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サウジアラビアのDV被害者達がTwitterに頼る理由

多くのサウジアラビア人女性は、家庭内暴力に対するサウジアラビアの法律を知らないでいる。(写真:Shutterstock)
多くのサウジアラビア人女性は、家庭内暴力に対するサウジアラビアの法律を知らないでいる。(写真:Shutterstock)
18 Oct 2019 04:10:27 GMT9

アイシャ・ファリード、アシール・バシュラヒール

ジッダ:Twitterは、サウジアラビアで家庭内暴力の被害者達が自らの苦しみについて発信して助けを求め、関連機関に彼らの運命を変える行動を起こすよう呼びかける場所となっている。

多くのサウジアラビア人女性がソーシャルメディアを使って、家庭内暴力の事例を報告しており、それらは幾度も国内で物議を醸してきた。

サウジアラビアで最近話題となったハッシュタグには、ある女性が自身の6ヶ月になる2人の娘を虐待する拡散動画がある。これにより、保護団体は虐待を行う母親からこの子供達を救うことができた。

別のハッシュタグでは、夫が妻を虐待する様子を隣人が撮影しシェアしたことで広まった。また別の動画は娘が作成し、虐待する父親の支配からの助けを呼びかけた。

これら3つの事例は労働・社会発展省の報道官の注意を引き、彼は、社会保障の介入や調査、犯人の逮捕時に、随時フォロワーに報告した。

サウジアラビアのセラピストでパイロット、社会活動家でもあるナワル・アル=ハウサーウィーはアラブニュースに以下のように語る。「ハリウッドから発生した最近の#MeToo運動のような国際的な動きには、世界的な影響力があります。この動きが被害者に声を上げる勇気を与え、自身を恥じる代わりに虐待する人を晒すことを促しました。」 

アル=ハウサーウィーは、起きたことは自身のせいではないと被害者達に教え、気づきを促すことに焦点を当てた、国際的活動や草の根運動の結果、被害者達がソーシャルメディアを活用するようになっている、と考える。「サウジアラビアではグローバル化が進みつつあり、私たちの文化もグローバル化されています。家庭内暴力の被害者達が声を上げ始め、自信を取り戻しつつあります。」

アル=ハウサーウィーは、彼女が行う活動の一環として、サウジアラビアの女性が持つ共通認識に対して疑問を投げかけた。「家庭内暴力は、『家族の秘密』としてラグの下に押し込んで、無視されるべきものではありません。 それは通報されるべき犯罪です」と、彼女は述べる。「家庭内虐待の証拠として自身の体の写真をツイートしたハフル・アル・バティン在住の少女のような事例は、声なき人に声を与えます。」

アル=ハウサーウィーは家庭内暴力の被害者に声を上げるよう促す。「私が行う診療では、多くの被害者が、未だ家庭内暴力のあった家庭で育ったトラウマに苦しんでいます。米国や英国、サウジアラビア出身の40代後半から60代後半の女性達は、鮮明なトラウマによる涙を流します。この問題は万国共通であり、止めなければなりません。」

またアル=ハウサーウィーは、被害者の法定後見人でもある兄が脅迫を行い、身体的にだけでなく経済的にも被害者を虐待していたという、以前拡散された事例に光を当てた。彼は、暴力で脅すことにより、教師として得た被害者の給料を無理やり奪っていた。

「ここサウジアラビアの体制のあり方では、被害者は家庭内暴力を通報するために多くを耐えねばなりません。さらに報告してからも、被害者はその結果を被ることになります。」

「法定後見人に対して苦情を申し立てる場合、後見人は被害者を隔離することで、彼女の職場に問題を起こさせることもあり得ます。これらの女性に残された唯一の選択肢は保護施設ですが、それは現実は刑務所のようなものです」と、アル=ハウサーウィーは述べた。

このセラピストは、家庭内暴力の加害者と被害者に対して、より効果的な対策が必要であると考えている。「私はトロントで家庭内暴力事件を通報したことがありますが、その数分後には警察が加害者を逮捕し、妻と娘の100メートル以内に近づいてはならないと申し渡しました。この被害者は、カウンセリングと家庭支援団体による家庭訪問を受けました。最も重要な点は、被害者が自身の家に住むことができる一方で、加害者は犯罪の責任を負うことです。」

