

ディーマ・アルクデイル
ジッダ:スーパーコンピューターは驚くべき強力な処理能力を提供するが、コストが高く、また操作には高いスキルが求められる。そのため利用しているのは、主に政府組織やその他大手の機関や企業に限られている。
キング・アブドゥッラー科学技術大学(KAUST)を本拠とするスタートアップ企業UnitXは、この強力なテクノロジーへのオンデマンド・アクセスを提供することで現状を変え、もっと幅広い企業がスーパーコンピューターを手軽なコストで簡単に利用できるようにしようとしている。2017年12月に設立されたこの会社は、ユーザーが14台のスーパーコンピューターの能力を利用できるようにする、クラウド風オンライン・プラットフォームを提供する。14台のうち、3台はサウジアラビアに設置されている。
「湾岸協力会議(GCC)加盟諸国、特に王国内では、人工知能(AI)、機械学習、シミュレーションに関して多くの話題が上がっています」と、UnitXのキラン・ナラヤナンCEOは話す。「誰もがそのことについて話をしますが、口に出さないこともあります。それは、データエンジニアやデータ科学者に関して、産業内に大きなスキルのギャップが存在するという事実です」
「そのような人材を抱えている企業もありますが、それらのエンジニアや科学者たちは業績に集中するより、むしろソフトウェアやハードウェアのインフラ問題への対処に時間の50%以上を割いています。そのため、スキルの問題と共にインフラ管理の問題もあるのです。そのような企業は生産性と収益性が低下してしまうからです」
「また、アクセス障壁も存在します。政府機関のような大規模な組織はスーパーコンピューターを持っていますが、エンドユーザーである普通の会社や顧客が利用することはできません。スーパーコンピューター・センターに設定されているセキュリティプロトコルが彼らを信用しないからです。そのため(スーパーコンピューターに対する)ニーズと供給は存在するものの、その2つが対応していないのです。それが私たちの埋めるギャップであり、解決する問題です」
王国内でもすでにスーパーコンピューターは使われていると、ナラヤナンは話す。
「(サウジ)アラムコなどの企業やKAUSTなどの大学はスーパーコンピューターを持っています」と、彼は付け加えた。「私たちがしたいのは、スーパーコンピューター利用の民主化です。このテクノロジーは、ビッグデータ分析、機械学習、AIなどの非常に大きな問題をとても素早く解決します。私たちはこの能力を最大手の企業や団体だけでなく、普通の会社にも手が届くものにしたいのです」
スーパーコンピューターのコストは1億ドルから2億5,000万ドルで、さらに電力と、操作・保守に必要な特殊技能を持つチームのために、年間5~600万ドルかかるとナラヤナンは言う。その結果、企業はこのテクノロジーを利用したいと考える時、2つの主な制約に直面する。
「1つは、それらの機械を所有して操作するために必要となる、高額な費用と高いレベルのスキルです。そして、インフラを維持管理するために、IT技術者のチームが必要となります」と、彼は説明する。「そのため、この状況を民主化する鍵は、スキル、コスト、および管理の問題に関するそれらの障壁を崩すことです」
「(UnitXは)スーパーコンピューターをネットフリックスと同じくらい簡単に使えるようにするソフトウェア・プラットフォームを持っています。ウェブブラウザを通してネットフリックスにログインするのと全く同じようにUnitXプラットフォームを通してログインし、ネットフリックスの映画のようにUnitXプラットフォームのアプリケーションを利用して、ビッグデータ分析、AIや機械学習、シミュレーションをプラットフォームに接続されたスーパーコンピューター上に展開することができます」
プロダクト・エンジニアのモハメッド・ガワンニは次のように述べる。「全てのウェブサイトと同様に、ブラウザを通してプラットフォームにアクセスできます。ログインしたら、作業を始めることができます。それらのスーパーコンピューターに送ることのできる作業は、データ分析、機械学習モデル、シミュレーションなどがあります」
行うことのできる作業の一例として、彼は自動車の耐久性を試験するシミュレーションの実施を挙げた。
「メーカーはたくさんの車を作ってそれらにダメージを与える代わりに、コンピューターでテストすることができます」と、彼は述べる。「コスト効率が大幅に優れています」
またガワンニは、小規模な企業にはスーパーコンピューターにアクセスする手段がないことや、関連するコストの高さ、および専用プログラムを作成・実行するための専門知識を有するチームの雇用の必要性についても強調した。
「私たちは時間的にもコスト的にも効率的な方法で、スーパーコンピューターへのアクセスを提供します。また、(ユーザーは)より少ないコストでより速く結果を得ることができます。まさに革新的です」と、彼は付け加えた。「このプラットフォームは使い方が簡単で、ブラウザ経由でアクセス可能です。そのため専門家による支援はもう必要ありません」
UnitXは最近、KAUSTイノベーション基金とサウジアラムコ・アントレプレナーシップ(Wa’ed)から初期段階の資金供給を受けた。「これらの信用ある大手機関からの支援は、私たちのビジネスアイデアが評価されたことの証明であり、大きな励みとなります。私たちは幸運にも、目標とビジョンを共有する投資家を見つけることができました。それは、ここサウジアラビア王国における経済のデジタル変革です」と、ナラヤナンは述べた。
UnitXは、ミスク・グローバル・フォーラム2019で行われたアントレプレナーシップ・ワールドカップで決勝に進出した企業の中の1社だった。