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フランクリー・スピーキング:サウジは「石油輸出大国としての役割を維持しながら、気候変動にも取り組める」

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24 Jan 2022 02:01:28 GMT9
24 Jan 2022 02:01:28 GMT9
  • 問題は炭化水素にあるのではなく、空気汚染の排出にあるとサウジ環境政策担当者はインタビューで指摘するとともに、植林や大気環境の改善などのサウジ・グリーン・イニシアティブの目標についても語った

フランク・ケイン

ドバイ:サウジアラビアは国際社会における石油輸出大国としての役割を維持しながら、同時に気候変動の影響緩和に向けた野心的な戦略を進めることが可能だ、と同国の環境政策の主要立案者の一人がアラブニュースに語った。

サウジの環境副大臣を務めるオサマ・ファキーハ博士は、サウジアラビアと世界にとっての課題は、炭化水素生成による汚染排出に対処すると同時に、石油製品のその他の用途と再生可能な代用品を模索することだと語った。

「問題は炭化水素にあるのではなく、空気汚染の排出にあるのだと私は考えている」と、ファキーハ博士は言い、「石油化学製品、プラスチック、医療品、衣類などは炭化水素からつくられている。問題は、その際の汚染排出量―特に、CO2の排出量だ」と指摘した。

昨年、発表されたサウジ・グリーン・イニシアティブ(SGI)の施策実施に深く関わってきたファキーハ博士は、主要な政治家やビジネスパーソンへのインタビュー動画シリーズ、「フランクリー・スピーキング」に出演していた。

彼はまた、サウジアラビアに100億本の木を植えるという野心的な計画、自然環境の生態系と生物の多様性を守るためのキャンペーン、首都リヤドとその他の大都市の空気品質を改善するための取り組みについても語った。

ファキーハ博士は、SGIの一環として始められた環境キャンペーンは、気候変動と地球温暖化の課題に取り組むための包括的戦略の一部であると述べた。

「現状を踏まえ、サウジアラビアはサーキュラー・カーボン・エコノミー(循環型炭素経済)のアプローチを打ち出した。つまりは、CO2を他の廃棄物と同じように扱い、収集し、様々な方法で再利用するということだ」

「地球規模の気候変動という課題を一気に解決できるたった一つのアプローチなどないということに気づかなくてはいけない」

「再生可能エネルギー、サーキュラー・カーボン・エコノミー、リサイクル、森林破壊の阻止、生息環境保護、海洋プラスチックの削減、どれも必要だ。これらすべてに力を注がなくてはならない」と、ファキーハ博士は語った。

SGIで最も印象的な施策の一つである、この先の数十年間でサウジアラビアに100億本の木を植える計画は、砂漠気候で降水量が比較的少ないこの国にとっては挑戦だとファキーハ博士は認める。

「確かに、これは大きな挑戦で、野心的な目標だ。(ムハンマド・ビン・サルマン)皇太子殿下が発表したように、今後の数十年間を視野に入れている。我々が本当に重要視しているのは、環境の持続可能性だ。この目標を掲げたのは、環境の持続可能性を熟考してのことだ」

「目標達成のために、何よりもまずはサウジアラビアの在来種の植物を使うことに注力したい。信じられないかもしれないが、サウジアラビアにはこの乾燥した砂漠気候に適応した植物が2000種以上記録されている」

「これらの植物はこの環境で力強く育ち、(完全に)適応したのだ」と、ファキーハ博士は話した。

すでに実施され始めているこの植林プログラムの主な焦点は4つ。山々や渓谷の自然の植物系を復元すること、大都市の「都市緑化」計画、食料生産と農村のコミュニティを支援するための農業地帯への植林、砂の浸食を防ぎ、移動中の体験をより快適にするための主要幹線道路沿いの植林だ。

また、植林計画には再生可能な水資源が利用される。貴重な地下水に危機を及ぼさないためだ。環境政策担当者は、処理済みの廃水や雨水の利用、また海洋資源の利用拡大などを検討している。