虐待は被害者の考え方を歪めてしまうため、被害者にとって助けを求めることは困難となる。「被害者が助けを拒否しているという理由で助けを諦めることは、私たちが被害者の精神についてどれほど無知であるかを示しています。」

度重なる虐待は、被害者の人間性や性格、認知や加害者への反応を歪めてしまう、とアル=ハウサーウィーは述べる。

被害者は、自身への自己肯定感と虐待加害者がいなくても生きられるとの信念を失ってしまう。このような状況では、被害者は論理的に考えることができず、自分が今ある状況について自責の念にかられる。

アル=ハウサーウィーは、診療にはより多くの男性患者が来るようになったと言う。虐待は性別に関係なく、あらゆる人々が日々直面し、苦しんでいる問題だ、と彼女は言う。

しかしながら、ソーシャルメディア上で家庭内暴力の報告が相次ぐのは、「ホットライン1919」のような確立された通報システムに対する被害者の不信感を表している。

「Twitterが、多くの人々が正義を勝ち取るための事実上のプラットフォームとなったことは残念な出来事です」と、国連開発計画により2007年に親善大使に任命された、サウジアラビアのメディアパーソナリティーで活動家のムナ・アブ・スレイマンは述べる。

「彼らは、大衆からの圧力がなければ、実際の行動は取られないだろうと考えています。それは、人々が彼らに開かれている一般的な方法が機能しているとは考えていないことを意味します」と、アブ・スレイマンは述べる。

心理学的視点

キング・アブドゥルアズィーズ大学の心理学部の助教授であり、ジッダの国際医療センターでカウンセラーと心理療法士を務めるマナル・カヤルは、家庭内暴力の厳密な定義をアラブニュースに教えた。「それは、被害者への力と支配を確立してそれを維持するために、ある人が他の人に対して行う身体的、心理的、性的、経済的、感情的な虐待などを含む、強制的な行動様式です。多くの被害者は身体的または性的暴行を受けてはいませんが、彼らは言葉や感情的、心理的虐待だけでなく、強要、脅迫、孤立や威嚇によって支配され、脅かされています。

家庭内暴力は、被害者特有の身体的特徴を残すことがあり得る、とカヤルは述べる。首の周りの打撲痕や赤や紫色の内出血の痕、捻挫や手首の骨折など、家庭内暴力の被害者には明確な身体的徴候がある。また、長期間続く影響として、息切れや筋肉の緊張、不随意の震えや女性の不妊問題などが挙げられる。

カヤルによると、多くの被害者は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する。「PTSDによりフラッシュバックや悪夢、深刻な不安障害がおこり、思考が制御できなくなる場合があります」と、彼女は言う。

「虐待の被害者はまた、絶望感、無力感、慢性疲労、不眠症、自殺思考や自殺行為を伴う、うつ病を発症する傾向があります。さらに被害者は、アルコールや薬物乱用に頼るようになることもあります。」

虐待は危害を与えるのではなく、力を確立することあるため、被害者が助けを求めることは難しい、とカヤルは述べる。被害者への恐怖や脅迫、心理的操作、身体的危害を通して関係性を支配することで、加害者は、被害者が無力感を感じ、その状況を変えることが不可能だと感じる状況を作り出す。

「ソーシャルメディア上で拡散される家庭内暴力の各事例は、個別に確認、調査する必要があると考えます。それぞれの事例で動機や理由、状況が異なるため、一般化することは困難です」と、彼女は述べた。

家庭内暴力に関する法律

弁護士ディマ・アル=シャリフがアラブニュースに語ったところによると、虐待防止法は「この問題に対処している」と言う。 

「立法者は家庭内暴力を含むあらゆる種類の虐待を違法とました」と彼女は述べる。

この法律は2013年8月23日に承認されたが、多くの人はこの規制に精通していない。「労働・社会発展省は、この件に関して通報や気づきを促す文化を広めていく努力をさらに行わねばならない。」 

