




ロジェン・ベン・ガセム
リヤド:新型コロナ危機とベイルートの大規模爆発事故発生により、世界中の人々は自国が自然災害などの危機に対応できるのか疑問を抱くようになった。緊急事態が発生し輸血用血液が必要になった場合は特にそうだ。
サウジアラビアではすべての血液センターで非常災害対策計画を立ててある、とリヤドの治安部隊病院で血液バンクの責任者を務めるオマル・アルサイード氏は述べた。
各血液センターでは毎日、国家危機災害管理センターまで血液の在庫状況を報告している。
しかし、サウジアラビアの血液在庫は概ね足りている一方で、献血の重要性に対する認識を高める必要があると強く思う人は多い。
「全体的に見て、サウジアラビアにおけるドナー教育プログラムは不十分です。要するに血液センターでは特定のドナーに献血してもらう場合が多いのです」とアルサイード氏は語った。
同氏はさらに、特定のドナーが献血者全体の40〜60%を占めていると述べた。保健省ではこの数字が100%にまで増えるとみている。
「サウジアラビアには献血や輸血に関する知識を提供するSNSアカウントが複数存在しています。教育省と連携して、幼稚園就学前から高校生までを対象とした血液科学と献血のメリットを扱ったカリキュラムを導入したいと願っています」と語った。
最近初めて献血をした倉庫管理主任者として働くラハーフ・アルアーヤフ氏は、サウジアラビアでは献血の必要性を世に訴える必要があると述べた。
博士号を持つ女性研究者で、定期的に献血をしているバルジーズ・ヌガリさんも、サウジ人は献血の重要性を認識していないと述べた。
「毎年ラマダンの間、ジェッダのファハド王専門病院ではジェッダ・ドナーという大規模な献血イベントが開催されます。
しかし残念なことに、サウジ人は献血がいかに重要か分かっていません。意識を高め、より多くの人々に献血を奨励できればよいのですが」とヌガリさんは語った。
ヌガリさんは、血液を切に必要とする入院患者に関するメッセージを受け取ることはよくあると述べた。「私は命を救うため、可能な時はいつでも献血しようと努めています」
ジェッダのビジネス&テクノロジー大学で広報担当副局長を務めるナジー・ミクワール氏は、献血への動機づけをする必要があると述べた。
「献血者情報が政府機関に届けばよいと思います。たとえば献血を5回したら、政府が交通違反の罰則を取り消すとかですね。
動機づけの別なやり方として、大学入学や授業に登録する際に、定期的に献血している人を優先するのもありでしょう。献血は携帯電話会社のように、ポイントを貯めて景品がもらえるような仕組みにすればよいのにと思います」
アルサイード氏は病院も献血を奨励する場となり得ると確信している。「採血するのに十分なスペースを確保し駐車場近くにもってくるとか、教育プログラムを開発するとか、公共の場で啓発活動をするとか。民間の協力を得て映画館、商店、レストラン、観光案内所、スポーツイベントのチケット売り場などで献血した人が特別割引を受けられるようにするとかですね」
サウジアラビアの各血液センターでは、ドナー募集と自発的に献血するよう促すプログラムを実施することが義務付けられているとアルサイード氏は述べた。
「複数台の献血車両が公共の場にやって来ます。そこでは献血の意義を考えさせる教育活動や採血が実施されています」
研修医のヤジード・アルアヤシュさんはこれまで2年間4か月ごとに献血しているが、サウジアラビアには定期的に献血してくれる人がもっと必要だと述べた。
「献血する人がいるのは、SNS上に献血して人の命を救うよう呼び掛ける投稿が表示されるからです」とアルアヤシュさんは語った。「献血するという文化が突如確立するというのはあり得ません。適宜訴えかける必要があります」
さらにこう語った「私が献血する理由は人道上のものです。人の命を救うことができます。知り合いである必要はありません。誰でも構わないのです。さらに達成感もありますから。
ベイルートの事件で人々が目覚めてくれればと切に願うのですが。災害はどこで発生するか分からず、備えるには血液が必要です」
サウジアラビアの各血液センターでは、コロナ禍の最中に病院や血液バンクに行く必要を回避するため「自宅で献血しよう」キャンペーンを開始したとアルサイード氏は述べた。
一部の特殊な血液型が不足することはよくあるという。
「血液センターでは常にRh陰性の血液(Oマイナス、Aマイナス、Bマイナス、ABマイナス)が不足しています」
ほとんどの血液センターが直面している最大の課題の1つに、ガイドライン・統一された方針・ドナー登録・全国的な基準を定める役割を担う国家機関がないことだ、とアルサイード氏は述べた。
しかし献血を支援するサウジアラビア製のアプリがある。「Wateenはすごいです。献血の時期を知らせ、回数を記録してくれます」とアルサイード氏は語った。
Wateenの運営には保健省が協力しており、ドナーと血液バンクの間のコミュニケーションギャップを埋めようとしている。