
フランク・ケイン
10月1日(木)にリヤドで開催されるG20の大都市部門であるU20の目的の一つは、多様な背景と文化を持つ世界の大都市を一堂に会し、それぞれの異なる側面ではなく、共通する利害や諸問題について共に模索することだ。
リヤドとテキサス州ヒューストンについて言えば、相互理解のプロセスは既に何十年にもわたって行われている。
ヒューストンの国際問題・世界貿易部門のディレクターを務めるクリストファー・オルソン氏はアラブニュースにこう語った。:「ヒューストンとリヤド、実際にはサウジアラビア全体だが、両者の間には非常に 長い歴史をもつ強力な関係が築かれている」
オルソン氏はヒューストンのシルヴェスター・ターナー市長直属だが、過去1年あまり今年サウジアラビアが主催するG20における米国の「シェルパ」の立場にある。
リヤドとヒューストンの密接な関係は当然ながら石油と天然ガス産業にもとづくものだが、両者ともその経済的な活力と成長についてはエネルギービジネスに負うところが大きい。サウジアラビアとテキサス州の人々は、原油ビジネスのパイオニアとして独特な継承を共有し、その繋がりは過去数十年にわたって成長し多様化してきた。
「その繋がりは石油から始まったが、やがて文化的・経済的交流へと発展していった。その結果、多くのサウジアラビア人がヒューストンへ移り住むことになった」とオルソン氏は 言う。
サウジアラビアのエネルギー巨大企業サウジアラムコは、テキサス州ヒューストンに大規模な工場を持ち、メキシコ湾岸からほど近い場所にモティバ製油所を所有する。
コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックが到来するまでは、サウジアラビア人は毎年ヒューストンで行われるCERAWeek エネルギーフォーラム(「石油企業のダボス」的イベント)へ向けて集団で移動し、テキサスのシェール産業における競合他社の動向をうか がったものだった。
また、大勢のサウジアラビア人がテキサスの大学やテキサスメディカルセンターに在籍している。オルソン氏によると、同センターは世界最大の医療施設で、治療を受けるサウジアラビア人の患者数も増大しつつあるという。
石油と医療はCOVID-19のパンデミック中密接に関わっていた。アラムコが医療品や医療機器をヒューストンへ寄贈したからだ。「それについては、我々は本当に幸運に恵まれた。後援者たちからおよそ100万枚のマスクが寄贈され、その大部分はアラムコからのものだった。実に驚くべき寛大な行為だった」とオルソン氏は言及した。
コロナウィルスの感染拡大により今年はCERAWeek が中止されたが、オルソン氏によると、ヒューストンの運営者側は、計画されている2021年のオンラインイベントに何らかの物理的要素を追加したいと考えているという。
ヒューストンはニューヨークやロサンゼルスなどの米国都市を襲ったパンデミック勃発当初の感染は大方回避することができたが、5月になって米国の数カ所の都市とともに規制を緩めたために感染急増を引き起こした、と関係者はいう。「現在では数値的には減少方向へ向かっている。しかし学校や経済活動が再開し、第二波の可能性はある」
U20の主要テーマの一つは、ヒューストンやリヤドのような大都市の中心部がいかにパンデミックによる健康上・経済上の大混乱を克服できるかというもの。大都市からの大量流出を予測した専門家もいたが、勤務形態や社会的習慣がパンデミック後の「普通の状態」に順応していくに従って、「都市化の終焉」説も出ている。
オルソン氏はこう語る。:「我々はみな状況に適応していく必要がある。たとえば、都市として我々は今後もインフラストラクチャの大規模プロジェクトに投資を続け、公共交通システムを活性化させるべきか?こうした事業は持続可能性の観点から行うことだが、新たに健康保健上の課題が出てくる」
仕事環境も強制的な変更に直面する。「以前はテレ会議があまりさかんでなかったが、今ではそこら中で行われている。ビジネスの仕方が根本的に変えられていく」
テクノロジーへの依存が増すことによって他の課題が生まれ、U20ではその点についても協議される予定だ。教育分野をはじめ、効率的なコミュニケーションが行える人々の間のデジタル上の分割という問題が世界の保健危機の期間中に浮き彫りにされ、ヒューストンのような豊かな都会にさえ影響を及ぼした。
「しかし概念としての都市がなくなることはないと信じている。我々は都会で生活する社会的動物だ。人々は変化には順応するが、都市環境という一般概念が変わることはないだろう」とオルソン氏は言い添えた。
彼によると、サウジアラビアのU20で同じ立場の人々と仕事をした経験は「とても素晴らしい」ものだったという。
「リヤドがU20のコンセプトを打ち立て、それを展開させていくやり方を見て感嘆している。U20はまだたった3年目だが、リヤドはU20を 確固たるグループとして確立し、考えやアイデアの交換を行うためのフォーマットを作り出した。これによって我々は証拠に基づく提案やソリューションを生み出すことができるようになる」と彼は言う
U20の山場は10月2日(金)で、全大都市の市長がオンラインで集結し、G20へ提出するための27項目を含む公式声明の承認を行う。その声明は今のところ未公開だが、オルソン氏によると、この1年間にシェルパたちの間で育まれた良好な関係を反映する「よく出来た」文書だという。
オルソン氏は将来U20がG20内に昇格されることを望んでいる。特にG20は若い世代の問題をこれまで以上に取り扱うようになっており、若手人口の占める割合の高いサウジアラビアがその昇格プロセスで一役買うことができると考えている。
「東京とブエノスアイレスで達成された内容にリヤドの素晴らしい働きがさらに構築され、前進が見られた。
「気候変動、人権問題、持続可能な開発などの最大級の課題に直面しているのは世界中の都市だ。しかし同時に都市はソリューションを見つけつつある。その点に好機が待ち受けている」とオルソン氏は言う。