
ムハンマド・アル=スラミ
ムハンマド・ケーナン
リヤド:アラブニュースとの独占インタビューで、アラブ連合の広報官トゥルキ・アル=マルキ准将は、「イランを後ろ盾とするイエメンのフーシ派武装組織が、米国政府の海外テロ組織(FTO)リストから外されたことに反応して、アデンや隣国サウジアラビアの官庁施設を標的とした攻撃を激化させている」と語った。
米国務省は今年1月19日、イランと中東内のイラン代理軍に対する「最大限の圧力」キャンペーンにおけるドナルド・トランプ前政権最後の仕事の一つとして、フーシ派(アンサール・アッラーとも呼ばれる)をFTOに指定した。
2月15日にジョー・バイデン現政権はそれを撤回して彼らをリストから除外したのだが、彼らはそれに報いるどころか、アル=マルキ氏によると、フーシ派はイエメン政府軍に対する攻撃や、サウジアラビア市民および建造物を狙った国境超えミサイルやドローンによる攻撃を激化させているという。
「フーシ派は FTOからの除外決定を誤解していると思われる」と アル=マルキ氏は言う。
「FTOからの除外を受けて、フーシ派はイエメン国内や近隣諸国に対する敵対行動を増し、弾道弾ミサイルや無人航空機(UAV)を使った多くの攻撃を仕掛けるようになっている」
アル=マルキ氏は2017年からアラブ連合の広報官を務めており、フーシ派がテロ組織に指定されるのは、アラビア半島のアルカイダ(AQAP)やISISと同様の活動ぶりからして、当然のことだと考える。
「2016年のフーシ派による脅威を思い返すと、フーシ派武装組織が米国車両や駆逐艦USSメイスン号を攻撃し、当時の米国政権はそれに対してイエメン内の2箇所に報復攻撃を行っている」と アル=マルキ氏は言う。
「紅海南部とバブ・エル・マンデブ海峡との間におけるフーシ派武装組織の活動と、イエメンにおけるアルカイダの活動を比較しても、なんら変わるところはない。イエメンのアルカイダも2000年に米軍駆逐艦USS コール号を攻撃している。まさに同じようなことを行っている。フーシ派の脅威はサウジアラビアに対するものだけではない」と彼は述べた。
「フーシ派と世界の他のテロリストグループとの唯一の違いは、何よりも、弾道弾ミサイル、UAV 、巡行ミサイル、爆弾搭載のUAV などを所持する初めてのテロ組織だということで、テロリストグループがそのようなものを入手したのは前代未聞のことだ。
「さらに、フーシ派は国家という枠組の中でテロ行為を行おうとする。ダーイシュ、AQAP、その他の世界のテロ組織を見ると、組織ごとに独立して行動している。しかしフーシ派は、イエメン政府の傘下で自分たちのイデオロギーを押し通そうとして悪事を働く。これらが、フーシ派と他のテロ組織との間にあるたった二つの違いだ。」
アル=マルキ氏は、フーシ派によるつい先頃起きたマリブへの襲撃をはじめ、昨今の暴力の激化は、強い立場から交渉を行うための広義の戦略の一つだと思っているが、イランのフーシ派支援組織の方は、実は将来的な核交渉における自分たちの交渉力を強化するために、わざと対立抗争を利用しているのだと主張する。
その金額
4億3千万ドル
*サウジアラビアによる2021年度対イエメン国連人道支援計画への寄付金。
「マリブについては、フーシ派は強力な持ち札を持って交渉に臨みたいのだと思う。彼らはマリブを支配下に置きたいと思っているわけだから、交渉に応じる際にはなんらかの譲歩案を出してくる可能性がある」とアル=マルキ氏は言う。
「イランが介入すると、イエメンでは事態が複雑化する。イランは核合意に関してP5+1で協議し、その際にイエメンを切り札として使おうと考えており、もうすでに事態を大きくしつつある。そして間違いなくフーシ派はそれに気がついているはずだ。
「フーシ派はイラン、つまりイスラム革命防衛隊(IRGC)の手中にある1枚の持ち札に過ぎない。そしてイラン側は交渉の場に着いた時、まず最初にそのカードをあけ渡すのだろう」
