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幼少期の大巡礼の思い出がインスピレーションに サウジ人映画監督がその最新プロジェクトを語る

サウジアラビアの映画監督ムジュタバ・サイード氏は現在、聖地メッカとの関係を色濃く反映した脚本を制作中。(SPA)
サウジアラビアの映画監督ムジュタバ・サイード氏は現在、聖地メッカとの関係を色濃く反映した脚本を制作中。(SPA)
サウジアラビアの映画監督、ムジュタバ・サイード氏。(提供)
サウジアラビアの映画監督、ムジュタバ・サイード氏。(提供)
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02 Jul 2022 11:07:42 GMT9
02 Jul 2022 11:07:42 GMT9
  • ムジュタバ・サイード氏の脚本は、メッカとベルリンの類似性を描き、伝統的な価値観と現代社会のコントラストを探求している。

ナダ・アル・タルキ

リヤド:サウジアラビアの映画監督ムジュタバ・サイード氏とメッカの関係は、幼少期に始まった。彼は、ウムラ(小巡礼)やハッジ(大巡礼)のために家族でこの活気ある都市を訪れ、共通の目的のために聖地に集まったあらゆる民族や国籍の人々に囲まれていたことを懐かしく思い出す。

彼は、サウジアラビアの砂丘が織りなすグラデーションの中を走るバスが、さまざまな人種の見知らぬ人々を乗せて通り過ぎ、皆が声を合わせて同じ祈りを唱えていたと、幼い頃の鮮やかな思い出を語ってくれた。

サイード氏は、幼い頃に住んでいた東部州のサイハット市から西部のヒジャーズ地方までの旅を、刺激と驚きに満ちたものとして記憶している。

ムジュタバ・サイード監督の2021年の作品「ザワル(Zawal)」は、サウジ映画祭で最優秀短編映画賞のゴールデン・パルムを、バーレーンで開催された湾岸ラジオ・テレビ祭ではゴールデン・セイルを受賞している。(提供)

「冒険に満ちた体験でした」と、彼はアラブニュースに語る。「子供の目から見たとき、それは終わりのない長い旅でした。私とメッカの関係は、旅という発想そのものでした」

脚本家であり監督である彼は、現在、彼と聖地との関係を大きく描いた脚本の制作を進めている。この聖地は、教育を続けるために若くしてドイツに移るまで、彼の人生の大部分を占めていた。

「その後、しばらくはメッカを訪れることはありませんでした。でも、思い出は残っています」と彼は語る。「私は、これらの思い出は時間、つながり、旅行という行為に関連した質問を問いかけるものだと考えています……それはサウジアラビア人の、メッカとの関係に似ていると思います」

また彼は、この都市は、生涯を通じて巡礼者として訪れる多くの個人や家族にとってかけがえのない場所であると付け加えた。

「私はこのような風景を体験して育ちました。この地は感情に満ち溢れています。メッカは私にとって感情、で満たされた場所なのです」と彼は説明した。

 

サイード氏の他のプロジェクトには、最近サウジアラビア映画祭で最優秀長編映画脚本賞を受賞した「ガラク(Gharaq/溺れる)」などがある。(提供)

現在はベルリンとサウジアラビアを行き来しているサイード氏は、こうした感情や聖地での体験が、最新の脚本にインスピレーションを与えたと言う。この作品はまだ完成していないが、彼はこの物語をサウジアラビア人だけでなく、世界中の観客と共有することを決意している。

「異文化と関わり、融合しようとすることは、誰にでも可能です」と彼は言う。「人間としての内面、人間としての原動力は、すべてひとつだと思うからです」

脚本は、2つの都市を中心に展開し、これはサイード氏自身の人生を反映している。メッカとベルリン。両者には多くの違いがあるが、共通点も存在する。特に、人々が絶えず来ては去るという、はかない性質がある。メッカではそれは巡礼者であり、ベルリンでは観光客や学生となる。

サウジアラビアの映画監督、ムジュタバ・サイード氏。

「この2つの場所は、世界中の多くの人にとっては一時の訪問地(Qiblatan)です。ですから、私はこの2つのコントラストを探し、そのコントラストが登場人物にどのような影響を与えるかを探ろうとしています」

「私にとって、ベルリンという若い都市が、そこを訪れる人たちにどのような問いを投げかけるのか……私たちの存在との関係や、自分自身や他者とのつながりに関わる問いかけを観察することも、本当に重要なことなのです」

サイード氏は、物語の登場人物たちがこれらの問いに対する答えを探すことで、あらゆるドラマに不可欠な要素である、葛藤が生まれると語った。

また、「古い社会」における伝統的な価値観と、現代のグローバル化した世界との対比を探求することが、この脚本の狙いであるという。さらに重要なのは、それぞれがダイナミックで多彩な背景を持つ多様な人々が、ひとつの場所で安全に共存できるかどうかを考察していることだという。

「メッカでは、この方程式が成り立っているのです」とサイード氏は言う。「私がドイツに留学し、現地で働くようになったときから、グローバルでもあるこの都市には、配慮がありました。しかし、それでもなお、重要な問題が残っています。それは、この地におけるそれぞれの声をいかに増幅させるかです」

彼は、しばしば誰の耳にも届かない声を増幅させることに、アーティストとしての責任を感じているという。サウジアラビアの芸術とエンターテインメントの発展が続く中、サウジアラビアは映画、映像制作、そして幅広い文化交流の地域の拠点となることを目指している。サウジ映画の成長はその目標を達成するための、理想的な機会を提供すると彼は考えている。

「サウジ映画が発言力を持つ、国家的ルネッサンスにあるこの段階では、サウジ・フィルム・コミッションが行う、レギュレーションに基づいた作品の制作に加え、ヨーロッパ、インド、その他の国々との共同作業にも関心を持つ必要があります」とサイード氏は述べた。

「今後、映画は私たちの言語となり、やがては世界共通語になると思います」

「リヤドで開催されるヨーロッパ映画祭(EFF)の重要性は議論の余地ありません。そして私は、多様な映画コンテンツの紹介に力を入れることが重要だと思います」

ヨーロッパ映画の振興と、ヨーロッパとサウジアラビアの映画制作者間の交流を促すことを目的とした初回のEFFは、6月15日から22日にかけて開催された。サイード氏は、文化的なギャップを埋め、継続的なコミュニケーションを促すという意味で、この映画祭は重要であったと考えている。

「サウジアラビアの観客は映画をよく観ています。そのため、この映画祭がこの観客にとって新しい映画を紹介したとは思いませんが、しかしヨーロッパの映画作家がこの観客に会うことは重要なのです」と彼は語った。

サイード監督の現在のプロジェクトには、「ガラク(Gharaq/溺れる)」というタイトルの脚本があり、6月に2022年サウジ映画祭で最優秀長編映画脚本賞を受賞している。サイード氏は、この作品が赦しと復讐の二面性を探求していると述べ、こう付け加えた。「人は赦されない限り、自由にはなれません」

この映画は制作の準備中で、撮影は王国の東部で行われる予定である。彼は、この映画がサウジアラビアとドイツの合作になることを望んでいる。

サイード氏の2021年の作品「ザワル(Zawal)」は、サウジ映画祭で最優秀短編映画賞であるゴールデン・パルムを受賞し、6月21日から23日までバーレーンで開催された湾岸ラジオ・テレビ祭ではゴールデン・セイルを受賞している。この作品は、謎のパンデミック発生後の世界で、隔離された難民キャンプで母親と暮らす8歳の少年の物語である。

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