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サウジアラビアと中央アジアの協力がもたらす機会

サウジアラビアのジェッダで会談するGCCと中央アジアの指導者たち。(SPA)
サウジアラビアのジェッダで会談するGCCと中央アジアの指導者たち。(SPA)
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25 Jul 2023 11:07:04 GMT9

サウジアラビアの都市ジェッダは先週、湾岸協力会議(GCC)加盟国と中央アジア諸国との初のサミットを主催した。その最後に発表された共同声明は、集団レベルと二者間レベルで双方の関係強化に向けて前進することの重要性を反映するものだった。この声明は、食料、エネルギー、水の安全保障の他、輸送や通信を改善すると同時に、サプライチェーンの柔軟性を確保するための共同作業が必要であることを強調した。また、課題に立ち向かうための協調も求めた。

サミットを踏まえて、2つのブロック間には地理的、経済的、文化的、歴史的に重要な絆があることから、その関係に質的変化が起こることを示唆し、観測筋は高い期待を寄せている。

私は、この3年間で中央アジアのいくつかの国を訪れている。東洋と西洋の研究を専門とする大学や機関とは、多数の研究協力や学術提携が結ばれてきている。

この地域をめぐる国際競争の激化を考慮して、中央アジア諸国との関係を強化することがサウジアラビアの急務となっている。しかし、求められているのは、過去とは異なるツールの展開である。中央アジアへの訪問中、現地の政府や人々からは、サウジアラビアとあらゆるレベルでの関係を強化したいという願い、そして王国に対する信頼を実感した。それらの中には、他国への開放性の観点から政治的、経済的、社会的な改革を実施し、抜本的な変化を遂げようとしている国もある。さらに、彼らは宗教的な中道と中庸を推進している。よって、他の国々と比べてアラビア湾岸諸国との関係は成功する可能性が高い。

私はこれらの国の有力者数人と個人的に接触しているが、彼らは皆、王国との関係を強化し、経済協力や貿易協力の新しい道を切り開きたいと繰り返し発言している。サウジアラビアは、これらの国々に向けた投資を開始している。対象国の1つとなっているウズベキスタンでの投資額は、さまざまな分野をまたいで約450億スロベニアルピー(120億ドル)に達している。将来的には、他の中央アジア諸国への投資に加えて、より大きな投資機会があると私は見込んでいる。

したがって、サウジのビジネスマンや投資ファンドは、これらの国々の市場動向と投資環境を真剣に評価する必要があるだろう。中央アジア諸国は、サウジアラビア人に人気の観光地となりうる肥沃な農地と素晴らしい自然の景色に恵まれている。また、インフラが貧弱で技術のある人材が不足しているため、未開発の天然資源も眠っている。そのうえサウジ市場は、これらの国々が産出する農産物に適した輸出先となることもできるだろう。

中央アジアの国々の間には、パキスタンとアフガニスタンを地域諸国と結ぶ鉄道を建設するために、アラビア湾岸諸国との結びつきを求める明確な声がある。これは、トルクメニスタンを経由してオマーンとイランを中央アジア諸国と結ぶ輸送回廊(アシガバート協定)よりも速く、簡単に利用できるものになるだろう。このルートは、アラビア湾岸諸国の戦略的プロジェクトである。

アフガニスタンを通過することに関するこの地域の安全保障上の懸念は、トラックが数日以内に同国を通過し、重大な治安上の課題がないという事実に照らせば克服できるはずだ。また、2つのブロック間における貿易促進のための道路を建設することも必要だ。

2年前、私はタシケントで開催された国際会議に出席した。そこでウズベキスタン大統領は、アラビア湾岸諸国、中国、ヨーロッパにとってのつながりの必要性と重要性について、写真と地図を示しながら明確な説明を行った。

その会議は、アフガニスタンでタリバンが権力を掌握するより前のものだ。私は当時、アフガニスタンのモハンマド・アシュラフ・ガーニ大統領とパキスタンのイムラン・カーン首相の間に見られたライバル関係についてツイートした。

中央アジア諸国との関係を強化することがサウジアラビアの急務となっている。しかし、求められているのは、過去とは異なるツールの展開である。

ムハンマド・アル=スラミ博士

経済と貿易の軌跡が、政治的理解と展望や立場の面で調和に達するためのパイプ役になるのは当然である。これらの国々の文化的景観にサウジアラビアが欠如していることについて、真剣に再考する必要がある。サウジアラビアには、歴史的、文化的、知的な既成概念がある。それらは、現実を誠実に反映し、中央アジアのエリート層が持っている既存の意見を払拭する方法で対処されるべきものだ。

そこで、文化委員会と経済・商業委員会を結成し、これらの国々を訪れることを提案したい。サウジアラビアの知識人やビジネスマンを巻き込み、セッションやワークショップを開催するのである。初期には控えめにしつつ、サウジアラビア文化デーも開催すべきである。それにより、王国と、そのビジョン2030から生じるプロジェクトにとって重要な領域を切り開くことになるだろう。

多様なツールを備えたサウジのソフト・パワーへの信頼は、現在、王国の能力と可能性を正確かつ現実的に定義する上で重要な役割を果たしている。また、多くの国々との結びつきや関係を築くことにも貢献している。サウジアラビアのイメージ、姿勢、歴史、文化の中傷を目的とした歪曲や捏造から距離をおき、正しい情報と本物のイメージに基づく判断ができているのだ。

  • ムハンマド・アル=スラミ博士は、国際イラン研究所(ラサナー)の創設者兼所長。ツイッター:@mohalsulami
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