である。患者の急増により、ダイヤモンド・プリンセスでの感染者総数は135人にまで増え、日本の横浜港に停泊しているこの船は、中国国外で最大の患者集団になった。彼らの隔離は1週間で終わるが、新しい感染はその計算を変えるかもしれない。この大流行している病原体について十分に知られていることは、全然無いのである。
全体的に言って、サプライチェーンのニーズという観点からして、ダイヤモンド・プリンセスの社会的な孤立の例は、たとえ遠距離通信がCOVID-19の大流行中に役立ちうるとしても、従業員らと孤立した部屋の観光客らとのあいだには、明らかな相互に影響し合う行動があり、それは最も弱いつながりになってしまうということを示している。対策を認識することは、いまやこのコミュニケーションにおける問題への潜在的な解決策の提供を促しうる。
セオドア・カラシク博士は、ワシントンD.C.にあるガルフ・ステート・アナリティクスのシニア・アドバイザーである。Twitter:@tkarasik
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