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メッカのグランドモスク:拡張の歴史

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29 Jul 2020 10:07:49 GMT9
29 Jul 2020 10:07:49 GMT9

Mohammed Al-Kinani

  • サウジアラビアの王たちの驚くべき功績は、イスラム世界で最も神聖な場所の管財を新たなレベルへと引き上げた

ジッダ:歴史の中でイスラム教のカリフや統治者たちは、イスラム教で最も神聖な都市であるメッカを管理し、グランドモスクを守り、拡張し、維持することに尽力してきた。

「グランドモスクは、世界中のイスラム教徒が礼拝を行う際に顔を向ける場所なので、スルタン、王、王子、指導者、さらには裕福なイスラム教徒らの注目の的であった」と、ウンム・アル=クラー大学の歴史学教授であるアミナ・ジャラル博士は語った。

「彼らはモスクの修復と改修のための全ての資金援助を行った。宗教心に動かされて、イスラム黄金時代を通して寄付を行い、この神聖なモスクを維持するために必要な労働者や建築資材を提供した」。

これらの過ぎ去った時代において、指導者らはまた巡礼者の聖地への旅を容易にするために、井戸掘りと道路の舗装を命じていた。しかしジャラル博士によると、サウジアラビア時代に彼らの取り組みは新たなレベルに達したという。

「モスクの拡張と維持において、サウジの指導者らの貢献は比較にならないほどのものだ」と、ジャラル氏は語った。

ラシドゥン時代

二聖モスクの総務所長の報告書によると、預言者イブラヒムの時代から第2代正統カリフであったウマル・イブン・アル=ハッターブが統治する時代まで、グランドモスクは家々に囲まれていたという。ウマルは周回する地区を広げるため近隣の土地を購入し、またその周りに2メートルの壁を作ることを命じた。

礼拝者の数が増えるにつれ、より広い空間が必要となり、第3代正統カリフであったウスマーン・イブン・アファンの治世中の647年に、モスクは拡張された。モスクを利用する人の数は増え続け、38年後にはカリフのアブドゥッラー・イブン・アッズバイルによって再び拡張された。また彼はカアバが損傷した後、再建した。

ウマイヤ朝時代

ウマイヤ朝の第5代カリフであるアブドゥルマリク・ビン・マルワーンと、その息子のアル=ワリード・ビン・アブドゥルマリクの統治下では、さらに2回の拡張が行われた。

アッバース朝時代

総務所長の報告書には「アッバース朝時代では、イスラム教の第20代カリフであったアブー・ジャーファル・アル=マンスールがモスクの北側を少し広げるよう命じ、拡張が行われた。モスクの東側にはミナレットも建てられた」と書かれている。この時代で最大の拡張事業は、783年頃にアッバース朝の第3代カリフであったムハンマド・アル=マフディーによって命じられ、その中で彼は近隣の住宅を手に入れ取り壊し、グランドモスクを拡張した。

彼はこの事業が完成する前の785年に死亡したため、息子でカリフとしての後継者であったムーサーが事業の監督を引き継ぎ、モスクを12,512平方メートル拡張した。その後810年間、グランドモスクは修復作業が行われたのみで、大きな変化はなかった。

オスマン帝国時代

1570年代の初めには、オスマン帝国のカリフであったセリム・カーン皇帝と息子のムラト・カーンが、モスクの平らで木製の屋根をドーム型のものに取り替えるなど、改修・修復工事を監督した。彼らはまた屋根を支えるための柱を追加で設置し、石造りのアーケードも追加した。モスクの大きさは28,003平方メートルまで拡大した。

サウジ時代

ここまでの歴史の中で、統治者たちはグランドモスクを見事に拡張、維持してきたが、サウジアラビアの王たちの驚くべき功績は、イスラム世界で最も神聖な場所の管財を新たなレベルへと引き上げた。

アブドルアジーズ国王が国を統一しサウジアラビアを建国した時、彼は二聖モスクを最優先とし、これらに特別な配慮が確実に行き届くようにした。

1926年、国王はグランドモスクの床全体を大理石で覆うなどの全面改修を命じた。総務所長によると、彼は1年後には太陽の熱から礼拝者を守るため、マタフ(周回する空間)にひさしを建てるよう命じたという。

また彼はマサ(サアイーとして知られる、サファとマルワの間を礼拝者が歩く儀式の間の空間)を初めて石で舗装するよう命じた。

1928年には、カアバを覆う布を製造するためにキスワ工場の設立を命じた。また国王は、彼の息子たちが巡礼者の増加を見越してグランドモスクを拡張し続けることを、遺言の中で条件とした。

息子のサウード国王が君主になった時、グランドモスクは約28,000平方メートルに拡張していた。1955年、サウード国王はその後10年近く続いた長期的な拡張計画に着手した。

この計画でマサが拡張され、地下エリアともう1つのフロアが追加された。

サウード国王の後継者であったファイサル国王は、拡張と開発工事を継続した。マカム・イブラヒムを取り囲んでいた建物は撤去され、カアバを周回する巡礼者のためにより広いスペースが確保された。

1975年にハーリド国王が引き継いだ後マタフのエリアは拡張され、マサの石畳はギリシャ製の耐熱性のある大理石に取り替えられ、礼拝者は特に昼間でも、より快適にカアバを周回できるようになった。

1988年9月14日、ファハド国王はこの14世紀間で最大のグランドモスク拡張のための基礎を築いた。この事業でモスクを35万6,000平方メートルに拡張し、150万人までが快適に儀式を行えるよう十分なスペースが確保された。また既存の7つのミナレットに、さらに2つのミナレットが追加された。

2005年に即位した第6代のサウジアラビア指導者であるアブドッラー国王は、建築、技術、セキュリティの改善を含む、大規模な拡張事業に着手した。マタフのエリアはハッジとウムラの巡礼者の増加に対処するため、1時間あたり5万人収容できた規模を、13万人以上収容できるよう拡張された。

グランドモスクとそのオープンエリアと施設の総面積は75万平方メートルまで拡張され、総費用は800億サウジアラビア・リヤル(213億ドル)以上となった。

2015年、サルマン国王は150万平方メートルの敷地に約200万人の礼拝者を収容できるようなモスクにするため、5大プロジェクトを立ち上げた。数十億ドルの価値がある近隣の不動産は、計画に必要な土地を提供するために確保された。

このプロジェクトには本館、広場、歩行者用トンネル、中央サービスステーション、初の環状道路の拡張が含まれていた。

またグランドモスクにより多くの礼拝者を収容し、彼らが便利にタワフ(周回)を行えるようモスクの全ての階のスペースを活用するよう指示が出された。

トイレや沐浴場は16,300人まで収容できるよう拡張された。

グランドモスクの技術的な改善としては、24時間稼働するエスカレーターやエレベーター、空調、照明、音響システム、ビデオ監視システム、火災制御システムなどがある。

2008年に始まったサウジで3番目、最新となるグランドモスクの拡張プロジェクトの中には、本館、マサとマタフ、外部広場、橋、テラス、中央サービス、洞道、病院と歩行者用トンネル、中継駅と橋、モスクを囲む環状道路、発電所や貯水池などのインフラの開発が含まれていることが、財務省の報告書によって明らかになった。

2019年8月に国営サウジ通信は、グランドモスクの近くに3,000平方メートル以上の中庭スペースを追加するプロジェクトが完成間近であると報じた。このプロジェクトはハッジとウムラの巡礼者に最高のサービスを提供し、混雑をコントロールし、訪問者の安全を確保するためにモスクと中庭の収容人数を増やす目的で行われている。

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