「サウジアラビアは、アラビア湾と紅海に面した何千キロもの海岸がある。海水で育つマングローブの自生種が2種類あるので、それらの種を増やすことにも力を入れていくつもりだ」と、ファキーハ博士は語る。

サウジ国内で議論を呼んだ問題の一つは、自然の木を切って焚火をするという伝統的な習慣だ。これはSGIが止めようとしている砂漠化の原因の一つとされている。

「地元の人々はピクニックやアウトドアを楽しみ、家族が集まる時には焚火を起こすことを好む。我々にとっては大切な地域特有の伝統だ。だが、地域の植物の生息が阻まれるという大きな犠牲も伴った」

新しい環境法では、このような慣習に厳しい罰則が課されることになった。だが、ファキーハ博士は、焚火に代わる代替手段へのインセンティブが用意されているという。伝統に影響を与えないためだ。

世界保健機関(WHO)は、サウジアラビアとその他の中東諸国の大気環境の水準の低さを批判しているが、ファキーハ博士はWHOの調査結果には、一部、問題があると感じている。

「大気汚染と大気の質の悪化の区別を強調しておきたい。大気の質の悪化が人間の活動によって汚染されたからではないこともあるのだ。WHOは粒子状物質(PM)を主なパラメーターとして使用している」と、ファキーハ博士は指摘する。

「これは、ヨーロッパや米国(のような地域)には非常に良いパラメーターとなる。植物が豊かに生息しており、発電所や工場、その他の人間の活動が粒子状物質の主な発生源だからだ。我々はこのような粒状物質を人為起源粒子状物質(PM)と呼んでいる」

「ここサウジアラビアや周辺地域全体では、粒子状物質のほとんどは自然現象によるもので、主な原因は砂嵐だ。砂嵐の最中には大気の質は確かに低下する。その時に外に出て砂まじりの空気を吸い込むのが健康に良いとは誰もいわないだろう」

「つまり、彼ら(WHO)の調査結果はそういうことなのだ。大気の質が低下しているのは砂嵐によって自然起源の粒子状物質が発生しているためだ」

環境省は、砂嵐を減らし、大気の質を向上させるための包括的な対策に取り組んでいるとファキーハ博士は言う。

昨年、グラスゴーで行われた気候変動会議COP26では、何人かの専門家が、サウジアラビアとその他の湾岸諸国は世界の他の地域に比べ、猛暑や病気、大気汚染など地球温暖化による問題が多いだろうと警告した。

ファキーハ博士は、これは環境政策担当者が直面している問題だと認める。「もちろん、気候変動と地球温暖化については世界全体の主要な課題の一つとしてとても深刻にとらえている」

「気温変化の見通しについては、ほとんど研究されていないのが現状だ。湾岸地域全体においても、気候研究を行う気候センターは存在していない。そのため、皇太子殿下はサウジアラビアの国立起床センターが中心となって、ここに地域全体の気候研究センターを設立することを発表した。地域センターの役割は、気候変動の中長期的な見通しについて国及び地域レベルでの研究を行うことだ」と、ファキーハ博士は述べた。

また、サウジアラビアの環境戦略の大きな焦点の一つは、土地の劣化と砂漠化の傾向を逆転させることだと彼は付け加えた。これは大気を汚染する温室効果ガス排出の主な原因であり、全世界に何兆ドル規模の損害を与えている。

「土地の劣化は、温室効果ガス排出量の第2位を占めている。実際、土地の劣化は生物多様性の損失のおよそ50%以上の原因となっており、これは割合いとして非常に大きい。また、農地や食料安全保障にも多大なる影響を与えている」と、ファキーハ博士は語った。

土地劣化の逆転対策は、サウジアラビアが議長国を務めた2020年のG20サミットの大きな成果の一つだった。

ファキーハ博士はまた、廃棄物管理に関するサウジアラビアの新戦略の概要についても説明し、この分野での民間セクターの関与と海外からの投資への準備は整っているとの見解を示した。

「民間セクターの参画は、国の環境戦略の目標達成を実現するために非常に重要だ」と、ファキーハ博士は言う。

「多くの国際企業が参入予定であり、彼らは現在の規制環境が参加を非常に促進していると感じている」

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