2015年、フーシ派が国連承認のアブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領政権を倒し、イエメン国内での闘争は激化した。世界各地および中東地域の関係者らからの後援を受け、サウジアラビア率いるアラブ連合が軍事行動を開始して、再び合法的な政府に政権を取り戻させた。
フーシ派に対するイランの支援は、フーシ派が2015年にサナアを占拠したずっと以前から公然の秘密となっている。イランは残虐な戦争によって、一向に改善されない世界最悪レベルの人道危機に追い打ちをかけさせた。実際、イランは地政学的な事情が自分たちに有利に傾くまでは、イエメンの平和になんの関心ももたない、とアル=マルキ氏は確信する。
「IRGCの将軍たちはイラン政権の支援を受けており、フーシ派と米国・国際社会・イエメン政府・アラブ連合との間で和解や話し合いが起こることを望んでいない。彼らは物事を複雑化させることを望んでいるのであり、イエメンが政治的ソリューションに到達して国内の危機を収束させることを望んではいないのだ」
アル=マルキ氏は、イエメンで6年間にもわたって戦争が続いてしまったのは、イランが フーシ派武装組織へ高度な武器を供給していたためだと言う。
「軍事行動が始まった時、我々はイエメン国防軍の実力を十分承知していた。しかしやがてフーシ派が弾道弾ミサイルやUAVを都市や国境沿いの村々めがけて発射し始めるのを目の当たりにした」とアル=マルキ氏は言う。
「そのうちにフーシ派は軍事力を増強し始め、タイフを攻撃しようとした。その後彼らは メッカへの攻撃を試みたため、世界中の何百万人ものイスラム教徒たちを苛立たせることとなった。また、さらに範囲を広げてヤンブやリヤドまで攻撃対象とし、最近ではダーランにあるサウジアラムコへも攻撃を試みている。
「要は、フーシ派自体はそこまでする能力を持たない。この能力はイラン政権から提供されたものであり、我々が示したすべての徴候や物理的証拠がイランの関与を物語っている」
イランはイエメンにおける対立抗争を代理戦争と見ているかもしれないが、アル=マルキ氏によれば、サウジアラビアとその同盟各国は、それを必要な戦争と見ているという。
「イランによるイエメンへの関与は代理戦争だ。イランは代理戦争を仕掛けている。しかし我々にとっては、それは代理戦争ではない。この戦争は必要に基づくものだ」と彼は言う。
「2015年のことを振り返ると、フーシ派は我々の南側の国境地帯に大型兵器を使って演習を行った。湾岸協力会議(GCC)がイエメンの全党派に対し、サウジアラビアへ来て会談を行い、政治的ソリューションに至る努力をするよう要請した。フーシ派はそれを拒んだ」
アル=マルキ氏は、イランの長年にわたるフーシ派への支援は対立抗争以前からのもので、2013年にイエメンへ武器を輸送しているところを拿捕された船「Jihan I」がその証拠だと指摘する。さらに、イランとサナアを結ぶエアブリッジにも言及する。これはイエメンの首都が壊滅する数日前に設置されたが、イランが言うような食品や医薬品の輸送のためではなく、武器を運ぶのに使用されていた。
アル=マルキ氏は、この対立抗争への唯一のソリューションは国連安保理事会や国際社会がイランに対して確固たる姿勢を示すことであり、それによってフーシ派は交渉の場につかざるをえなくなると言う。
「イラン政権の介入、2016年の核合意違反、その他の国連安保理決議への違反に対する説明責任を追求するために、国際社会からさらなる圧力がかかれば、それによってイランに フーシ派への支援をやめさせることができるだろう」とアル=マルキ氏は言う。
「フーシ派支援の主要部分を占めるそれらの武器のおかげで、フーシ派は闘争を持続することができた。その支援が絶たれれば、フーシ派は話し合いに応じるはずだと考える」
「イエメンおよびイエメン党派における危機への最善策は政治的ソリューションだ。腰を据えて自国のために必要なこと、彼らの将来にとって必要なことは何なのかを判断する必要がある。」