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エジプトが待望のスーダン和平仲介の試み

ハルツームにおける準軍事組織である即応支援部隊と軍との衝突の最中に煙が立ち上る中を歩く男性。(ロイター)
ハルツームにおける準軍事組織である即応支援部隊と軍との衝突の最中に煙が立ち上る中を歩く男性。(ロイター)
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12 Jul 2023 09:07:52 GMT9
12 Jul 2023 09:07:52 GMT9

3か月以上を要してついにエジプトは隣国スーダンにおける危機を終わらせるための有効な枠組みの模索を試みる重要な提案を始めた。9日、エジプト大統領は今週カイロでスーダンの近隣諸国の首脳会談を開催し、敵対し合うスーダンの軍閥間の紛争集結の方法を話し合うと発表した。

木曜日の首脳会談は他の地域的および国際的な取り組みと協調しつつ、近隣諸国とともに紛争の平和的解決のための「効果的な仕組みづくり」を目的とするとエジプト大統領府は述べた。この会議にはエジプト、リビア、チャド、中央アフリカ共和国、南スーダン、エチオピア、エリトリアの国および政府の首脳が参加予定だ。

この発表と同時に、スーダンは「本格的な内戦」の瀬戸際にあるとの国連による警告がなされた。このことは地域の指導者や国際社会にとって驚きではないだろう。

スーダン国軍と即応支援部隊(RSF)の民兵の間の暴力行為の勃発によって深刻な人道危機が引き起こされ、首都ハルツームとオムドゥルマンでは数百万人が難民となり数百人が死亡、病院を含む主要な都市施設が破壊され、二都市の大部分で電気と水の供給が断たれている。

さらに双方ともに決定的な軍事的勝利を収めることに失敗したために、紛争が長期化し 、長期間の停戦合意や政治プロセスの開始の試みも頓挫している。軍のトップであるアブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍にとって、RSFは疑わしい目論見と外国とのつながりを有する反政府組織である。統治評議会のトップであるアル・ブルハン将軍は現在、以前一時的な同盟関係にあったRSFトップのモハメド・ハムダン・ダガロ将軍を、法の支配の外側で自らの民兵組織の支配を維持しようとしている人物と見なしている。

スーダンの近隣諸国や8つの国からなる政府間開発機構(IGAD)を含むその他の仲介者は、少なくとも公式には、敵対する両者のいずれも支持せず平等に扱っている。米国は明確にそうしており、軍に対してもRSFに対しても制裁を課すと脅しをかけている。しかしその裏では、一部の仲介者は贔屓をしており、外国の当事者が実際にダガロ将軍を支援しているとの主張が存在する。そう主張する人々の中にはアル・ブルハン将軍本人もいる。

10日、地域の指導者で構成されるIGADカルテットは、アディスアベバで創立総会を開催した。議長はケニアのウィリアム・ルト大統領が務め、エチオピアのアビィ・アハメド首相が出席した。しかし、ジブチと南スーダンの大統領は会議を欠席した。また、軍主導のスーダンの政権からの代表団はエチオピアの首都に到着したものの、ケニアの指導者が議長を務めることに反対して会議への参加を拒否した。紛争中の両者の会談の手配にカルテットが成功するかは疑わしい。

これまでのところサウジアラビアのみが、米国の支援を受けて、紛争中の両者双方の代表者を集めることに成功しており、ジェッダで何度か会談を行わせている。政治プロセスの開始という点では進展はないものの、両者は人道支援団体を通行させるための戦闘の一時休止には同意した。

スーダンの安定はより良い安全保障協力をもたらすものであり、このことはエジプトそのものの安定にとってきわめて重要である。

オサマ・アル・シャリフ

不安材料は、スーダンに最も近い諸国が双方に紛争を終わらせて、今年前半に合意された枠組み協定に立ち戻らせる方法を見つけない限り、広大な国土すべてに内戦が広がるのは時間の問題であるということだ。すでにダルフールでは残虐行為がなされたとの証拠が無数にあり、コルドファン州と青ナイル州でも民族間、部族間の緊張が高まっている。過去の内戦にかかわり、2020年のジュバ和平合意に調印した反政府勢力は、武器を取って戦争を再開すると脅している。一部には分離主義を目論むものもいる。

このため、特にエジプトの介入が重要となる。

エジプトにとって、スーダンでの紛争はすでに不安をもたらす要因となっている。何万ものスーダン人がエジプトに避難しており、当局はこの流れを食い止めるためにビザの規制に追われている。しかしさらに重要なことは、エジプトは戦略的、歴史的、文化的、経済的にスーダンとのつながりを持っていることだ。このことは長きにわたってエジプトの安定と国家安全保障の土台とみなされてきた。

ハルツームの権力が崩壊すれば、数百万人がエジプトになだれ込む恐れがある。両国ともナイル川流域に膨大な人口を抱えているからだ。エジプトのスーダンとの国境線は長く、そのために治安が最大の関心となっている。スーダンが不安定になると国境を超えた犯罪、武器や物品の密輸、さらには過激派組織の浸透の増加にさえつながりかねない。スーダンの安定はより良い安全保障協力をもたらすものであり、このことはエジプトそのものの安定にとってきわめて重要である。

歴史的に、両国は特に貿易、投資、エネルギー関連で強い経済的つながりを持っている。スーダンのナイル川は極めて重要な水路でありエネルギー源であるため、両国にとって不可欠なものだ。エジプトはほぼ完全に水資源をナイル川に依存しており、水需要の90%近くがナイル川から来ている。スーダンにおける紛争はナイル川の流れを崩壊させる可能性があり、エジプトの水の安全保障と農業部門に脅威をもたらしかねない。このこともまた、大エチオピア・ルネサンスダム計画を巡るエチオピア政府との論争の解決を模索するエジプト政府にとって、不安材料となるだろう。

地政学的に、スーダンが不安定であることによって権力の空白地帯が生まれる可能性があり、それによって地域の他の団体が影響力を増し、エジプトの利益に対立する可能性がある。アフリカでの関係回復に重点を置いているイスラエルがスーダンの混乱から利益を得る可能性をエジプトが懸念していないとは考えられない。

エジプトの提案が開始されるのは遅かったかもしれないが、今日では両者に交渉を促し、彼らの国を崩壊から救う手立てを見つけるための最も可能性の高い希望となっている。

  • オサマ・アル・シャリフ氏はアンマンに拠点を置くジャーナリスト兼政治評論家
    Twitter@plato010
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