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2021年はパレスチナに反撃する機会を与える

2020年6月5日、トゥルカーム近く、占領下の西岸の一部併合というイスラエルの計画に抗議するパレスチナ人。(ロイター)
2020年6月5日、トゥルカーム近く、占領下の西岸の一部併合というイスラエルの計画に抗議するパレスチナ人。(ロイター)
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05 Jan 2021 03:01:49 GMT9
05 Jan 2021 03:01:49 GMT9

ラムジー・バロウド

2020年は、米国が支援する「和平プロセス」が終了した年として歴史に残るだろう。パレスチナ、イスラエル、中東における米国の姿勢と方針のこのような歴史的変化が覆されることはないが、2021年新年はパレスチナ人に米国の枠にとらわれずに考える機会を与える。

昨年は、新たな政治的言説を決定的行動に移すという明白な米国の威圧から始まった。1月28日、ドナルド・トランプ大統領のいわゆる和平計画が実際の政治方針として宣言された。新たな政治用語がすぐに定着し始めた。数十年にわたり米国の対話で重要だった「和平プロセス」という言葉は、遠い記憶のようになった。パレスチナ自治政府(PA)は常に米国の要求と期待に基づき独自の戦略を策定してきたため、米国の転換による選択肢はほとんどなかった。

パレスチナ自治政府(PA)のマフムード・アッバース大統領は、イスラエルと米国との外交関係を全て断ち切ることで対応した。これに続いて、5月に、パレスチナの指導部が、安全保障上の関係を含め、イスラエルとの間のすべての合意を取り消すと発表した。この決定は、パレスチナ人の怒りを一時的に鎮める目的を果たしたかもしれないが、実際的な目的を果たさず、結局は一次的なものだった。

11月、パレスチナ自治政府はイスラエルとのすべての安全保障と市民結束を再開し、ライバルグループのハマスとファタハの間の新たな統一交渉を阻止した。この交渉は7月に始まっていた。以前の会談とは異なり、パレスチナのこの2つの主要派閥は一連の政治思想を中心に団結しているようで、その中でも先立つのはトランプの和平計画とイスラエルの占領地域の大部分併合という意図を拒否することだった。

最終分析では、とにかくパレスチナ人の間でほとんど敬われていなかった自治政府は、ライバル間でまだ受けていた信頼を失った。アッバス大統領は、米国とテルアビブに自分がまだなんらかの政治カードを持っていることを警告するツールとして統一交渉を利用しているようだった。

しかしながら、パレスチナの指導部は以前、待ちの戦略を取って、1994年の発端以来資金の流れを保証していたが、その戦略が今や終わりに近づいている。中東における米国の優先順位は明らかに変化し、自治政府のヨーロッパ同盟国でさえアッバス大統領とその組織を優先事項と見なすことはほとんどない。EUは、英国の非公式な離脱とコロナウイルス流行による壊滅的な経済的影響によって弱体化し、パレスチナをその議題の最下位に押し下げた。

2021年がパレスチナの自由への闘争の軌道に前向きな変化をもたらすとしたら、新たな戦略が古い戦略に取って代わる必要がある。思考は完全に新政治情勢に移行するはずである。

第一に、パレスチナの統一は、ハマスとファタハ間の単なる政治的取り決めに限定されないように再定義されなければならない。それぞれの組織は、独自の議題と自己保存の本能による動機がある。統一には、すべてのパレスチナ人の間の国家的対話が含まれるべきである。そうすれば、パレスチナ人は、パレスチナにいるか「シャタット」(ディアスポラ)にいるかにかかわらず、派閥ではなく新たなパレスチナ人のビジョンを形成するプロセスの一部となる。

第二に、役に立たない常套句、教義、希望的観測に取って代わる新たなビジョンを開発し、明確にする必要がある。二国家解決は、単純に実現不可能である。イスラエルと米国がそれを葬るために最大限の努力をしたからではなく、たとえ実行されたとしても、パレスチナ人の権利の最低限の希望を満たさないからである。二国家シナリオでは、パレスチナ人は地理的および政治的に断片化されたままであり、帰還権の現実的または単なる実施はおそらく実現されない。パレスチナとイスラエルの「一つの民主主義国家」は、過去のすべての不正義への対処はできないかもしれないが、すべての人に可能で、確実により良い未来を想像することを狙う最も有意義な出発点である。

第三に、イスラエルとパレスチナ間を仲介可能な唯一の当事者としての米国への過度な依存は終わらせなければならない。米国は、イスラエルに対する寛大で絶え間ない軍事的および政治的支援を通じて信頼できないことを示しただけでなく、パレスチナの自由と解放の道の大きな障害として自らを位置付けた。

パレスチナ指導部は、世界の権力バランスの根本的な変化を理解する必要がある。パレスチナが選択肢を多様化し、アジアの台頭勢力との関係を強化し、米国とその同盟国への政治的および経済的依存を逆転させるために南米とアフリカ諸国に手を差し伸べる時が来た。

パレスチナの指導部は以前は待ちの戦略を取って成功していたが、その戦略は今や終わりに近づいている。

ラムジー・バロウド

第四に、パレスチナでの民衆の抵抗は常にさまざまな形で表れているが、政治的資本に移行できる持続可能なプラットフォームとしてはまだ活用されていない。昨年は、歴史的な統一デモで数万人のパレスチナ人を集めたガザの「帰還の大行進」の停止から始まった。しかし、ヨルダン川西岸のパレスチナ人は、イスラエルの占領と自治政府という2重支配の行列を必死にナビゲートしようとしている。これは、パレスチナの人々が自分たちの闘争を形作る上で基本的な役割を果たすことを妨げるので、有害であることが証明されている。民衆の抵抗は、解放のための本物のパレスチナのビジョンのバックボーンとして機能しなければならない。

第五に、新たなパレスチナの政治的言説が国際的に重要となるには、都市、州、国レベルでパレスチナ人の権利を擁護しながら、パレスチナ統一のビジョンの背後に集まる世界的な連帯運動に支えられなければならない。ボイコット、投資撤退および制裁(BDS)運動に対する米国とイスラエルの攻撃は、パレスチナとイスラエルの物語を変えるこの戦術の成功の証である。世界中にすでにパレスチナ連帯の強固な基盤があるが、この運動は学界や知識人だけに焦点を当てるべきではなく、一般の人々にも手を差し伸べようとするべきだ。

昨年はパレスチナにとって壊滅的な打撃を与えたかもしれないが、よく見ると、2021年は新たなパレスチナの政治的言説全体への機会と見なすことができる。パレスチナが反撃するチャンスである。.

ラムジー・バロウドは、ジャーナリストであり、『The Palestine Chronicle』の編集者である。5冊の著書があり、最新著書は『These Chains Will Be Broken: Palestinian Stories of Struggle and Defiance in Israeli Prisons』(Clarity Press、アトランタ)である。Twitter:@RamzyBaroud

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