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サウジ・イラン合意の行方を辛抱強く見守るサウジ国民

サウジアラビアのムサード・ビン・モハメド・アル・アイバーン国務相兼国家安全保障顧問(左)との会談中、王毅・中国共産党中央政治局委員(中央外事弁公室主任)(中央)と握手するアリー・シャムハーニ・イラン国家安全保障最高評議会書記(右)。北京。(AFP)
サウジアラビアのムサード・ビン・モハメド・アル・アイバーン国務相兼国家安全保障顧問(左)との会談中、王毅・中国共産党中央政治局委員(中央外事弁公室主任)(中央)と握手するアリー・シャムハーニ・イラン国家安全保障最高評議会書記(右)。北京。(AFP)
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21 Mar 2023 06:03:43 GMT9
21 Mar 2023 06:03:43 GMT9
  • 合意締結から2週間近く経った今、サウジ国民は過去の事件を思い出しながらも、国交回復合意が新たなページを開くと楽観している
  • 7年にわたって断絶が続いたため、サウジ国民は中国の仲介によるサウジ・イラン合意に不安を感じているが、地域がより安定し安全になる必要があることを理解している

ラワン・ラドワン

ジェッダ:不安、警戒、疑念、慎重な楽観…これらは、中国の仲介によるサウジ・イラン合意という前代未聞の発表を聞いたサウジ国民の気持ちが表れた様々な反応のほんの一部だ。一口に言えば、人々は関心を持って合意の行方を見守っている。

7年前、イランの抗議者らによって同国のサウジアラビア大使館・領事館が襲撃され放火されるのを、世界は恐怖とともに見つめていた。

この事件をきっかけに断絶していた国交が、2週間弱前になってやっと回復した。2016年の光景は多くの人々の心に、1987年にテヘランで起きたサウジ大使館・クウェート大使館放火事件の記憶を蘇らせた。

様々な気持ちや反応があるにしても、サウジアラビアとイランの国交回復合意は3月10日に発表されて以来大きな話題になっていることは確かだ。

この合意が一体何を意味するのかについては解答より疑問の方がはるかに多く上がっているが、交渉に関わった三当事者は、この関係回復は10年近く続いたゼロサムゲームが終わった後のプロセスの一環だと断言している。

サウジ通信の報道によると、サウジアラビアと中国は国家主権を尊重し相互の内政に干渉しないことで合意した。

しかし、イランがサウジアラビアを攻撃してきた過去の経緯を考えると、これは問題のある考え方だ。

そういった事件の例としては、1987年のメッカでのデモ、1996年のホバル・タワー爆破事件、2011年のアーデル・アル・ジュベイル駐米サウジ大使(当時)暗殺計画、2019年のサウジのアブカイクとフライスの石油施設へのミサイル攻撃などが挙げられる。

前日に中国の仲介のもと北京で合意されたイラン・サウジ国交回復を一面で報じる地元紙を手にする男性。2023年3月11日、テヘラン。(AFP)

サウジ外相のファイサル・ビン・ファルハーン王子は、サウジアラビアがイランと国交回復で合意したことは両国が意見の不一致を全て解決したことを意味しないが、「コミュニケーションや対話を通して論争を解決」したいという相互の意欲を明確に示すものだと述べた。

今回の関係回復は地域において長年緊張が続いた末に訪れたため、当然ながらサウジの人々はソーシャルメディアに合意についての意見を投稿した。

サウジ政府の決定に支持を表明した人が多かった。2001年に締結された、テロ、麻薬密輸、マネーロンダリングなどの犯罪活動対策の取り組みに関する協力のための安全保障協定を再度有効なものとすることが合意に含まれているため、大きな前進であることを期待し信じると彼らは言っている。

退役少将でナイーフ・アラブ安全保障科学大学教授(軍事・安全保障メディア)のサレハ・モハメド・アル・マリク氏はアラブニュースに対し次のように語る。「サウジ・イラン合意は湾岸地域、中東、国際社会により大きな安全保障上のメリットをもたらすだろう。地域における安全保障と安定を常に求めるというのがサウジアラビアの立場だからだ」

サウジアラビアとイランは3月10日、7年にわたる国交断絶を終わらせ、2ヶ月以内に大使館や公館を再開し、20年以上前に締結した安全保障・経済協力協定を実行に移すと発表した。(AFP)

「この合意により、地域諸国に対するイランの干渉が制限され、中東に安全と安定が広がることで、各国政府が地域全体(より具体的にはイエメン)に資するような形で改革や開発に専念できるようになると期待している」

「間違いなく言えるのは、これ(合意)が、各国の包括的・持続的発展を目指す(サウジ)ビジョン2030の目標などのビジョンを実現するための国家経済の青写真を方向づけることに貢献するということだ」

サウジ・イラン合意の完全な詳細はまだ明らかになっていないが、サウジの人々の中には、そんなことは取るに足りないことだとほのめかす人もいる。湾岸の隣国との関係よりも、国内の事に集中してサウジの全面的な能力を構築することを優先するべきだと考えているからだ。

一方、この合意がサウジアラビアの(そしてもしかしたらイランの)発展に好ましい形で貢献する可能性があると見る人もいる。

両国は2ヶ月以内に大使館や公館を再開する。(スクリーンショット/Nour News)

あるサウジ国民はアラブニュースに対し、「メディアからの情報以外は、イランで起こっていることは分かりません」と話す。

「どんなことが起こっているとしても、イランが分断され、人々が苦しみ抵抗していることは分かります。彼らは国の繁栄を望んでいますが、その進展をサウジアラビアの進展になぞらえる必要はありません。彼らは自分たちに合った道を自分たちで作り出すことができるからです」

「どの国も成長しているのに、彼らの国はそうではありません。仲間入りしてもいい頃です」

サウジアラビアとその国民は近年、世界的に見れば異例な形で地域における多数の課題に対処してきた。

サウジの政府関係者や国民が以前から指摘しているのは、同国とイランが長きにわたる宗教的・歴史的・地理的・文化的つながりを共有しているということ、そしてそのような共通基盤が「敵対国」間の意見の不一致を交渉を通して解決するための取り組みを強化するということだ。

アル・マリク氏は次のように語る。「合意の条項が全て実行されれば、中東全体および近隣諸国に資する形で地域における安全、平和、有意義で建設的な協力が回復すると確信している」

また、サウジ国民は当局がより大きな善のためにこういった合意の交渉にあたることを信頼しているため、彼らの間で当初から今回の合意に対する広範な支持があることは目新しいことではないと話す。

「サウジ国民は平和と安定を熱望している」と同氏は言う。「彼らはビジョン2030を通して自国の目標が実現するのを目の当たりにしている。政府が地域における安全と安定を支えてくれるという彼らの信頼はそこから来ている」

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