
ロジェン・ベン・ガセム
リヤド:メッカの大モスクの中庭で、清掃員がひざまずいている。この清掃員が、通常は人で溢れ返るこの聖地の唯一の巡礼者だ。空虚や静寂、熟考の瞬間が絵画に捉えられ、世界的な公衆衛生緊急事態下のイスラム教徒に感動を与えている。
この絵は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎ人々を感染症から守るために大モスクでの礼拝を禁止する、というサウジアラビア当局の歴史的な決定を反映したものだ。
サウジアラビアのアーティスト、ナビラ・アブルジャダイェルさんは、自国が新型コロナでロックダウンするなか、「Isjod wa Iqtareb」(ひれ伏し、そばに寄る)と題する作品を制作した。
サルマン国王人道援助救済センターの親善大使であるアブルジャダイェルさんは、この絵のアイデアは現実から得たと語った。
「この作品に対するインスピレーションは、人生で初めて自分がアル=ハラーム(大モスク)を訪れることができない、という前例も比類もない事態に基づいたものです」とアブルジャダイェルさんはアラブニュースに語った。「それができることがどんなに名誉で、恵まれたことで、ありがたいことだったのか、今回あらためて認識させられたのです」
この作品に対するインスピレーションは、人生で初めて自分がアル=ハラーム(大モスク)を訪れることができない、という前例も比類もない事態に基づいたものです。それができることがどんなに名誉で、恵まれたことで、ありがたいことだったのか、今回あらためて認識させられたのです。
ナビラ・アブルジャダイェル、アーティスト、サウジアラビア
アブルジャダイェルさんは、現在この名誉な地位、すなわち大モスクを訪れられるという地位を維持している唯一の人たちが、聖地に奉仕しようと命をかけてモスクの手入れに励んでいる人たちであることに気づいた。
「その世界一の機会を得ていたのは、私たちが普段ありがたみを忘れがちの、名前も身元もわからない労働者たちだったのです」と彼女は付け加えました。
サウジアラビアは先月、新型コロナウイルスへの懸念を理由に、小巡礼「ウムラ」をすべて一時的に停止した。消毒と殺菌措置に備えるため、当局は大モスクへの立ち入りを禁止した。
「現在そこで礼拝する唯一の人たちが、こうした作業員だったのです。この人たちは、昼夜を問わずアッラーに奉仕しているのです」とアブルジャダイェルさんは言う。
「この出来事は、私たちの信仰心を体現しています。謙譲さの重要性を再認識させられます。私たちのすべてが神の目には平等であることをはっきりと教えてくれます」
アブルジャダイェルさんは、自国民が「この困難に自分がどう対応したのか振り返ったとき、誇らしく思えるようになることを願っている」という英国のエリザベス女王の言葉に加え、新型コロナ危機と社会の取り組みについてのサルマン国王の言葉からもインスピレーションを得たという。
「この危機は、現在経験しているような困難に直面した際に人類がいかに果敢に闘えるかの証しとして、歴史に残ることになるだろう」
ムスリムの人たちは、この絵とその背後にある感情に対し、賛辞の言葉を贈っている。
アレイ・アル=ロウェイリーさん(@al_areej_des)は次のようにツイートした。「唯一残ったのは、名もない兵士たち。ナビラ・アブルジャダイェルの作品」
モハメッド・アル=カーディさん(@moealqadi)は、誰もいないなかで「この聖なるモスクに仕えた人たち」がカアバ神殿の前で祈りを続けたと述べ、一方ファーダ・ビント・サウドさん(@fahdabntsaud)は、この芸術作品に感動させられたと言い、「 指折りに美しい絵画」と評した。