









カーラ・チャラワー
エルメスカレ・クラブは、フランスブランドの名高いシルクスカーフを記念する、多面的で対話式の展示会で、1 月 15 から 20 日、アラブ首長国連邦の文化地区、ドバイのアルセルカル アベニュー (Alserkal Avenue) で開催された。
ドバイは、ニューヨーク、ミラノ、トロント、シンガポール、ロサンゼルス、そしてパリを含めた世界ツアーで一番新しい場所だ。この予約制のイベントは、スカーフの芸術性と遺産を記念するもので、この高級ブランドの一番の羨望の的となっている製品の一つの、より面白い側面を紹介する設備とアーティストを備え、訪れる人たちが、有名なカレのスカーフのすべてを知ることができるようになっている。
エルメスの紳士用スカーフのデザインを担当する日本人デザイナー兼イラストレーターの野村大輔は、カレ・クラブでアラブニュース ジャパンにこう話した。「私は日本出身です。私の着想は漫画やアニメ、そうした日本文化のデザインに由来します。私は、エミール・エルメス・コレクション (Émile Hermès collection) のアイテムを取り上げています。これは、エルメスが収集した往年のアイテムです。例えば、コレクションから三輪車を取り上げ、改造してロボットと馬を組み入れました。だから私は、それら全部を一緒にして、独自のデザインを創り上げていると言えます。」
その一目でわかる正方形の形から、「ル・カレ ( あるいは「正方形のシルク」) として知られるブランドの特徴的なシルクスカーフは、1937 年に制作された。エルメスの伝統的なスカーフは、ファッションハウスの象徴となり、衣服に欠かせないアイテムとしての地位を得た。その使われ方は多岐にわたり、首に巻きつける、あるいはヘッドバンドとして、ターバンとして、ベルトとして、バッグのアクセサリーとしても使用できる。
絵画の無地のキャンバスを模した四辺を示しながら、野村は、カレのスカーフのデザインが、絵を描くことにどれほど似ているのか説明した。野村がスカーフのデザインに使う台には、彼の制作の過程における 2 つの側面が表れている。一つはアナログ的な側面で、鉛筆、消しゴムそしてマーカーから構成される。もう一方は、デジタル描画という側面だ。
イベントでは、アナログ的側面については、竜、馬の背、骸骨、ロボット、そして蜘蛛を中心とする手書きのデザインが一同に展示された。また、デジタル的側面については、コンピューターや iPad の画面で表示された。
ロボットや竜といった漫画やアニメで繰り返し使われるモチーフと、エルメスのこれまでの模様が組み合わさることで、エルメスの標章が、ほとんど未来的な世界へと変化する。
着想は日本文化に由来するが、スカーフの現在のデザインと特徴は、野村の創造による。彼は、スカーフを手に取る人が彼のデザインに「自身のストーリーあるいは意味」を思いめぐらせることを望んでいる。
スカーフは、想像上の神話の生き物で溢れている。火を吐く竜、馬の背に跨る骸骨、ロボットなど、各スカーフの背後に隠れたストーリーを理解しようとすることを通じて、見る者着る者は違う世界のおとぎ話のような体験をする。
カレ・クラブには様々な要素があった。カレ・ストーリーズでは、訪れる者がスカーフの制作について学ぶことができる。そして、象徴的なデザインの裏にいるアーティストの一部に会えるカレ・スタジオ。カレ・カットでは、スカーフを結ぶ技が紹介され、カレ・パークでは、スケーターとちょっとしたスケートボード用の斜面があり、カレ・カフェでは、食事とコーヒーが提供される。カレ・オーケーは、訪れた人が一緒に歌える流行りの曲が数多く特集され、カレ・マニアは、スカーフの購入を望む人向けの即売所だ。
当初、スカーフは女性専用であった。イベントも女性用スカーフに限定されていたが、紳士用はこれまでも制作されており、エルメスの紳士用品のアーティスティック ディレクター、ベロニク・ニチャニアン (Véronique Nichanian) とゴワノー (Goineau) が、男性的要素をイベントに組み込んだ。
野村のデザインが表しているのは、二つの世界、つまりファッションとアートが共生しながら衝突する実験空間として、カレはどのように有益であるのか、ということだ。