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日本から世界へ ゲームの訳し方

1月26日発売の日本のテレビゲーム
1月26日発売の日本のテレビゲーム"ヤクザ"シリーズ最新作"ライク・ア・ドラゴン:インフィニット・ウェルス"のリリースに先立って横浜で開催されたレッドカーペットセレモニーと記者会見の終わりに、ぬいぐるみを詰めたバッグを持つファン。2024年1月17日撮影。(AFP)
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25 Jan 2024 07:01:52 GMT9
25 Jan 2024 07:01:52 GMT9

東京:日本のテレビゲームの世界的な成功の裏には、繊細な仕事がある。つまり、性差別などの問題に関心があり、主要タイトルのコンテンツにますます影響を与えている海外のプレーヤーにアピールすることである。

大型タイトルの売り上げの大半を日本以外の国が占めるようになった今、スラングからキャラクターのコスチュームまで、世界のプレーヤーを意識した配慮が必要だ。

それは、80年代から90年代にかけての「無法の時代」以来、長い道のりを経た手間のかかるプロセスだと、ある著名な「ローカライゼーション」チームはAFPに語った。

「ルールも『業界標準』もなく、ローカライズの質はタイトルによって大きく異なるものでした」と、26日に発売されるヒット作”ヤクザ”シリーズの最新タイトル、”ライク・ア・ドラゴン:インフィニット・ウェルス”の制作に携わったセガ・オブ・アメリカのチームは語る。

当時、翻訳者は小さすぎるテキストボックスなどの制約に直面し、時にはゲーム開発者自身が完璧とは言えない英語に翻訳することもあった。

これは、この時代の多くのゲーム、特にセリフの多いゲームが日本から海外に出て行かなかったことを意味する。

「ありがたいことに、この業界は、そしておそらくもっと重要なことに消費者は、当時とは大きく変わり、我々は日本のゲームの文化的・感情的側面にこれまで以上に忠実でいることができます」とセガのチームは語る。

最初から海外のゲーマーを念頭に置いているため、ローカライゼーションは今やデザインプロセスに不可欠となっている。

#MeTooムーブメントが考え方を変えつつあり、「日本のゲーム開発者がヒロインにどのような服装をさせるか」は重要な一例だと、日本の大手ゲーム会社バンダイナムコでシニア・ローカライゼーション・マネージャーを務めるフランク・ジェンティ氏は話す。

「胸の谷間がちょっと露出しすぎだとか、スカートがちょっと短すぎるとか、そういったことを指摘しています」

「以前の彼らはあまり融通が利かなかったのですが、最近はそういうところにも積極的になりました」

ゲームのローカライズという難題は、1980年にゲームセンターで人気を博した”パックマン”にも影響を与えた。直訳の”Puck Man”(puck:いたずら好きな)は、ゲーム機へのいたずらを招きかねず、危険すぎると思われたからだ。

マリオ、ファイナルファンタジー、ポケモンなど、売れ筋のゲームの中には、明らかに日本的ではないファンタジーの世界があって、いくぶんローカライズのしやすさがあった。

しかし、”ヤクザ”のような実在の場所を舞台にし、日本の裏社会のスラングを使うシリーズでは、ローカライズはより難しくなる。

最近の”ヤクザ”シリーズの収益の約70%は海外からのものであり、きちんとローカライズすることは重要だ。

しかし近年、漫画やアニメ、そしてより幅広い日本文化への関心が高まり、そうした仕事の助けになっている。

「ラーメンとは何か今やみんな知っていて、もう”ヌードル”なんて言わなくてもいいわけです」とジェンティ氏は言う。

バンダイナムコ欧州本部の彼のチームは、格闘ゲーム「鉄拳」シリーズや、大ヒットロールプレイングゲーム「エルデンリング」などのゲームを12ヶ国語に翻訳してきた。

バンダイナムコのローカライズプロジェクトマネージャーを務めるピエール・フロジェ氏は、この仕事は言語的であるとともに文化的な挑戦であると言う。

「どの国のプレーヤーであれ、原語でプレイしている人と同じことを理解し、感じるべきなのです」

プレーヤーの日本文化への理解が深まれば、より繊細なアレンジが可能になる。”ヤクザ”シリーズは現在、”ライク・ア・ドラゴン”となっており、元の日本語に近い意味になった。

LGBTQの風刺や性差別的な決まり文句も削除された。

本シリーズのエグゼクティブプロデューサーである横山昌義氏は、AFPの取材に対し、初期の”ライク・ア・ドラゴン”の中の日本では普通だった多くの表現が、今日では受け入れられなくなっています」と語る。

「アメリカやヨーロッパのチームにはゲームのシナリオを読んでもらい、自国では受け入れられないようなことがあれば教えてもらっています」

フロジェ氏は、変化は「アルコール、政治、宗教」に集中することが多く、文化的な基準も異なると言う。

「黒いブーツに長い革のコートを着た人々がヨーロッパにいれば、ナチスの制服を思わせるかもしれません」

世界同時リリースが当たり前になった現在、こうした決定は以前よりも厳しい締め切りの中で下さなければならない。

また、開発者とローカライゼーションチームのコミュニケーションが改善されたとはいえ、特にゲームを英語以外の言語に翻訳する場合には、課題も残る。

フロジェ氏は、「英語圏のニーズを理解するための取り組みはなされてきました」と話す。

しかし、ドイツ語は文が長かったり言語的に一癖あったりするため、デザインチームがローカライズを「余計な面倒」と考えることもある。

それでも、フロジェ氏は自らの使命を「ゲームとプレーヤーの両方を尊重しながら、日本文化との接点を作り、ヨーロッパの人々にその奥深さを知ってもらうこと」だと信じている。

AFP

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