
ミナ:イスラム暦1444年の聖なる巡礼「ハッジ」が始まった26日朝、一生に一度かもしれない厳粛な旅を始めるために約200万人の巡礼者がミナのテント村に集まった。
夜が来るまでには、巡礼者らがタルビーヤ(アッラーの栄光のためにハッジを行う意志を表明する祈り)を唱える声がミナに響き渡っていた。伝統的な縫い目のない白い綿の衣装を着た男性たちと、アバヤを着た女性たちが、「ラッバイカ・アッラーフンマ・ラッバイカ(おお神よ、私はあなたの呼びかけに答えるためにここに来ました)」という言葉を唱えながら、メッカのグランドモスクの北東約8キロメートルのところにある広大なテント村に流れ込んだ。
預言者ムハンマドの伝承に従い、巡礼者らは「タルウィヤの日」と呼ばれる巡礼初日を、罪を償うための祈りを捧げて過ごした。ズフル、アスル、マグレブ、イシャーの祈りを終えた彼らは翌朝まで、27日にアラファト山の台地で神の前に立つ(ウクーフ)ための最後の準備を整える。
27日の夜明けの(ファジルの)祈りの後、巡礼者らはアラファト山に向けて出発する。1400年以上前に預言者ムハンマドが最後の説教を行った場所だ。
今年のハッジは新型コロナパンデミックの開始以降では初めてコロナ前の規模で行われるということもあり、サウジ当局は巡礼者の安全で完璧な移動を確保するための綿密な計画を用意している。国外からの160万人を含む合計200万人以上の巡礼者が見込まれている。
アラブニュースの取材に応じた人々は、ハッジ体験をできる限り安心で心地よく厳粛なものにするための当局の努力を称賛しきりだった。
ナイジェリアから来たモハメド・ハマドさんは次のように語る。「全能の神に近づくことができて本当に良い気分です。神と直接対話し、善と平和と繁栄を祈る良い機会です」
アフガニスタンから来たモハメド・ナウマンさんはこう話す。「ハッジを行うこの素晴らしい機会を与えてくださった全能の神アッラーに感謝します。この気持ちを表現する言葉がありません。神が、ここに来ている私たち全員を安らかな気持ちにし、私たちのハッジを受け入れてくださいますように」
「私たちはこのテント村で、そして明日はアラファト山で、祈りを捧げ、コーランの一節を唱え、その翌日の夜はムズダリファで過ごします」
数日間のハッジ期間中に大勢の人々をある場所から別の場所へと安全に移動させるという人の流れに関する課題に、摂氏約43度といううだるような暑さが輪をかける。
アフガニスタンから来た巡礼者のハフィズラーさんは、「私たちは万全を期しています。必要時に備えて医者も控えています」と話す。
「これは非常に特別な精神的喜びの瞬間で、言葉では言い表せません。神の家の中で、神の近くにいるのです。巡礼を行うことで力を貰って強くなれました」
スウェーデンから来たアブドゥルハフィード・アル・ハマドさんは、ハッジ・ウムラ省から提供される設備やサービスを称賛する。
「これが(初めて参加するハッジなので)とても期待していますし、全てがうまく行っていることにとても満足しています」と彼は言う。「皆さん非常に親切で(…)段取りも良く、何の問題もありません」
「ここに来ることができてとても嬉しいです。何年も前から申請していたのですが、3年前にコロナが始まったので来れませんでした。でも、ついに来ることができました」
サウジ当局は26日午後、メッカとミナへの巡礼者の到着に関する情報を更新し、ハッジに参加する全ての人々の健康と安全の確保に取り組むことを改めて強調した。
内務省のタラル・アル・シャルーブ報道官は、巡礼者のミナへの輸送が完了したことを明らかにし、巡礼者らはそこに一晩滞在して27日のアラファト山巡礼に備えると述べた。
ハッジ・ウムラ省のアイド・アル・グウェネム次官によると、全巡礼者の65%がミナへの移動を終え、残りは直接アラファト山に運ばれるという。
保健省のモハメド・アル・アブドゥラリ報道官によると、巡礼者の医療ニーズに対応するべく、6000床以上の収容能力を持つ32ヶ所以上の病院が準備を整えて待機している。
ズル・ヒッジャの月(イスラム暦の最終月12月)に行われるハッジはイスラム五行の一つであり、一生に少なくとも一度は行うことが、身体的・経済的にそれができる全てのイスラム教徒の義務となっている。
男性の巡礼者がハッジ初日にまず行うのは、伝統的な縫い目のない白い布2枚の衣装を身に着け、「イフラーム」という聖なる精神状態に入ることだ。女性はゆったりとした服を着て髪を覆う。
5日間続くハッジは、正式にはズル・ヒッジャの8日に始まる。メッカでのファジルの祈りが終わると、巡礼者らは8キロメートル離れたミナに移動し、そこで昼夜、祈りを捧げコーランの一節を唱えて過ごす。
翌日、巡礼者らはアラファトに向かい、日没まで砂漠の台地に留まって祈りや懺悔を行う。これはハッジの最も重要な日であり、行わなかった者は巡礼を完了していないと見なされる。
その後、巡礼者らはミナとアラファト山の間にある谷であるムズダリファに向かう。ここで一晩過ごし、翌日の特別な儀式で使用する小石を集める。
ズル・ヒッジャ10日のファジルの祈りが終わると、巡礼者らはムズダリファからジャマラートに移動し、集めておいた小石を悪魔を象徴する3本の柱に向かって投げる。女性や高齢者はこの義務を男性に託してもよい。
その後、ウムラの後と同様に、男性は頭髪を剃り、女性は髪を一房切らなければならない。また、巡礼者らは捧げ物の動物を屠り、その肉を貧しい人々に分け与えることになっている。自分で屠殺できない人は他の人に託してもよい。その後、巡礼者らはメッカとグランド・モスクに戻る。