弁護士のアブドゥッラフマーン・ アル=ラッハームは、夫から身体的虐待を受けたとされるアブハーの女性の事件について、事件を報告した人物は「人類の法と原理を尊重する、まともな人間が行うべき行為を行なった」と見解を述べた。

虐待防止法第3条によれば、虐待事件に気付いた者は直ちに通報しなければならない。

「法律により、通報者の身元は守られます」と アル=ラッハームは述べ、アブハーで家庭内暴力事件を通報後に身元を公開された女性の場合、当局はこの手順を知らなかった、と付け加えた。

虐待防止法第5条は、「虐待を通報した者の身元は、本人の同意を得た場合、又は施行規則で定める場合を除き、開示してはならない。省庁職員及びそのような虐待事例に気付いた者は、その職務の限り、当該情報の機密性を保持しなければならない」と定めている。

 アル=ラッハームはテレビのインタビューで、あらゆる形態の虐待は社会に重要な問題であり止めるべきだ、と述べている。

「この問題は個別に(各事例で別々に)解決することはできません。なぜなら解決策は、被害者がソーシャルメディアで訴えることなく、制度的に適用される厳格な手続きを有した法律に基づくものであるべきです。」と彼は、家庭内暴力の別の被害者についてトレンドとなっているハッシュタグ付きでツイートしました。ハッシュタグはアラビア語で「#虐待被害者EmmaAlzahraniを救おう(#SaveTheAbusedEmmaAlzahrani)」と書いてあります。

アル=ラッハームは、虐待や暴力の報告が「法的にだけでなく、行政上も」即座に対応を要する事象となったと述べた。

「虐待を受けた被害者が保護窓口に電話をする際、数々の官僚的な手続きが行われます」と彼は言う。彼は、官僚的な調停委員会がこの場合の問題であると述べた。「被害者が激しい殴打により裂傷を負っているにも関わらず、保護団体は被害者が虐待者と和解するように提案します。代わりにすべきことは、虐待者を家から追い出し、法的手続きに従って事件が終結するまで家の近くに来ないと誓約書に署名させることです。」

ソーシャルメディア上では、このような事例に対して2種類の反応がある。当局に知らせるために、虐待のハッシュタグを広めてTwitterでトレンド入りさせようとする支持者と、事件の改ざんや隠蔽を行い、名誉毀損など他の問題に光を当てて本来の原因から世論をそらそうとする者だ。

「名誉毀損は、個人の身元が晒されるプライバシーの侵害であり、このように名誉毀損と評判が結びついています。その人にのみ当てはまる特徴や特色を示して、人を写真や動画に撮る行為です」と続け、彼は、このようなことは虐待事件を報告した女性が共有した動画では起こっていなかったと説明した。無力な妻の悲鳴だけが流れるだけの拡散動画により夫の名誉が汚された、とアブハーの虐待を行う夫に対する名誉毀損で通報者を非難した人々に対して、アル=ラッハームは、「もし名誉毀損事件があったなら、虐待者が苦情を申し立てれば彼を捕まえられるのに」と述べた。しかし、ソーシャルメディアによる通報の持つ欠点の1つに不正確性が挙げられる。このような手段で流布している通報事例の中には、確固たる根拠を持たない場合もあり、それらは実際の出来事を意図せず誤って表現したものであったり、何もないところで騒ぎ立てるものであったりする。

虐待防止法第6条にあるように、虐待事件を善意で報告しているとされる者を保護する法律では、「当該事例が虐待ではなかったと立証された場合でも、虐待の事例を誠意から報告した者はその責任から免除される」と定めている。

2017年初め、サウジアラビアの女性たちは再び沈黙を破り、ハッシュタグ「#Break_Your_Silence_Speak_Up」を通じて、日常的に直面する家庭内暴力、ハラスメント、レイプに関する体験を暴露する方法を編み出した。そしてこのハッシュタグにより、サウジアラビアの女性達は、普段は語らることのない苦い体験談を共有し始めた。

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